12

ホグズミートへ行ったあの日からしばらくたったある日。
私は本を抱え、ひとりで図書室から寮への道を歩いていた。


「ひそひそ…」
「え〜!?そうなの!?」
「ちょっと!声が大きいわよ!」
「ごめん…ひそひそひそ」
『はぁ…』


最近、こっちを見てこそこそ話されている気がする。
もちろん最初は気のせいだろうと思っていたけど…
いつもは学年末の成績が発表された時だけなのに。
今年は時期も早いし、なんだか増えた気がする。


「エリー」
『セブっ!どうしたの?今日は図書室にいなかったのね』
「ちょっと用があって…それより、聞きたいことがある」
『なに?どうしたの?……そんなに怖い顔して…』
「最近ブラックと仲が良いのか?」
『シリウス?別にふつうだけど…いつも通りよ』
「こないだのホグズミートは誰と行った?」
『こないだは、シリウスよ』
「……。そうか…」
『どうしたの?』
「何でもない。呼び止めて悪かった」
『待ってよ、セブ。確かにシリウスと行ったけど、
 でもそれは特に深い意味があるわけじゃないのよ?』
「……どのみち僕には関係のないことだった」
『どうしてそんな言い方するの?私達、友達でしょう?』
「…あぁ。友達だ…急ぐからもう行く。リリーによろしく」
『分かったわ……』


セブは踵を返すとさっさと行ってしまった。
一人ぽつんと中庭に取り残されるわたし。
こそこそ話していた女の子たちはコチラを茫然と見ている。
私だって意味が分からないわよ…

はぁ…なんだか泣きそう。


「エリー?」
『…リーマス』
「どうしたの?こんな所で立ち尽くして…」
『あ〜…天気がいいなって思ってたのよ!』
「そうかな…?僕には曇っているように見えるけど」
『え、さっきまで晴れてたのに…』
「天気の変化に気付かないくらい考え込んでいたの?」
『そんなことはないわ!そうだ、リーマスは寮に戻るの?』
「そうしようと思っていたけど…エリーは?」
『そうね…もう少しぼんやりしたいかな』
「僕も付き合うよ」
『えっ!?でも戻る所だったんでしょ?三人はいいの?』
「いいんじゃない?僕達ずっと一緒って訳じゃないよ?
 みんなだって何してるか分からない時あるし…
 特に問題児二人はね(肩をすくめ)」
『それもそうね(笑)』
「僕、行きたい所があるんだ。付き合ってくれない?」
『えぇ、いいわよ』
「荷物持つよ」
『じゃあ半分だけお願い』
「うん、ついてきて」


リーマスに本を半分持ってもらい、ついていく。
一体どこに行くんだろう…??


「こっちだよ」
『ねぇ、リーマス…ハグリッドの所に行くの?
 もしそうなら少し南に来すぎているんじゃない?』
「ううん、違うよ。ハグリッドの所じゃないんだ」
『え?じゃあどこに行くの?』
「いいから、ついてきてよ」
『うん…分かった…』


リーマスのことだ。
変な所には連れて行かないだろう。
あの悪戯大魔王ジェームズとは違うもの


「ここ、くぐれるかい?」
『くぐれるけど…なに?』
「いいから。くぐって?」
『うん……わお…』


草のアーチのようなものを抜けると
そこは禁じられた森の中…
小さなユニコーンがそこにはいた。


『ユニコーン…?わたし…はじめて見たわ!
 でもどうしてこんな所に…?森の奥に生息する
 神秘的な生き物だと聞いていたけど…違うの?』
「その通りだよ。でもこの子は親とはぐれたみたいなんだ。
 ケガもしていたから手当てしてあげたら懐かれちゃって」
『そうなの…?もうケガは大丈夫なの?』
「たぶんね。ほら、これが餌だよ」
『おいで〜チビちゃん…ご飯をあげるよ〜』


はじめは警戒していたユニコーンも
リーマスが声をかけると恐る恐る近づいてきた


『わぁ!私の手からご飯を食べたわ!』
「やったね、エリー。ジェームズが来た時は
 この子を手懐けるのに数日かかったんだよ。
 エバンズとのデートには間に合ったみたいだけど」
『じゃあリリーが会った動物ってこの子のことなの?』
「うん。でもあの時は他にもいたみたいだけど…」
『ふーん…ねぇ、リーマス。また時々ここに来てもいい?』
「もちろんだよ。エリーも可愛がってあげてよ。
 でも絶対内緒にしてくれるかい?バレたら退学かも…」
『うん!もちろんよ!!この子に何かあっても嫌だしね』
「ありがとう」


その後、しばらくそこにいて、一緒に寝転んだり
体を撫でてあげたり、ゆったりした時間を過ごした
久しぶりに周りの目を気にすることもなくて快適!
ここにはリーマスと可愛いユニコーンしかいないもの


「エリー、そろそろ戻ろう」
『え〜、もう…?まだここにいたい』
「でも晩ご飯までには戻らないと…
 エバンズも心配するんじゃないかい?」
『もうそんな時間!?全然気付かなかった…』
「ここは時間の流れが遅く感じるからね(笑)
 さぁ、たって。ホグワーツに戻ろう」


差し出されたリーマスの手を取る
最後にもう一度ユニコーンを撫でてから
ホグワーツに戻った。

明日は図書室でユニコーンの好物を調べよう。
あの子にもおもちゃが必要かな…?
寂しくないように森の友達も作ってあげたいな。

そう言うとリーマスはそうだね、と笑ってくれた。


『リーマス』
「なんだい?エリー」
『ありがとう』
「うん、どういたしまして」


きっとリーマスはこの"ありがとう"の
本当の意味も分かってくれているんだろうな。
本当に賢くて優しい友人。

今日は良い気分で眠れそうだ。







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