チャンミン


「南緒ヤー!聞いて下さい!!」

そう言いながら私の部屋に飛び込んできた
ひとりの男、シム・チャンミン。
チャンミナは背も高く、イケメンで
おぼっちゃま育ちの三拍子揃った好青年
私の"幼馴染"

小さい頃から一緒の幼稚園、一緒の登下校
一緒のスイミングスクール、一緒のお稽古
と何かと一緒だったチャンミナはいつの間にか
SM事務所に入り、アーティストになっていた
もちろん知らなかったわけじゃない。
わけじゃないけど……

少し寂しかったのは内緒だ。


そしてここ最近、チャンミナはよく私の
部屋に来ては愚痴を零す。何の愚痴かって?
彼女に振られた話、喧嘩した話、
怒られた話…正直私には辛い話だ。
なんていったって私は幼いころから
チャンミナのことが好きだったから。
でも"幼馴染"という何とも美味しく
誰もが羨むポジションを捨てきれずにいる
だって恋人になれば別れは訪れるけど
幼馴染は離れないで済むじゃない…
私はチャンミナとずっと一緒にいたい
それが例え恋愛対象外の"幼馴染"でも。


『何?また振られたの?』
「ヤー!またってなんだよ?お?」
『だってもう何回目?今年多すぎ』
「だってあいつが携帯カバーを嫌がるから
ちょっと反論したら切れて別れるって」


実は私とチャンミナは携帯カバーがペア
この前、買い物に行った時とても可愛い
バンビの携帯カバーを発見。
私が買うと言えば、僕はシカだからと
ペンにしか伝わらないような理由で私と
ペアの携帯カバーを買っていた。
それを自慢して振られたようだ


『そんなの嫌に決まってるじゃん…』
「でも南緒は特別だし」

"特別"
その言葉にドキッとする

「大切な幼馴染だし…」
『幼馴染、ねぇ…』

チャンミナはよく幼馴染と言う言葉を使う
私のことは恋愛対象に見てないって現実を
突きつけられてるようで嫌だ…


「なに、幼馴染でしょ」
『そうだけど…その前に私は女なんだけど』
「…お?そんなの知ってる。俺が知らないと
でも思ったのか?おん?」
『だから、彼氏が他の女とペアの携帯カバー
なんて付けてたら嫌に決まってるでしょ』
「でも…」
『でもじゃない。チャンミナはちゃんと
彼女と付き合う気、あるの?』


ちょっと強めに言えばチャンミナが
むっとしたのが分かった。


「南緒なんだしいいじゃん…」


何、なんなの。
南緒なんだしって何。
チャンミナはどういうニュアンスで言った
つもりなのか知らないけど、
「たかが南緒なんだし」って意味で
言われたような気がして…普段のつもり
積もったものが一気に爆発した気がした


『帰って』
「何、なんで怒ってるんだよ」
『私はチャンミナのお姉さんじゃないんだから
ひとりにしてくれたっていいでしょ!?
ただの…幼馴染なんだから!
私なんかの所に入り浸らないで!』


そう叫べば罰が悪そうな顔をするチャンミナ
私は泣きそうになって背を向けた


「……ごめん」

チャンミナがふわっと後ろから私を
抱きしめてぽつんと謝った。


『うるさい、早く帰ってよ』
「本当にごめん…聞いて、南緒」
『……なに』
「本当は分かってる。なんで振られるのか。
でも理由を南緒に言ったら
南緒が俺から離れて行くかも
って考えたら怖くて言えなかった…
本当は他の人と付き合ってもないんだ。
告白はされたけど、断ってた…
俺には…好きな人がいるからって。
大好きな、誰よりも大切にしたい
幼馴染がいるから付き合えないって」
『………はい?』
「だから、付き合ってないんだって」


いやいや、そこじゃないんですけど。
大好きな幼馴染がいる?
チャンミナに私以外の幼馴染なんて
いたっけ……?


「南緒、こっち向いて?」
『…(くるっ)』
「(にこ)俺、最近やっと気付いたんだ。
南緒のことが好き。今まで
素直になれなくてごめん……こんな
俺でも良かったら付き合って下さい」
『うぅ、ずるいよチャンミナ……
(ぎゅう)私も好き…
よろしくお願いします…////』


私はこの日から晴れて彼女になった。



→ジェジュン

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