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『リリー!!』
「エリー?」
『アリアナ!リリーは!?』
「そういえばまだ戻ってないけど…」
「スラグホーン先生の所じゃないの?」
『リリーが見つからないの、一緒に探してくれない?』
「いいわ。私達は大広間の方を探してみるわね」
『えぇ、私はスラグホーン先生に聞いてくるわ』
「僕達も手伝うよ」
『ジェームズ…ありがとう、頼んだわ!』


夢が正しければスラグホーン先生に付いていけば
リリーの場所に辿り着けるはず…
でも一応みんなの手も借りよう。
誰かが異変を察知して、スラグホーン先生に
教えに来てくれるかもしれないし…
あぁ!どうしてこういう時はもっと早めに夢に出て来て
くれないのかしら!?本当に不便な能力だわ!!
こんなにすぐだと対策も立てれないわ!!


『失礼します!スラグホーン先生!』
「おや…慌ててどうしたのかな?」
『リリーを見ませんでしたか?』
「あぁ、それがまだ来ていないんだ。
 探しに行こうかと思っていた所だよ」
『お願いします!先生!!今!すぐに!』
「分かった、分かった。行こう」


スラグホーン先生について歩く。
先生は何やら懐中時計の様な丸い物を見ている。


『あのぉ…さっきから何を見ているんですか?』
「おぉ。これか?私が今、実験中の新しい魔法道具でな。
 相手がどこにいるのか簡単な場所が分かるようになっている。
 今はリリーしか登録されていないが、いずれ増やすつもりだよ。」
『それでリリーの場所が分かるんですか!?』
「ざっくりとだが…近くまで行けば見つけられるだろう」
『ありがとうございます、先生』
「おや?リリーはこの辺にいるようだが…なぜこんな所へ…
 おい、君。ここにリリー・エバンズは来なかったか?」
「え!?す、スラグホーン先生!?どうしてここに…?」
「何をそんなに焦って…君、部屋の中を見せなさい」
「中には何もありませんよ」
「じゃあなぜ何もない所に突っ立っているのかね?」
「それはぁ…そのぉ…」
「どきたまえ」
「す、スラグホーン先生!?」
「君達はこんな所で何をやっている!?」


やっぱり。さっきの夢の通り。
犯人達はもうそろそろ裏口から逃げるわね。
先回りして捕まえてやるんだから!
でもその前にリリーを一目……



結論から言うと、私は中を覗くべきじゃなかった。
大事な双子が椅子に縛り付けられ、口から血を出して
誰かに話しているのが見えた。
私の中で何かが切れた音がした。


私はそっと裏口に回る。
犯人に会うため。


「あなた…あなたがエリー・エバンズね」
「本当にそっくりだこと」
「今回は命拾いしたわね?でもいいこと?
 今度シリウスに近づいたらただじゃおかないわよ」
『言いたいことはそれだけ?』
「は?」
『エクスペリアームス』
「…っ!何するのよ!?」
『何するの?それはこっちのセリフよ?
 私の大事な双子に何をしたの…?』
「ちょっとお灸を据えてやっただけよ」
『じゃあ私があなた達にお灸を据えてあげる』
「はぁ?なんで私達がそんなこと」
『インカーセラス』
「ちょっと!離しなさいよ!」
『どうして?すぐ離したらお仕置きにならないでしょう?
 さぁ、次は何をして欲しい…?』
「あなた…おかしいんじゃないの!」
『エレクト』
「やめて!」
『これで最後にしてあげるわ。
 リリーに手を出したことを後悔するのね。コン…』
「エリー!!」
『…!?シリウス…離して……』
「やめろ。リリーなら無事だ。落ち着け…」
『あ…私…』
「冷静になれ。な?こいつらのことは俺に任せてリリーの所へ行け」
『うん……ありがと…』


シリウスに頭をポンポンされてからその場を去る。
私は一体、何をしようとしていたの?
頭にカッと血が上って…あの人たちに酷い呪文をかけようとした…
シリウスが声をかけてくれてなかったらきっと…


初めて自分が怖い。そう思った瞬間だった。




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