「信じて、ね?」


ふんわりと柔らかい微笑みと共に、あいつは言った。
その笑顔は、おれの胸にズクリと刺さって、抜けそうにもない。
抜けないなら、溶かす。
溶ける筈もない。
溶かせないなら、折る。
折った所で刺さった先は奥深くに入り込んだまま。何かが変わる筈もない。

信じる事なんて、もう出来ない。
そんな事、いつだったか、どっかに忘れて来た。
大体、信じたって、どうにもならないんだろ。
どうせ裏切られて、信じた奴が馬鹿を見るのは、わかってる。
どうせおまえも、おまえも、あいつらと一緒なんだろ!!


「放って置けよ…!」
「放ってなんか置けないよ!!」
「やめろよ!これ以上おれに関わんな!!
おれに関わったって、良いことなんか無いんだ!」
「どうしてそんなこと、言うの……
人を信じられないのは、木暮君が人を信じようとしないからじゃない!
木暮君が進もうとしないからでしょ!?」
「……なんで、」
「……なんですか」

「なんでおまえが泣くんだよ」


ほろり、
音無春奈は静かに泣いていた。


わたしがないているのはあなたのためな


どうして、おれを信じてるなんて言うのだろうか。
じゅわりと、等の昔に氷結しきったと思われた心が溶かされていく様な気持ちになって、おれは恐る恐る手を伸ばした。

その言葉を信じたら、きっと報われるだろうか。
きっと、後悔は二度としないだろうか。

とりあえず今は、未だ止まないこいつの涙を止める事に努めようと思った。






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