※相変わらず分裂





北海道の夏休みは短い。
けれど東京の夏休みは長い。
だから僕らは東京へサッカーをしに行く事が出来ないのだ。
頑張れば行き来出来ない事も無いけれど、何せ宿題と言うものが僕らを邪魔する。
それに一応受験生なのだから、勉強しないと。
はぁ、と溜め息をつこうと思ったら、一足先に、アツヤが溜め息をついた。


「あー……
東京行きてぇ」
「うん、僕も」
「なぁ士郎、今から飛行機のチケット取ったら、三日くらいは…」
「我慢しようよアツヤ
僕らには宿題と言う名のキーパーが立ちはだかっているんだから」


早く宿題やろうよ、と言うとアツヤは、うへぇ、とか言いながらのろのろと宿題のワークを取り出した。
放って置いたら、アツヤは何もしないんだから。
読書感想文が無かったのが幸いだろう。ワークさえ終われば自由の身……と言いたいけれど、残念ながら夏休み明けの課題テストの勉強もしなくちゃいけない。
ブツブツと文句を言いながら、数学の問題を解いていくアツヤ。
じゃあ僕は国語からやろうかなぁ、早く終わるだろうから、と思って国語の問題を解く事に集中する。


「なぁ士郎」
「……ん?」
「これはxが2で、yが3だろ?
aとbの出し方は?」
「それはもう一つの方程式と連立させるんじゃなかったっけ?」
「わかった、やってみる」


ついさっきまで文句を言っていたのにもう目の前の数学に集中している。
アツヤの集中力は相変わらず凄いなぁ。
カリカリとワークに文字が書き込まれていく。
決して綺麗とは言い難いけれど、僕はアツヤの字好きだなぁ。自信満々な所が、ね。
あ、国語もう終わっちゃった。意外と早かったなぁ。
次何にしようかな、英語は後回しにして…公民にしよう。


「ん…?
士郎士郎、これは?」
「うんと…代入かな?
それか加減法でいけると思うよ」
「代入、な」


東京のみんなは元気かなぁ。
キャラバンに居た時も思ってたけど、円堂くんは勉強大丈夫なのかな。風丸くんや豪炎寺くんは大丈夫みたいだったけど…
でも鬼道くんもついてるから大丈夫かな。
それともまだサッカーやってたりして。
うん、有り得る。
はぁ……あれ、公民終わっちゃった。
じゃあ歴史に…


「……士郎」
「なに?」
「…お前集中し過ぎ」
「え?アツヤの方が集中してるんじゃない?」
「ちげーよ!士郎が集中してんだよ!」
「…そうかなぁ
…えっと、それがどうかしたの?」
「宿題終わるの早すぎ」


ピッと指を差されて、あ、と声を漏らした。
アツヤはまだ五問程しか解いていないけど、僕はもう国語終わり公民終わりな状態だ。
本当だ。ちょっと集中し過ぎたかな。
でも集中してる感じは無かったから、きっと殆ど無意識下の行動だ。
早く終わるのは良いことだ、それなのに何でアツヤの機嫌が悪くなるかなんて、理由は一つだ。


「アツヤが終わるまで待ってるから」
「なっ」
「時間に余裕があったら、東京に行こうね」
「……おう」


アツヤを置いていく訳無いのに。変な所で心配性だ。
きっと時間は無いだろう。
でもアツヤが頑張るから、僕はついつい負けてしまうんだろう。
今回もそうなる事は目に見えている。


「待ってろよ士郎、すぐ終わらせる」
「うん、僕も続きやっちゃうね
一緒に、東京へ行こっか」
「あぁ!」


宿題が全部終わったら、円堂くんに電話しなきゃ。
旅行の準備もしなくちゃいけない。
それと、飛行機のチケットも取らなくちゃいけないね。
ふぅ、と息を吐いて、僕は再び問題を解き始めた。
あ、沖縄のひめゆりの塔だ。綱海くんは、元気かなぁ。
一足先に高校生だもんなぁ…
僕らももうすぐ、東京の高校生になるんだ。
やっと円堂くん達と同じチームでサッカーが出来る。


「楽しみだね」
「楽しみだな」











(どんな未来でもずっと一緒に居る)



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