「なぁガゼル」

「なに」

「ちょっと俺とイイコトしてみねぇ?」



ニヤリと口端を上げて、ベッドの上で寝転びながら雑誌を読むガゼルに言ってやった。
すると奴は、物凄く嫌そうな顔をして鼻で笑った。
……む、むかつく。



「キミなんかと良い事が出来るとでも言いたいの?」

「…テメェは出来ないって思ってんのか?」

「当たり前じゃないか
バーンが?馬で鹿なバーンが?」



くすり、と言う可愛いモンじゃない。
にやり、と言う程厭らしくもない。
兎に角ガゼルは怪しく微笑み、雑誌に目を戻した。
(馬で鹿な……って、喧嘩売られてるじゃねぇかよ俺)

またペラペラと雑誌の紙を捲る音が響く。
余りの無視っぷりに、流石の俺も仕返しを謀った。
目には目を、歯には歯を。
ハムラビ法典に則って、思い切りの微笑みを返してやろうではないか。

まずはガゼルが読んでいる雑誌を奪い取る。
(ハッ、ざまぁみろ!)
奴は必ず俺の方を見る。
(俺は立ってるから、必ず見上げる形になる)



「なに、を……」



ガゼルを挟んでベッドに両腕を付く。
(あ、驚いてる)
不機嫌な顔に、ますます皺が寄ってしまった。
が、どうでもいい。

どうせすぐに、その顔は歪むのだから。

顔を寄せて、がぶりと思い切り首筋に噛み付いた。
うぅ、と小さく悲鳴らしい声が上がる。
殴られるのは嫌なので、両手首をきっちりと掴んで、ベッドに縫い止めてやった。

強めに噛んだからか、ガゼルの首にくっきりと残った噛み痕を見て満足する。
(言ってみろよ、馬で鹿な奴に噛まれた、なんて!)
痛かったのだろう、ガゼルは瞳に薄く涙の膜を張りながら俺を睨み付けた。
残念ながら、効果は逆方向に作用してしまったみたいだが。



「試してみようぜ、俺とイイコトが出来るかどうか」



今日一番の笑顔でそう言ってやった。
はんっ、せいぜい泣けよな!

ガゼルが俺の下で、ひ、と息を呑んだのが聞こえた。










(やめろバーン、わたしが悪かっ…ぁ!)
(諦めろよなぁ)














→単純に良いことだと思ってたガゼルとお盛んバーン



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テーマ「人外ファンタジー」
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