さようなら、また明日、じゃあね、見た目が優等生な私はすれ違った人達に良い印象を与えるため笑顔で挨拶をする。中身は腐りきっているが。 『(あ、不動 明王。)』 すっかり人は少なくなり静かな学園内に目立つ存在が目に映った。 ユニフォーム姿は結構似合っている。 『じゃあね、不動くん』 「…あぁ、じゃーな」 『(ふーん、返事してくれるんだ)』 やっぱり見た目より普通な奴だと思いながら、私は鬼道さんとすれ違う為歩みを進めた。 * * * * * * 「不動、今日鬼道の家で優勝記念パーティーするんだが来るか?」 「あー…俺、パス」 「そうか。じゃあ、気を付けて帰れよ」 「あぁ」 他の奴等より早く着替えを終えて、俺は先に部室を出た。 無駄に長い廊下を歩く。 部活が終わる時間帯だからか帝国生徒は居らず静かな廊下には俺の足音が寂しげに響いた。 「…ん?」 廊下のど真ん中、とは言えないが真ん中よりの所にメモ帳サイズのノートが落ちていた。色的に見て女子生徒のものであろう。俺は淡いピンクを手にとれば裏と表を確認する。 「名前は、ねぇ…か」 パラパラと中を捲る。 中にはびっしりと文字が並んでいて何のノートかは解らない。 時折鍵かっこやビックリマークなどがあり、小説なのだろうかと疑問を持った。 「(ボールを蹴る足を止めた…サッカーもんの小説かァ?)」 俺はノートに記されている小説のようなものが気になりパラパラと捲るのではなく、ずらりと綴られている文字を目で追って行った。 「(不動…って俺と名字同じじゃん)」 登場人物の中にサッカー部所属である不動…まぁ、俺と似たようなヤツがいる。 話の流れを理解していないからか、どんな内容なのかはさっぱり解らねぇ。 俺は次のページを開いた瞬間驚きのあまり目を見開いた。 「…好きだ、鬼道。」 「っ……不動…。」 酷く動揺しているのかゴーグルの奥に見える赤い瞳が見開かれていた。 「(動揺してんのは俺だっつうの!!)」 なんて心中でツッコミを入れてみるが、ノートにツッコミを入れたって仕方がない。 もう一度文章を見直して見るが確かに俺と同じ名字のヤツが鬼道という登場人物に告白をしている。 鬼道という登場人物とは言っみたが、ゴーグルしてて赤い目した鬼道は帝国学園サッカー部に存在する。 もし、この鬼道が帝国学園の鬼道なんだとすればこの不動ってヤツは俺と仮定した方が筋通りは良い。 「あっれー…ないなぁ…」 聞き覚えのある声が響き渡った。 (もしかして、なんて頭に過る) |