21



リックの視線の先にはユージーン。
殴られた跡が無数に付いている……


「良かった、到着だ。目的地へようこそ」


両手を広げたこの男。
声に聞き覚えがある……
初めに立ち止まった時、リックと話していた男だ。


「さぁ、銃を渡せ。今すぐにだ」
「話を……」
「話は終わりだ。言う事を聞け」


私達は銃や武器を奪われた。
顔が青白くなってしまったマギーをリックの隣に座らせる。


「ひざまずくんだ。」


男の言葉に戸惑いながらも私達はひざまずいた。
これから私達は一体どうなってしまうの…


「他の奴らも出すんだ!
 ドワイト!早くしろ!」
「ほら、出るんだ。再会だ」


扉が開き、そこから行方知れずになっていたダリル達が現れた。
ダリルを先頭にミショーン、ロジータ、お兄ちゃん、そしてグレン。


「エリー……」
『ダリル…っ』
「マギー…?」
「ひざまずけ!」


ずっとマギーが恋焦がれていたグレンはここに閉じ込められていた。
あれだけ大移動をしても道中で見つからないわけだ…
初めから、そう最初のあの瞬間から私達は奴らの罠に嵌まっていた。


「よし!全員集合だ!紹介しよう」


私達は全員一列に並び、ひざまずいた。
男はそれを確認すると車を叩いた。
自然と車に視線が集まる。


「ちびったか?もうすぐその時がやって来る。
 ションベンの町が出来る。どいつがリーダーだ?」
「そこに。その男だ」
「やぁ。リックだな?ニーガンだ。
 よくも部下達を殺してくれたな?
 お前達を殺そうと送った部下達もお前に殺された。
 よくないね。そうだ、よくない。
 どのくらいよくないか分かってないようだな。
 すぐに分かるようになる。逆らった事を後悔する。必ずだ」


不敵な笑みを浮かべるその男はニーガン。
この男がここにいる男達の親玉。憎むべき相手……


「何をするにせよ、世界秩序を乱すべきじゃない。
 新たな世界知秩序は簡単だ。
 もしお前がバカだとしても理解できる。
 いいか?よ〜く聞いておけ。」


ニーガンはバッドに有刺鉄線を巻いた物を
リックの顔の横に近づけてこう言って笑った。


「俺に従え。さもないと殺す。
 今日はよく学んだろ?教えてやったんだ。
 俺がどんな人間で、何が出来るか。
 俺がボスだ。持っている物を俺に渡せ。
 それがこれからのお前達の仕事だ。
 あぁ、分かるよ。飲み込むのは辛い話だよな?
 だが、飲み込め。必ず従うことになる。」


それからもニーガンの演説は続いた。
彼らに物資を届ければ私達を殺さない。
ヒルトップが交わした契約と同じ内容の物だ。


「罰を受けずに済むなんて思ってないよな?
 殺したくはない。理解させたいんだ。
 働いてほしいのに死んじまったら働けないだろ?
 畑仕事は苦手でね。だが、お前達は俺の部下を大勢殺した。
 残念なことに……許せない数だ。その報いを受けてもらう。」


誰かが息を飲む音が聞こえる。
そう……私達の誰かが…ここで見せしめに殺されるのだ。


「さぁ、それじゃ…お前達の1人を叩きのめしてやる。
 これは"ルシール"だ。彼女は素晴らしい…
 今から、誰か1人を選ぼうじゃないか。
 栄誉を受けるのは誰だ?ん〜…?」


ニーガンはゆっくりと歩み、全員の顔を見る。
エイブラハム、カールと声を掛けるけど、
リック以上に度胸のあるこの2人は怯んだ様子を見せない。
そしてニーガンはうすら笑いをしたままマギーの前へ…


「ひでぇな。目も当てられない。苦痛から解放してやる」
「やめろ!やめろー!」
「やめてっ!!」
「よせ、列に戻せ」
「放せ!やめろっ!やめてくれ…やめろ……」


マギーを守ろうとしたグレンはドワイトに連れられて
列に戻された。グレンの目には涙が浮かんでいる。


「よく聞け。今みたいな事は二度とするな。
 次は例外なくぶっ潰すからな?最初だけは許す。
 つい感情的になったんだよな?だが、次はない…」


恐怖と緊張で頭がどうにかなりそうだった。
ここにいるみんな、大切な家族。
誰にも死んで欲しくないし、私だって死にたくない。
でもここから全員が無事に逃げ帰る方法を見つけられない。
頭もぐちゃぐちゃで、いつしか私の手は震え、
勝手に涙が流れていて、自分でも制御する術が分からなかった。
とにかくここから逃げ出したい。誰か…助けて……


「お前のガキか?ははっ、お前のガキだな?」
「やめてくれ…!」
「おい!未来の殺人者を殺させないでくれ。
 これじゃ簡単すぎる!誰かを選びたい。
 俺の注文をみ〜んなが待ってる。〜♪♪」


そう言うとニーガンは口笛を吹き、再び歩き出した。
そしてついに数え歌を歌いだし、1人ずつ指して行った。


「いいか?誰かが騒いだらガキのもう片方の目を
 親父に食わせてやる。息をしてもまばたきしても
 泣いてもいい。……全部やるだろうよ。」


そうしてニーガンはルシールを振り下ろした。



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