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今日はあのポッター実験から初めての満月
リリーに『ちょっと体調が悪いから医務室で寝るわ』
とだけ伝えて、部屋を抜け出した。
リリーは心配してくれていたから
ちょっと悪いことしたかな…
でも初日だもの、何があるか分からないから…


「エリー、こっちだ」
『……シリウス?どこにいるの?』


シリウスの声はするのに姿は見えない
キョロキョロしているとにゅっと手が出てきて
私の腕を掴んで引っ張った


『驚いた、透明マントね?』
「あぁ。ジェームズはリーマスを尾行してる」
『大丈夫なの…?』
「体調の悪いリーマスは驚くくらい周りを見れないんだ」
『そう、なの?』
「ジェームズならヘマしねぇと思うが…急ぐぞ」
『えぇ……それにしても狭いのね』
「元は一人用だからな」


シリウスと身を寄せ合って動く
途中、見回りのマクゴナガル先生に
すれ違った時は心臓がバクバクした
……リリーに伝わらないといいけど


「ジェームズ」
「やぁ、シリウス」
「どうだ?」
「前と同じ。少し前に入って行ったよ」
「そうか…」
「やぁ、エリー。無事に来れて良かったよ」
『狭かったけどね(笑)』
「透明マントは一人用だからね」
『シリウスと同じこと言ってるわ』
「おい、そんな事はいいだろ?作戦を話せよ」
「あぁ、そうだった。今回は初めての満月だから
 透明マントはエリー一人で使ってくれ。
 女の子に何かあるといけないだろ?」
『あなた達はどうするの?』
「保護呪文と透明薬を飲むよ」
『透明薬ですって?自分で調合したの?』
「まさか!ちょっと拝借したのさ!」
『拝借…』


まぁ、ポッターとシリウスが調合出来るとは
思えないけど…拝借ってどうなのよ…


「だからエリーは気にしないでよ!」
「部屋に入ったら俺とジェームズが先頭で行く
 エリーは一歩後ろの俺達の間に立てよ」
「もし、リーマスがもう変身してたら困るからね」
『分かったわ、ありがとう』


意外と紳士なのね
でも覚悟を決めなくちゃ…
変身してないとは限らないものね…


「覚悟はいいかい?」
『えぇ、大丈夫よ』
「行くぞ…」


シリウスとポッターは透明薬を飲み
私はポッターの透明マントを羽織り部屋に入る
そこにはまだ変身前のリーマスがいた
勝手に開いた扉を見て不思議そうにしている


「風、かな…?」


リーマスが扉を閉めてベッドに寝転ぶ
チャンスは、今
リーマスに杖を向け、呪文を唱える


「…上手くいったか?」
「多分、大丈夫だ。ぐっすりだよ」
『良かったわ…後は無事に
 目覚めてくれるのを待つだけね』
「帰るぞ」
「透明薬っていつ解けるんだっけ?」
「俺が知るか、一時間くらいか?」
『はぁ、なんだか疲れちゃった』


すっごくドキドキした!
うだうだやってるシリウスとポッターを置いて
先に寮に帰ろうとすると、後ろから慌てて
追いかけてきたのが分かる


「エリー、一人じゃ危ないよ」
「それに透明マント返せよ」
『ホグワーツで危ない事なんてないわ
 それに透明マントはポッターのだから』
「そうだけどよ…」


三人で寮に戻り、ポッターに
透明マントを返してその時はっと気付いた


『私、今日は医務室で寝るわって
 言っちゃってたんだわ!忘れてた…』
「え?どうするんだい?マダムも寝てるよ」
「リーマスのベッドで寝れば?」
『「え!?」』
「それはさすがにまずいよ、シリウス」
「じゃあどうするんだよ?」
『えっと、私の臭いがついたらリーマスにバレるわ』
「そこかい!?エリー」
「じゃあ俺のベッドで寝ろよ。俺はリーマスので寝る」
『……変な事しないでよ』
「しないよ!僕にはリリーだけだから!」
「しねぇよ、そこまで野蛮じゃない」
『じゃあ…お言葉に甘えて』


初めての男子寮…
ドキドキする…


「ごめんね、汚いけど」
「そこが俺のベッド」
『お邪魔します…』


シリウスのベッドに潜り込む
あ…なんかいい臭い…
もっと男の子臭いかと思ったのに
ふふ、と笑うとシリウスに怪しまれた
それを軽く交わして眠りにつく

疲れていたのもあるけど、なんだかぐっすり眠れた




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