あれから数日、私達は壁を修復し
町の中も以前同様に活気を取り戻した。

ロジータを中心にケガをしたお兄ちゃんや
スペンサー達が住民に武器の使い方を教え
外で戦える組は交代に物資調達を行っている。
カールもジュディスの子守が出来るようになった。
キャロルとよくご飯も作ってるみたい。


今日の物資調達班は私、ダリル、ヒース、リック。
ヒースが以前、見つけたと言う大型モールの下見だ。
彼が言うには以前はウォーカーの数が多かったから
ヒース達3人では入れそうになかったと…
だから今日、下見に行って、可能そうであれば
戦えるメンバーを連れて後日また来る予定だ。


「リック、ここだ。車はあそこに」


わぉ…
確かに大きいショッピングモールだ…
大きいからこそ"お客様"もたくさんいそう。
でもうまくやれば大量の物資を手に入れられる。
背に腹は代えられないとは言うけど…
それでも仲間を失うことは出来ない。


「よし、エリー。車の上から中を覗けるか?」
『うーん……建物の中にも何体か見えるわ…
 入口前の駐車場にはたくさんいるからだめ。
 入るなら従業員入口とかの方がいいかも…』
「ヒース、建物内の構図は分かるか?」
「少しくらいなら分かるけど詳しくは…」
「簡単でいい、教えてくれ」


ヒースが地面に建物内の地図を書き始めた。
それを見てダリルとリックは作戦を立てる。
私は車から降りて近くのウォーカーをナイフで刺した。
方向音痴の私が作戦に参加しても意味ないしね。


「エリー」


ダリルに名前を呼ばれて近くに行くと
リックから作戦を教えてもらい
裏の従業員入口から建物内に侵入した。


「エリーとヒースは椅子や机を運んでくれ。
 俺とダリルで表の入口を完全に封鎖しておく」
「あぁ、分かった。エリー、こっちだ」


リックとダリルがウォーカー殺しながら
入口に進んでいき、私とヒースは音を立てない様に
バリケードになりそうな椅子や机を運んだ。
3人が表の入り口からウォーカーが侵入出来ない様に
完全に封鎖するまで私は1階のウォーカーを殺しつつ
お洒落なワインボトルやおつまみ、枯れてしまったお花
きっとお金が詰まっているATMを見て回っていた。


「エリー、医薬品を置いている店を見つけた。
 医療物資だけは先に全て持って帰る。手伝ってくれ」
「リック、ダリルが入れ物を探して来いって言ってる」
『おーけー。その役目は私が貰った』


リック、ヒースの言葉に頷くと
先程見ていたお店に戻り、カラーボックスを探した。
真っ白のカラーボックスを抱えて3人の元に戻ると
既にダリルは段ボールに詰められたままの医薬品を抱え
一度、車に戻る所だった。


『1人で戻るの?平気?』
「平気だ」
『気を付けてね』
「あぁ」
「俺もすぐに行く」


リックの言葉にダリルは頷くと歩きだした。
私はヒースと共に医薬品をカラーボックスに入れ
リックとダリルが運び終わると地下に降りた。
地下の1階と2階は食料品売り場らしい。


「待て……下は上よりも奴らが多い」
「エリーとヒースは待機。
 上から来る奴らを警戒しておいてくれ」
『「了解」』


ダリルとリックが下を覗いて話す間、
私とヒースは上から降りてくるウォーカーを殺した。


「エリー、ワイヤーは持ってきてるか?」
『えぇ、持ってきてるわ。どう使うの?』
「エスカレーターに設置して下からおびき寄せた
 ウォーカーの頭をワイヤーで切る。
 ワイヤーで切れなくても足止めにはなるだろう」
「この棒を使おう」


ノアの故郷で手に入れたワイヤーをダリルに渡し
リックとダリルが簡易的な罠を作って行く。
今からリックとダリルが下に降りてウォーカーを
殺しつつここまでおびき寄せ、ワイヤーで
更に数を減らしつつ、地下1階を殲滅する作戦だ。


