10


キャンプがある森にたどり着いた。
でもおかしい…ウォーカーの数が極端に少ない。
今までの遭遇率から考えてもぐっと下がった。


その理由はすぐに分かった。
キャンプが近付くにつれ、大きくなる銃声と悲鳴
そしてウォーカーの数。そう、キャンプが襲われている。


「くそっ!俺はローリ達を探す!」
「行け!」


リックは最愛の妻と子供を探しにキャンプに飛び込み
後ろをダリル・グレン・私・Tドッグの順で入って行った。
孤立したモラレスを助けてからシェーンの元へと向かう。
彼はみんなを守る様に壁となり戦っていた。


やがて銃声とうめき声は止んだ。
肩で息をして、震える手を見つめた。


「ケガはないか!?無事か!?」
「だめだ…何人かやられた……」
「あぁ…!エド…!」
「パパ!パパ!」
「あぁ、エイミー…どうすればいいの!?」


ウォーカーがいなくなり、落ち着くにつれ
亡くなった人達との最後の別れを突き付けられる。
私はこの状況でどうしていいか分からず、
ただ呆然と立ち尽くしていた。


「エイミー?エイミー……」


エイミーは実の姉に看取られて息を引き取った。
カールはリックの胸で泣き叫び、私も口を抑えて泣いた。


「俺が穴を掘ったのは…このためだったのか…」


ジムのその言葉だけがやけに響いて聞こえた。



「仲間の埋葬は明日にしよう」


どれだけの時間、そうしていたか分からないが
デールの言葉にみんなは頷いた。
ただ一人アンドレアだけはエイミーの側を離れなかった。


『アンドレア……』
「今はそっとしておきましょう」


ローリにそう言われ、出した手を引っ込める。
アンドレアにも時間が必要だと思い、側を離れた。

そのままテントにも戻る気にはなれなかったけど
デールに言われて大人しくテントに戻ることにした。


今日は色んな事がたくさんあった。
グレンを失いかけたし、長い時間緊迫状態にもなって
必死になって走ったりして体はもうくたくたなのに
目を閉じるとさっきの光景が蘇ってきて全く眠れない…

私はため息をついて起き上がると外に出た。


「眠れないのか?」


キャンピングカーの上で見張りをしているデールだ。
向こう側にはダリルもいて、こちらをチラッと見た後
すぐに視線を落として何かの作業をしているみたい。


『えぇ、そうなの。さっきの光景が目に焼き付いて……』
「無理もない…今はさっきの出来事が嘘のように静かだ」
『そうね…。動物の鳴き声や風の音さえ聞こえないわ…』


上を見上げると相変わらず綺麗な星が輝いていた。
そしてキラリと流れ星が流れた。


「眠れなくても体は横にしていた方がいい。」
『そうね、うん…そうするわ、デール。』


そう答えてテントに戻ろうとしたけど、
ふと今日のダリルの行動を思い返していた。


「……なんだよ?」


ダリルの目の前に立つと彼は眉間にしわを寄せて顔をあげた。


「そこに立たれちゃ影が出来て手元が見えねぇだろうが」
『ごめんなさい』
「……は?」
『足手まといにならないって言ったのに…
 結局、あなたに助けてもらった……だから…』
「別に気にしちゃいない」
『でも……』
「俺がいいって言ってんだからいいんだよ」
「エリー。謝るより良い言葉があるだろう?」
『……ダリル、ありがとう』


デールの言葉を受けた私がお礼を言うと
ダリルはぎょっとした顔をして何も答えなかった。

私もダリルの次の言葉が怖くて2人におやすみを告げると
さっさとテントの中に入って、シュラフに包まった。


明日は仲間の埋葬をして現状をどうするか考えなければ…
色々考え込んでいる内に、限界を迎えた私の体は深い眠りに落ちて行った。







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