※注意事項※
この先の物語を読み進めるにあたって
注意して頂きたい点がございます。

本来、ここではグレンがニーガンに殺されます。
誠に勝手ながらこのお話はここではグレンは死にません。
今後もグレンがどうなるかは現段階では決めていません。
(Season7まで視聴済み)

忠実なドラマ原作沿いをご希望の方にはお勧めできません。
以上のことを理解したうえで、お話を読み進めて下さい。
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「それじゃ……こうだ!!」


ニーガンがルシールを振り下ろした先にはお兄ちゃんが…
私は思わず悲鳴を漏らしてしまう。


「これはひでぇ。目玉が飛び出しちまった!
 何か言おうとしてるみたいだが…?なんだ?」
<エリー…どこ、だ…?>
「頭を殴られたんだぞ?ゾッとするぜ!」
<おにい…ちゃっ…!>
<わらって、いきろ……>
「なんだよ。そういうことか?辛いだろうな…
 気の毒だよ…本心だ。だが言ったろ?例外はない!」


苦しむお兄ちゃんの頭に再びルシールが食い込む。
最後に手を伸ばしたお兄ちゃんの手はやがて下に落ちて行った。


「ルシールは喉が渇いてる。吸血鬼バッドだ!」


ニーガンは高らかに笑うと、こちらに歩み寄ってきた。
涙と血でぐしゃぐしゃの顔を掴みあげられる。


「さっきなんて言ってたんだ?」
<うぅっ…おにいちゃん……>
「さっき、奴はなんて言っていたんだ!?」
『わ、笑って…生きてくれって…』


ニーガンはまた笑うと私の顔から手を離し
リックの元へと歩み寄っていった。


「なんだ?キツい冗談だったか?」
「殺してやる……」
「あ?小さい声じゃ聞こえねぇよ」
「今日でも、明日でもないが…必ずお前を殺す」
「まったく…サイモン。こいつの武器はナイフか?」
「手斧だ」
「手斧?」
「斧を持ってた」
「サイモンは俺の右腕でね。大事な存在だ。なくてはならない。
 色々大変なんだ。お前の右腕はまだ息をしているか?まさか俺が…?」


そんな会話が耳に聞こえてくる。
でも私は地面を見てただ涙を流していた。

リックが連れ去られて、しばらくしてから私は顔をあげ
お兄ちゃんが座っていた場所を見つめた。
確かにそこに兄がいたはずなのに……

あの優しい笑顔をもう見る事は出来ない。
あの温かい手で私を撫でてくれることもない。
私を叱ることも、褒める事も、一緒に笑うことも…
もう兄とは会えない……


『…っ。』


息が出来ない。
上手く呼吸が出来ない。苦しい……


「エリー…?」
「ちっ。過呼吸か?お前ら動くなよ」


サイモン、だったか。男が近づいてくる。
何か私に話しかけているのは分かるが息が吸えなくて苦しい。
兄の遺体から目が離せなくて、どんどん苦しくなる。
涙も止まらない。

あぁ、私はこれで死んでしまうのかな…
それだったら初めから私が身代わりになれば…


「いいだろう。呼びかけるだけだぞ」
「エリー!!!俺を見ろ!」


グレンの声に意識が少しずつ暗闇から浮かび上がってくる。
何度目かの呼びかけでグレンを視界に捉える。
涙ではっきりとは見えないけど、確かに見える。


「エリー、いいな…?俺を見るんだ。
 ゆっくり息を吸って。俺の呼吸に合わせて」


グレンの言葉に従って呼吸を整えようとする。
私がお兄ちゃんの方を向いてしまいそうになる度、
グレンが声を掛けて意識を逸らさないでいてくれた。
そうしてやっと息が落ち着いた頃。
小さな小鳥の鳴き声が聞こえた……



車のエンジン音が鳴り響き、リックとニーガンが戻った。
ニーガンはリックを引きずると私達の前に。


「ただいま。分かってるか?今のドライブの意味が」
「あぁ、分かった…」
「お前が俺を見る目の話をしたかった。
 理解させ、見方を変えさせたかった。
 だが、いまだに同じ目で見てやがる!
 汚いものでも見るような目だ。だから…
 チャンスをやろう。」
「あぁ、分かったよ…分かった……」
「よし、それじゃこうしよう。特別ゲームだ!
 お前の行動次第では全員の最後の1日になるか
 最悪の1日で済むかだ…全員の頭に銃を向けろ。」


