『隣、座ってもいい?』
「あぁ。Tドッグは?」
『消毒は終わったよ。』
「無事で良かった…」
『今は無線を頑張ってる』


グレンとTドッグの方を見れば、
無線をいじって試行錯誤している。
その隣ではリックを中心にここからの
脱出方法を考えている最中だ。


『ねぇ、グレン』
「ん?なんだ?」
『私達、最高の拾い物をしたと思わない?』
「……リックのこと?」
『そうよ。彼こそリーダーに相応しいわ』
「あぁ、そうかもな」
『食料はあまり手に入らなかったけど、
 リックが仲間になってくれたら心強いよ』


リックを見つめながらグレンと話す。
グレンも"そうだな"と言いながら頷いた。


「グレン!この通りにマンホールはあるか?」
「ちょっと待って」


モラレスに尋ねられたグレンは反対側まで走り
下を見下ろして確認すると、急いで戻ってきた


「ダメだ。この通りにはない。」
「そうか…じゃあダメか…」
「ちょっと待って。」


都市計画課に勤めていたというジャッキーの発言に
みんなで建物の地下に向かうことにした。
メルルとケガをしているTドッグはお留守番だ。


「確かにここか?」
『地下に続きそうな道はここしかなかったわ』
「下りてないけどね…さぁ、誰が行く?」


グレンが問いかけた瞬間、全員がグレンを見た。
あまりに全員が同じ動きをするので驚いてしまった。
まさかリックまでみんなと同じ動きをするなんて。


「……あぁ、分かったよ」
「私も行くわ」
「君は結構だ」
「なぜ?邪魔なの?」
「いや、そんな……」
「はっきり言え」


力強いリックの言葉にグレンは頷く


「分かった。今までエリーと2人でうまくやってきた。
 でもここに来てから災難続きだ。おっと悪気はないんだ。
 下に降りたいと言うなら…俺に従ってくれ。ここは狭い。
 奴らが来た時に人が多いと引き返せない。
 エリーと…もう1人だけ連れて行く」
『えぇ、いいわ』


それからグレンは全員に指示を出した。
誰が聞いても的確と思える指示にみんな従った。

そしてグレン、私、モラレスの順番で地下へ…
暗くてジメジメしたそこは最悪だった。


『ネズミがいる…』
「あぁ、進もう…」


ネズミがいるとか普通に不気味なんですけど!!
心の中で叫ぶが、決して声には出さない様に飲み込んだ。

懐中電灯で照らしつつ、先に進む。
途中までは順調に進めたが、途中で鉄格子が…


『鉄格子はなんとかなりそう?』
「バーナーがあれば半日で切れる」
『そう…弓のこじゃ無理だよね?』
「さすがに無理だな…」


バーナーがあったとしても半日かかるのか…
半日もあれば柵が切れる前に扉が破られてしまう。
地下は却下かぁ…


「ウォーカーだ!!」
「あああぁぁ!」


グレンの声に顔を上げると、鉄格子の向こう側に
ネズミを食べているウォーカーがいた。
ウォーカーは灯に反応し、手を伸ばしてくる。


「戻ろう、行くぞ…」
『待って。殺しておいた方がいい』
「弾の無駄だ」
『ナイフがある。私がやる』


腰に付けたホルスターからナイフを出し
私達を食べようと必死に手を伸ばすウォーカーに
ナイフを刺した。濡れて腐っているからか
すんなりと頭に刺さったナイフを抜くと
勢い良く振って、血を飛ばした。


『おーけー。行こう』


思いっきりしかめっ面をしているモラレスを
今度は先頭にして、歩いて来た道を進んだ。
倒せるチャンスがあるなら倒した方がいい。
このウォーカーが後にグレンを襲わないという
保証はないんだから。リスクは減らしておきたい。
それにウォーカーがこの世界から全部消えたなら
人類ならやり直すことが出来るって信じているの。
だから私は戦わなきゃって思い始めた。


3人で階段を上がるとジャッキーがいた。


「地下はどうだったの?」
「鉄格子があって無理だ」
「とにかく一度合流しよう」


グレン達とリックの元へ向かう。
なんだか扉前のウォーカーが増えた気がする…
気のせいであって欲しい…!


「地下は?」
「無理だ、出られない」
「早く脱出方法を考えないと」
「…屋上に戻ろう。ここは危険だ」


希望を見出した地下がダメと分かり
屋上に戻る足取りも重く感じてしまう。
はぁ…また一から練り直しだ……


屋上に戻ると全員が1列に並んで下を見下ろす。
私はみんなと逆側を見下ろすが、対して変わりはない。
強いて言うなら…"人通り"が少ないくらいだろうか…
ため息をついてみんなの元に戻った。


「奴らを振り切れない」
「でも俺は逃げ切れた」
「馬を食ってたからな」
「気を散らさないとダメか…」
「よく気付いたな。戦争ドラマではー」
「あなたは黙ってて…!」


ジャッキーがメルルを睨みつける。
メルルは肩をすくめて見せた。


「音に引き寄せられるとか?」
「犬が呼ばれて来るのと同じだ」
「なるほど…他には?」
「声や姿を判別し、匂いも嗅ぎ分ける」
「……匂いも?」
「分かるだろ?」
『ウォーカーは腐敗臭が凄いもの』


リックは私の言葉に考える仕草をした。
そして衝撃の作戦を私達に伝えたのだ……





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