そして満月当日
二人は結局、変身出来たのかしら?
あれからアニメーガスについての話は
何もしていないのだけど…不安だわ…


「エリー、待ったかい?」
『いいえ、今来た所よ。で?どうなったの?』
「結果から言うと、僕だけ成功したよ」
「俺とピーターは変身出来なかった…」
『そう…仕方ないわ!次の満月までを目指しましょう』
「悪いな、エリー」
『大丈夫よ、シリウス。焦っても仕方ないわ』


焦って、がむしゃらに魔力を使って
枯渇させて三ヶ月も倒れたの私が
言うんだから本当なのよ?(笑)

そういえばシリウスは、ははっと笑った


「というわけで、今日は僕とエリーで行こう」
『えっ?二人だけで行くの…?』
「あぁ!変身出来ない二人がいても邪魔だろう?」
『邪魔なんてそんな言い方…』
「いいんだ、エリー。
 俺は留守番してピーターと猛練習してるからよ
 二人だけで行かせることになって悪いな」


シリウスは私の頭をぽんぽん、と撫でた
普段の彼からは想像出来ないくらい優しい手つきで…


『う、うん…練習頑張ってね』
「おう。エリーも気を付けろよ」
「ねぇ、僕は?」
「一発リーマスに殴られて来い」
「分かってる?相手は人狼だよ?
 僕だって無事じゃいられないよ!」
「お前なら大丈夫だ」
「うん、その根拠はどこから来るんだい?」
『「 はははっ 」』
「冗談はさておき…そろそろ行こうか」
『そうね…リーマスの元へ行きましょう』
「いってらっしゃい、ジェームズ、エリー」
『「いってきます」』


さぁ、二人だけの冒険が今幕を開ける…
すっっごく不安な冒険がね!


「大丈夫かい?エリー」
『あのね、ジェームズ。すっごく不安なんだけど』
「え?なんでだい?」
『だって私はジェームズの動物を知らないのよ?
 凄くか弱い動物で、リーマスに狙われて
 食べられちゃったらどうするの…!?』
「大丈夫だよ、いざとなったら杖もあるし
 人間に戻って眠らせればいいんだからさ」
『そうかもしれないけど…』
「とにかく安心してよ。エリーに怪我はさせない」


ニコッと笑ったジェームズ
こういう所は頼りになるんだけどなぁ…


「さぁ、着いたよ。用意はいいかい?」
『えぇ、もちろんOKよ』
「……やっぱり僕から?」
『当然でしょ?』
「はぁ…じゃあいくよ」


さて?拝ませて頂きましょうか?
……わお、なんて立派な牡鹿かしら…
角がとっても素敵…

私はつい角に手を伸ばして触れてしまった


『ふふふ…牡鹿の角なんて初めて触ったわ』
「…!(ブンブン)」
『こしょばかった?(笑) ごめんね』


ジェームズは角で叫びの館の二階を指す
早く行こうってことかしら?
上からはリーマスの苦しそうな声が聞こえてきた
……そろそろ変身し始めているみたい


『行こう、ジェームズ』


一声かけると私もヒッポグリフに変わる
ジェームズがついてこい、とばかりに先を行く
ずんずん先に歩いて行くけどさ、ジェームズ…
私、大きいから通りにくいんだけど…

うんしょ、と翼をたたんで、なるべく小さくなる
危うく二階の廊下を壊す所だった←


「キィ!キィ!」
『…?!』


ジェームズが鳴いてる、何!?
部屋の扉の外から見ると狼になったリーマスが
ジェームズを威嚇しているところだった
……大丈夫なんだろうか…?
やっぱり違う種類の生き物とは分かり合えない?
襲うのは人間だけって…
アニメーガスも見抜くのかしら…?
本当にジェームズが噛まれてジェームズまで
人狼にしてしまったら…?責任取れるの…?

今更そんな不安が襲ってきた。

とにかく中に入らないと!!


下を向いて丸くなって中に入る
……あれ、仲良くなってる


顔をあげた時、鹿が狼に頬ずりしている所だった
角が刺さりそうで怖いけど…(笑)


その日は三人(三匹?(笑))で仲良く寝た
リーマスを真ん中にして、私とジェームズは
体を丸くして、リーマスを守るようにして寝る

リーマスは暖かいようですぐ眠りについた



……そして早朝
私はジェームズに叩き起こされた


「エリー!エリーってば!!」
『んん…リリー、もう少し寝させて…』
「僕はリリーじゃないよ、エリー」
『リリーじゃな……きゃっ、んー!』


リリーじゃないよ、という言葉に反応して
目を開けるとジェームズの顔面どアップ
思わず叫びそうになったらジェームズに
口を手で塞がれた…その手は綺麗なんだろうな!←


「しー!!リーマスが起きるだろ?」
『ん、んんん!!』
「手を離すから静かにしてよ?」
『(こくこく)』
「はぁ…おはよう、エリー」
『……おはよう』
「先にここを出よう、リーマスが起きたら困る」
『えぇ、そうしましょう』


リーマスを見ると人間に戻っていた
その…上半身裸だったからかなりセクシーで
かなり寒そうだったけど…
何かをかけてあげたいけど、かけてあげたら
誰かが来たことがバレてしまうから我慢して外に出た


そして叫びの館を離れた瞬間ジェームズの頭を殴った


「急になんだい!?」
『……上手くいって良かったわね』
「え、無視?まぁいいや。リーマスの体を見てみたけど
 自分を傷つけているような傷もなかったしね!」
『ジェームズが鳴いた時はハラハラしたわ』
「ははっ!本当かい?
 エリーに心配して貰えるなんて光栄だね!」
『リーマスを心配したのよ』
「そういうことにしておくよ(笑)
 そんなことよりエリーは?」
『え?』
「怪我はないかい?」
『…うん、ないわ。ありがとう』
「良かった」


ニッコリ笑って頭を撫でるジェームズ
優しい彼に私まで笑顔になる


「さぁ、早く帰ろう。リリーにバレる前にね」
『この時間ならまだ二度寝出来るわね!』
「エリーまだ寝る気?」
『起きててもやることないもの』
「全くエリーって…」
『何よー!』


じゃれあいながら寮に戻る
ジェームズにおやすみを告げて
自分のベッドに戻った私は宣言通り
幸せな二度寝の旅に旅立った





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