11

「おい、車はどこに止める気だ?」
「近くに来たら運転を代わってくれ」
「……めんどくせぇ。今すぐ代われ」


メルルは車を急に止めると運転席を降りた。
隣でグレンが鼻を押さえている。かわいそうに…


『大丈夫?グレン』
「あぁ、こんなの平気さ」


メルルが扉を開き、グレンを無理やり降ろすと
空いた私の隣にドカッと座る。
なんて自分勝手な奴なんだろう…


『……もう少し、足を閉じてくれない?』
「あ?どうしようが俺の自由だろ?」
『1番後ろは3人で座ってるから狭いの』
「うるせぇ!俺は誰の指図も受けねぇ!」
『指図じゃなくてお願いなんだってば…』
「だいたいここはガキが来る様な所じゃねぇぞ」
『ガキじゃないってば。それに戦える人が
 キャンプには少ないんだから仕方ないでしょ?』
「お前は戦えんのかよ。ガキのくせに」
『戦えなくはないけど…あまり期待はしないで』
「ふんっ、足手まといだらけだな」


メルルはそう言うと窓の外に視線を向けた。
結局、足は閉じてくれないまま…
本当に狭いんだけど……!

外を見るメルルを睨むけど、こちらをチラリとも見ない。
……何を考えているんだろう?弟のダリルの事だろうか…?


『ねぇ、昨日はダリルは戻ってきたの?』
「いや?鹿を追ってるんだ。戻って来る訳ねぇだろ」
『じゃあひと晩中、森の中に?』
「そういうことだな」
『……心配じゃないの…?』
「あいつは俺が鍛えてやったんだ。そうヤワな奴じゃねぇ」


" お前らと違ってな "
そう言って振り向いたメルルはどこか誇らしげだった。
口ではあんな風に言ってるけど、信頼してるんだ…
なーんだ。なんか心配して損しちゃったな。


『ふーん。そうなんだ』
「あ?信じてねぇな?いいか?
 ダリルは昔、森の中を1人で遭難したことがあったが…
 ケロッと帰って来て、サンドイッチを作って食ってやがった。
 そういう奴だ。あれくらいの森で死ぬなんて事はあり得ねぇ」
『信じてるよ。だって見るからに強そうだもん』
「俺が鍛えてやったからな。まっ、俺の足元にも及ばねぇが」


ダリルは自慢の弟って感じだ。
思わず笑う私にメルルは顔をしかめた


「なに笑ってやがる」
『ううん、なんでもない』


気まずそうに顔を背けて、また外を見たメルル。
その様子に私はジャッキーの方を向いてまた笑った
ジャッキーも苦笑いを私に返した。


「着いたぞ。ここに車を隠してアトランタに向かう」
「アジア野郎の運転だと日が暮れるかと思ったぜ!」
『まずはスーパー?』
「あぁ、中にはウォーカーがいるから全員で倒すんだ。
 その後にすぐ近くのショッピングセンターに行こう」
「スーパーでゲットした荷物はどうする?」
「量次第かな…多ければ一度、戻るし。少なければそのまま」
「さっさと行くぞ。ついてこい」


メルルはそう言うと銃を構えて進んだ。
彼はスーパーの場所を知っているのだろうか?
グレンと顔を見合わせてため息をつくと
メルルを追って、アトランタ内へと入って行った。



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