頭には銃口が突き付けられ、カールが呼ばれて前に出た。
私達は静かにその様子を見守ることしか出来ない。


「サウスポーか?」
「……なんて?」
「左利きか?」
「違う」
「よかった」


そう言うとカールの左腕にベルトを巻くニーガン。
一体、奴は何をしたいのか…


「きついか?」
「いいや」
「きつい方がいいんだが…
 よし、パパの隣にうつ伏せになり腕を広げろ」


保安官の帽子を投げ飛ばされ、うつ伏せになったカール。
その姿を見て一気に嫌な予感が頭を駆け巡る。


「サイモン。ペンは?」
「あぁ、ある。」


サイモンからペンを受け取ったニーガンは
カールの袖をめくり腕に黒い線を一本引いた。


「ごめんな。冷たいけど我慢しろよ。」
「頼む、やめてくれ…やめろ、頼む…」
「俺が?俺はやらない。リック。
 斧を持て。線に沿って息子の腕を切れ。」


リックには酷な選択。
ここでカールの腕を切り落とすか、私達全員が死ぬかだ。
ニーガンという男はどこまでも酷い男なんだろう。
心の底からこいつが憎くて仕方がない。


「分かるよ、すぐには無理だ。
 気持ちは分かるが、やらないと全員死ぬぞ。
 こいつらもカールも死に、街にいる仲間も死ぬ。
 最終的にはお前もだ。数年生かし苦しめたあとにな」
「もうやめて。私達、理解したわ」
「お前がだ。そうだろ?リックはどうかな?
 線の上をスパッと切れよ?聞こえは悪いが…
 サラミみたいに切るんだ。切り口が綺麗なら
 うちの優秀な医師が助けてくれるさ、多分な…
 ……リック。今すぐやれ。
 じゃないと俺が、ガキの頭を粉々にする。」
「俺に、俺にしろ…俺は何をされてもあんたに従うから」
「ダメだ。選択肢はない。…リック、斧を持て。
 決心しなければそれこそ悪い判断だ。
 全員死ぬんだぞ?お前は醜い惨劇を全て見ることになる。
 なんだよ?数えさせる気か?
 いいだろう。お前の勝ちだよ!数えてやる!」


ニーガンはリックを急かすように数をカウントし始めた。
リックはニーガンに懇願するが聞く耳を持たない。
ついにカウントは2、そして1になった。


「終わりだ……」
「パパ。いいよ…やって……」


リックはカールの手を握り締め、斧を振り上げた。
するとニーガンが近づき、リックに話しかける。


「俺に従え。俺に供給しろ。俺がボスだ。いいな?」
「(頷く)」
「聞かれたら答えろ!俺に従い、供給しろ!」
「あ、あぁ…供給する…」
「俺がボスだな?そうだな!?」
「そうだ……」
「よし。それだ!その目を見たかった!」


ニーガンは満足そうに笑うとリックから斧を取り上げた。


「みんなで成し遂げた。
 特に死んだ2人は敢闘賞ものだな!
 今日は実り豊な1日になった!!
 これで分かったはずだ。理解しただろう?
 物事の仕組みってやつを…
 新たな世界だ。今まで信じてきた世界はすべて終わりだ
 ドワイト!奴を車へ」


ドワイトはダリルを引っ張って車へ。
抵抗空しく、ダリルは車に乗せられた。
彼の名前を呼ぼうとしても声が出ない。
1晩中、泣き続けた私の声は枯れてしまった…


「肝が据わってる。誰かさんと違ってな。
 気に入った、俺の物だ。
 また今度俺を殺そうなどと思ったらあいつをバラバラに…
 彼の名前は?」
「ダリルだ」
「わぉ、いいね。ピッタリの名前だ。
 ダリルをバラバラにしてお前の家の玄関に置くか
 お前の所へ連れて行き、その手で殺させるからな。
 惨めなクソ野郎共を歓迎するぜ!車は置いてく
 俺に供給する物を集めておけよ。
 1週間後に回収に行くまで、さらばだ」


ニーガン達が去り、ダリルも連れて行かれてしまった。
そこから私の記憶はプツンと途切れた。






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