キュヒョン



「…南緒?」
『何〜?』
「……さっきからずっとメールだな
なぁ、誰とメールしてんの?」
『誰でもいいじゃん』
「…せっかくのOFFなのに」
『キュヒョナだってゲームしてるじゃん。
都合が良い時ばっかり…私ばっかじゃないよ』
「そうかもしれないけど…」
『……会社の先輩なの。無視出来ないでしょ?
仕事のことだし。ちょっと電話してくる
こないだ作った資料に不備があったみたい』


そう言って隣の部屋に逃げる南緒
うそ、だよね?南緒はうそをつくと
必ず斜め右上を見るくせがある。
俺が気付かないとでも思った…?

そっと耳を澄ますとかすかに聞こえる男の声
そして久しぶりに聞いた南緒の楽しそうな声
南緒のこんな声を聞かなくなったのは
いつからだろう…?


『え?今…?今はちょっと…うん…うん…
分かってるよ……大好き…』


あぁ、南緒の気持ちはもう
俺のところにはないんだ。
あの電話の男のところなんだな。

泣きたくて、泣けなくて…
俺は南緒の部屋を飛び出した

合鍵と想い出を置いて


南緒との想い出?
いらないわけじゃない。
でも今は持っていられない
俺には辛すぎる。

南緒との結婚も考えてたのに…


時は残酷だね、南緒






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