「ねぇ、」
「ん?何だよ」
「……いや…なんでも、ない」
グランが、言ってた。
本当に君達は好き同士なのか、と。
バーンはわたしを好きだと言った。
わたしはバーンを好きだと思った。
はっきり言ってはいないけれど、伝わっているからこうして一緒に居るんだと思う。
背中合わせに座るのが一番楽だ。
背中を預けられるのは、楽。
たまに手を絡めるのも好きだ。
きゅっと握ってくれるのが好き。
数回だけ、唇を合わせた。
本当に啄む程度、触れる程度。
別にそれで良いと思ってた。
だけど、バーンはそれで良いと思ってたのか。
そう問われると、自信を持ってイエスと答える自信が無い。
もしかすると、バーンはこれ以上を、望んでいるのではないだろうか。
「……」
「ガゼル?
どこ行くんだよ」
「…グランの所、に……」
駄目だ駄目だ。
不本意だが、凄く不本意だが!
もう奴に聞くしかない。
本人に聞けないのだから、頼れるのはもう奴しか居ない。
不本意だが。
何度でも言ってやる。不本意だが!
すると、がしっと腕を掴まれた。
前につんのめりそうになったのを堪えて振り返ると、バーンがわたしの腕を握っていた。
……これは、どう解釈すれば良いのか全く分からないのだけど?
「バーン?」
「…い、今は俺と居ろよ!」
「え…あ、あぁ」
促されるままに、バーンの隣に座り直した。
わたしの腕からバーンの手が離れ、代わりに指同士を絡められる。
……このままで、いいのだろうか。
まだよく分からないが、少しだけ安心して、わたしは初めてその手を握り返した。
バーンは、笑ってくれた。
ローズマリー・
スパイシー
(……ガゼルが、デレた)
かわいいガゼル。やさしいガゼル。でれたガゼル。つめたくないガゼル。おくびょうガゼル。