「エリーは下、ヒースは上を警戒してくれ。
 もし奥にいるウォーカーの数が多かった場合
 銃を使うかもしれない。その時はすぐ逃げて
 車で待機。俺達が戻らなかったら先に行け」
『分かったわ。気を付けてね』
「あぁ、ダリル行こう」


ナイフを構えた2人はワイヤーをくぐり
地下1階のエリアへと進んで行った。


「少し奥を見てくる。何かあったら呼んでくれ」
『分かった。でもあまり離れないで』
「あぁ、分かってる。すぐに戻るさ」


ヒースが1階に戻ったけど、宣言通りすぐに戻り
2人でリックとダリルが戻って来るのを待った。
しばらくすると奥からダリルの後ろ姿が見えた。
後ろ歩きでこちらに戻ってきているらしい…


『ヒース、彼らが戻って来た』
「……リックの姿が見えないな…」
『ダリルよりもう少し奥にいるんだと思う。
 いつも危険な役をするのはリックだから』


すぐにリックの姿も見えてホッとする。
でも更に後ろのウォーカーの大群を見て
ぎょっとしたのは私だけじゃないと思う…


『……私、目が悪くなったのかな?』
「………どうして?」
『ウォーカーの大群が見える』
「安心してくれ、俺もだ……」
『ヒース…目が悪いでしょ?』
「ふっ。その通りだ」


ヒースとウォーカーを見つめていると
ダリルが振り返って"下がれ"とサインを出した。
私とヒースは下がって2人の帰りを待った。

ダリルが先にワイヤーをくぐった。


「お前らは先に出口の確保をして出口付近にいろ。
 想像以上に奴らがいた。リックと殺せるだけ殺して
 後は外におびき出す。車の鍵だ、ヒース頼んだぞ」
「分かった。任せてくれ」
「エリー、これ持って行け」
『中に何が入ってるの?』
「ジュディスの離乳食だ」
『分かった。ありがとう』


ダリルからリュックを受け取るとヒースと出口へ。
一度、扉を開けて外にいたウォーカーを殺してから
扉を開けたまま中と外に1人ずつ立って待機した。


『ヒース、ダリル達が走って来た!
 車に乗ったらエンジンをかけて!』
「分かった!」


ダリルとリックがウォーカーから逃げてきたのを確認し
ヒースを車に走らせると、扉が閉まらない様に固定して
私も助手席に乗り込むと、サイレンサー銃を構えた。
2人が扉から出てくると車に乗り込むまで
ウォーカーの頭を撃ち抜いた。


「行くぞ!町と反対側に走れ!
 ヒース、スピードを出し過ぎるなよ」
「あぁ!分かった!」


車を出し、町と反対側に誘導する。


『このウォーカー達どうするの?』
「振り切るにはガソリンが足りない」
「……あれを倒せるか?」
「危険だが、やるしかねぇ」
「よし…少し先に車を止めて戦う。
 エリーは車の運転は出来るんだったな?」
『えぇ、最近は運転してないけど、たぶん…』
「車を止めたらエリーが運転席へ。
 銃で奴らを狙ってくれ。残りは外で戦う。
 ただし無理はするな?危険だと判断したら
 車に乗り、また奴らを遠ざけてから戦う。
 あいつらを殺すまでその繰り返しだ。いいな?」
「銃で戦うのか?」
「いや…弾は節約したい。ナイフだ」


ヒースはルームミラーを見ると
ウォーカーの量にため息をついた。
が、諦めたように"分かった"と言った。


「よし…あの木の先で止めてくれ」


車を止め、私は運転席に座り、窓を開けて銃を構える。
ガソリン節約のためエンジンは一度消した。
右側にダリル、リック、ヒースと並びナイフを構えた。
3人が戦い始めたと同時に私もウォーカーを撃って行く。


