10

ダンブルドア先生とマクゴナガル先生が
医務室を出て行ってから沈黙が続く
私は意を決してアヴィ先輩に話しかけた。


『全て正直に話してくれますか?』
「あぁ。誓って嘘はつかないよ」
『お願いします、アヴィ先輩』
「全てのはじまりはクリスマスパーティー
 リリーに振られた事から始まったんだ…」
「えっ…私に…?」


突然、自分の名前が出てきて驚くリリー
アヴィ先輩は慌てて付けたした。


「あぁ、でもリリーは悪くないし関係ないんだ。
 あの後僕は一人ですぐにパーティー会場に戻っただろ?
 抜け出してるのがバレたら何て言われるか…
 ただでさえレイブンクローに入ったことも
 良くは思われてないんだ。君なら分かるだろ?ブラック」
「あぁ……」
「落ち込んでる僕に両親が優しく話しかけてきたんだ
 僕はつい素直に、振られた事を話したんだ。
 そしたら両親は…例のあの人がいるから
 会わせてあげるわ、だから元気を出しなさい
 そう言ったんだ。その日僕は初めてあの人に会った」
「アヴィは純血主義じゃないと思ってたのに」
「僕だって会いたかった訳じゃないさ!
 でも逆らう訳にはいかないじゃないか…」


ポッターの言葉にアヴィ先輩は拳に力を入れる


「例のあの人も僕に優しく話しかけてきた
 僕を振った相手を見たいって言うんだ。
 だからホグワーツでリリーとエリーと
 一緒に撮った写真をあの人に見せたんだ
 そしたら例のあの人はエリーを指差して
 エリーの事ばかり聞くんだ…」


アヴィ先輩の言葉に全員が青ざめる
例のあの人が興味を持ったばかりに…
ノクターン横丁で私を見ていたから
きっと顔だけは覚えていたんだろう


「双子の見分け方だとか、変わった事は出来るのかとか…
 単なる興味だと思ったから素直に話したんだ
 エリーが捕らえられるとは思ってなかった。
 もしそうなると分かっていたら話さなかった」
「当然よ…!」
「リリー、落ち着け…」


興奮したリリーをセブがたしなめる
アヴィ先輩はリリーから目を逸らし下を向いてしまった


「エリーには本当に悪いと思っているよ」
『えぇ…それで、どうしてアヴィ先輩の家に?』
「両親は純血主義でね。
 例のあの人に気に入られようとして
 あの屋敷を提供していたみたいだよ」
「そのおかげでアヴィ先輩から情報を貰えて
 エリー救出作戦を立てやすくなったんだけどさ」
「そもそもエリーの事を話さなければ
 エリーはこんな目には合わなかったのだ。」
「今回ばかりはスネイプに同感だね」


ポッターの言葉にセブとリーマスが反論の声をあげる
シリウスは相変わらず黙っている。


『アヴィ先輩はダンブルドア先生に話したんですか?』
「あぁ。エリー救出作戦を
 考えたのはダンブルドア先生なんだ」
「エリーは不死鳥の騎士団って知ってるかい?」
『ううん…』


リーマスの言葉に首を振る私
ポッターが説明をしてくれた


「例のあの人の集団、つまり死喰人に対抗するために
 作られた組織のことなんだ。彼らが陽動作戦を」
「囮役のことだね」
「そう、囮を引き受けてくれたんだ」
「だから僕達は屋敷に忍び込む事が出来たのさ」
『そっか…』


ダンブルドア先生に見捨てられたと思ってた
でもそれは勘違いだったのね…?


「許してくれるとは思わないけど…」
『アヴィ先輩…』


私はアヴィ先輩がずっと握りしめている手に
自分の両手をそっと重ねて包み込んだ


『こんなに握りしめたら手が可哀想です』
「エリー…」
『アヴィ先輩。もういいです…私を救ってくれたから』
「エリー!あなた…本当にそれでいいの!?」
「エリー!本当にいいのかい!?」


リリーとポッターがハモる


『いいの。』
「エリー、それじゃ僕の気が済まない。」
「じゃあ一発殴るか?」
『シリウス。私は殴れないよ、こんな体だし』
「俺が代わりに殴ってやるよ」
「僕はそれで構わない」
『じゃあそうしましょう、お手柔ら』


お手柔らかにね?と言う前にシリウスが
アヴィ先輩を殴ってしまっていた。
バキッて言ったけど……


『大丈夫…?今の音…』
「大丈夫。エリーが受けた痛みに比べたらましだ」
「あぁ…大丈夫だよ、ありがとう」
『あともう一つだけ気になることが…』
「なんだい?」
『助けたのがみんなだとはバレてませんよね?』
「えっと…」
「あぁ、それは大丈夫だよ。不死鳥の騎士団が
 助けたことになってると思うからね」
『ありがとう、リーマス』
「エリーはアヴィに優しすぎないかい?」
『惚れた弱みよ、ポッター』
「もういいですか?」


マダム・ポンフリーがしびれを切らして入ってきた


「この子は病人なんですよ!早くお帰りなさい」
「マダム、私も帰らないとだめですか?」
「もちろんです」
『リリー、私なら大丈夫よ?』
「でも……」
「行こう、リリー」
『明日、また話しましょう』


そう言うとしぶしぶ出て行くリリー達
なぜかシリウスだけが動かない


「ブラック、何をしているのです」
「最後に一つだけ。」
「手短に」
「アヴィの家族より自分の心配しろよ」
『え…?』


シリウスの言葉には少し驚いた
まさか彼がそんなことを言うために残るなんて。
相当心配をかけたようだ…
シリウスはそれだけ言うと医務室を出て行った


「さぁ、薬を飲んで眠りなさい」


マダムの一言で、賑やかな空気から
いつもの静かな医務室へと戻った




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