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『こんなに綺麗なのになぁ』


夜、布団に潜りながら二つのブレスレットを豆電球に翳した。私には見える謎のキラキラ。これが見えている私にとっては気味が悪いというより、不思議でなんだか嬉しいことだった。


『ふふっ、はめてみようかな…』


そう呟いて、右手首に水色のを、左手首に黒紫っぽいのをはめた瞬間、いきなり目の前が真っ白になった。あまりの眩しさに目を瞑って開くと、両手に人の暖かさを感じた。


「ふむ、なかなか上等そうな生贄だ」
「よう、よく来たな人間」


目を右往左往させると、右手は三つ編みで羽が生えた人が握っていて、左手には変なウェーブがかった髪でこちらの人も羽が生えていた。


『きゃっ!』


いきなりのことでビックリして二人の手を思い切りはじいて、そのまましゃがみ込み下から二人を見上げる。


『あ、あああなた達は何なんですかっ!』
「我の名は、セイン」
「俺は魔界の戦士、デスタだ」


天空?魔界?外国の人??辺りを見回すと雲と岩ばかり。山の上にでもいるかのようだった。


『こっ、ここどこ!?』
「ここはマグニード山」
「お前は生贄に選ばれたんだ。喜べ人間!」
『いけ…にえ?』


生贄って、私殺されるの!?
怖くなって両手首にはめてあるブレスレットを掴む。


『外れない…っ!』
「フハハ、それが生贄の証だ」


無理矢理引っ張っても左右に捻ってもびくともしない。恐怖と後悔で涙ぐんでくる。

「ところで人間、名前は?」
『うぅっ……來夢…です』
「ふむ、來夢か。可愛らしい名だな」


いきなり三つ編みの人が目の前でフッと笑うものだから、思わず赤面してしまった。


「もう一度言おう、我はセインだ。宜しくな、來夢」
『セ、セイン…』
「おいおい、俺を忘れるなよ!」
『あなたは、確か…デスタ…さん』
「デスタでいいよ、人間。じゃなくて、來夢」


二人ともしゃがんで私に目線を合わせる。悪い人じゃないんだろうけど…。


「じゃあ、來夢はヘブンズゲートに連れて帰る」
「はあ?ふざけるな。俺の方に決まってんだろ!」
『ヘ、ヘブンズ…?』
「あ、ああ、」


私が小首を傾げるとデスタが説明をしてくれた。どうやら、このマグニード山はセイン率いる【天空の使徒】が住むヘブンズゲートと、デスタ率いる【魔界軍団Z】が住むデモンズゲートに分かれているらしい。

「來夢の世話は我等の使命だ」
「うるせぇ、引っ込んでろ!」
『あ、あの…』
「「なんだ!」」
『何日かずつ…私が交互に住めば良いかな…なんて』
「ふむ、良案だな」
「それなら有りだ」


私の案に二人共賛成してくれて、ほっと溜め息を吐く。


『じゃあ、今日はセインの方で』
「ああ、二日後迎えに行ってやるからな」


デスタはそう言うと同時に私の左手の甲にキスを落とした。いきなりのことで唖然として口をパクパクさせている私に向かってデスタは得意気に笑った。





手をひくのは天使か悪魔か
(ようこそ、生贄。)


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