この作業を何度か繰り返し、やっと全てのウォーカーを倒した。


「正直、疲れたな……」
「ガソリンの残りはどれくらいだ?」
『町までは帰れると思うけど寄り道は無理』
「そうか…一度町に戻ろう。
 次に行く時はもう少し人数が必要だな」
「また行くのか?地下2階は徘徊者がもっといるかも」
「なんのためにウォーカーを誘き出したと思ってんだよ」
「せめて地下1階の食料だけでも確保しておきたい。
 明日、改めて物資調達に行こう。今日は帰って休む」
『了解』
「エリー、運転代われ」
『え?いいよ。疲れてるでしょ?私に任せて』
「お前に任せてる方が精神的に疲れる」
『ちょっと、なんでよ!』
「エリー。ダリルと交代しろ」
『リックまで……分かりました!』


疲れた顔のリックにまで言われてしぶしぶ交代する。
運転席にダリル、助手席にヒース、後ろにリックと私。


町に戻るとリックとダリルは一度シャワールームへ。
あのダリルがシャワーを浴びたくなるとは…


「珍しい事があるものね。おかえり、エリー」
『ただいま、キャロル。これ、ジュディスの離乳食。
 ダリルがこれだけは持って帰って来てくれたわ』
「あら、ありがとう。上手くいかなかったの?」
『医薬品と健康食品は持って帰って来た。
 ヒースとユージーン、タラが運んでるわ。
 中にはたくさんのウォーカーがいて…
 明日、もっと人数を増やして行くみたい』
「そう…じゃあ後でリックから話があるわね」
「おかえり、エリー」
『ただいまカール!!ジュディスも良い子にしてた?』
「あっ!」
「良い子にしてたって。おかえり、エリー」
「おかえり、エリー」
『グレン、マギー。ただいま』
「ヒースが集合をかけてる。リックは?」
『まだシャワールームよ。もうすぐ出てくると思う』
「じゃあ先に教会に行ってよう」


家にいたメンバー全員で教会に向かう。
ディアナが亡くなった今、話し合いは教会で行われている。

しばらくしてリックとダリルが教会に入って来た。
ダリルは私の隣に座り、リックは前に立って
今日、体験したことを話した。
そして明日一緒に行ってくれる有志を募ると。


「見張りはスペンサー、ハリー、カール。
 タラ、キャロル、ゲイブリエルは町の警護だ。
 その他のメンバーで行ってくれる人はいるか?」
「俺とマギーも行くよ。マギーは車が運転出来る」
『私とダリルはもうメンバーに入ってるんだよね?』
「当たり前だろ。俺とお前とリックは決定だ」


グレンとマギーはリックの話を聞きながら
相談し合っていたみたいだけど、結局グレンが折れて
マギーも運転手として一緒に行く事になった。
グレンとしてはマギーとお腹の子が心配だから
来て欲しくないみたいだったけど…
ダリルを見ると"分かってる"と頷いた。


「……俺も行く。今日行ったメンバーは行くべきだろ?」
「ヒース。これは強制じゃない。無理しなくてもいい」
「大丈夫だ…俺にも行かせてくれ」


ヒースの言葉に頷いたリック。
それからミショーン、エイブラハム、サシャ、ロジータ、
アーロン、モーガン、トビン、マイクが名乗りを上げた。


「よし、明日は車3台で行く。
 マギー、トビン、モーガン、マイクは
 駐車場でガソリンの調達をしていてくれ。
 後のメンバーは中に入りウォーカー駆除だ。
 それが終わったらマギー、モーガン以外で
 建物内の物資を集めて車に運ぶんだ。いいな?」


全員が頷くと、リックが"解散だ"と告げた。
リックがモーガンに話しかけに行くとモーガンが
マギーの方を見たから話はだいたい理解した。


「行くぞ」
『うん、いま行く』


出口の側にいたダリルに声をかけられて追いかける。
家に帰ると私もシャワーを浴びにシャワールームへ

さっとシャワーを済ませるとみんなで夕食を食べて
明日に備えて早めの就寝についた。







[ 172/216 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]