「エリー。今日はいい天気だな」
『モラレス、昨日寝てたでしょ?』
「……悪い、つい…」
『ダリルが代わりに見張ってくれてたよ。
 後で起きたら彼にお礼を言っておいたら?』
「あぁ、そうするよ。ありがとう」
『どういたしまして』


モラレスとの会話を終えると皆の輪に入る。
今日は天気がいいから川で魚釣りをしよう
たまにはお魚を食べるのもいい。
前にエイミーと魚釣りをした時は少し釣れて
みんなも喜んでくれたし…よし、そうしよう


朝ご飯を食べながらそう決めて、準備に取り掛かる


「エリー。今日は何するんだ?」
『魚釣りよ、グレン』
「誰かと一緒か?」
『今から誰かを誘おうとしていた所』
「じゃあ俺が一緒に行くよ」
『本当?』
「あぁ、行こう」
『うん!』


今すぐここで踊り出したい気分。
グレンと2人で魚釣りだ!

2人で川に向かい、ボートに乗り込んだ。
グレンが川の中央までボートを漕いでくれる

これって……まるでデートみたい…
グレンを見ると"どうかした?"と聞いてくる
"ううん、なんでもない"と返せば笑うグレン
あぁ、私いまとっても幸せです!!!


「こんなにかからないもん?」
『日によるけどね。前はもう少しかかったかも…
 でもその時にエイミーは根気が必要だって言ってた』
「こうもかからないんじゃ暇だな…」
『待ってればその内かかるよ』


グレンは頭に手を組んでボートにもたれかかる。
私はそんなグレンを見て笑い、竿を揺らした


ボートの揺れがゆらゆらと心地よい。
しかも今日はとても良い天気だ…
瞼が自然と重くなる。


「―レン?グレン?エリー!?」
「2人とも!平気なの!?」


誰かがグレンと私を呼ぶ声で目が覚めた。
ボートの上で2人とも眠っていたらしい…
起き上がると"呆れた"と笑うアンドレアと
心配そうな顔をしているTドッグがいた。


『ごめん、寝てた!』
「そこのバカも起こしたら昼食よ」
『分かった!すぐ行く!』


グレンを起こそうとすると竿がピクピクと
魚が引っ掛かっているのを知らせていた。


『グレン!魚がかかってるよ!』
「んあ!?」


変な声を出して起きたグレンは眠そうな顔で
竿を引っ張って、魚を釣り上げた。


「おぉ、釣れた……」
『一匹だけだけどね。さっきアンドレアと
 Tドッグがお昼ご飯だって呼びに来たよ』
「あぁ…もうそんな時間か…うっかりだよ」
『こんなに良い天気なのが悪いの』
「ははっ、そうかも」


グレンと一緒にみんなの元へ戻った。
釣った魚はグレンがローリに渡している
私は眠い目をこすりながらエイミーの隣に座った


「何してたの?」
『魚釣りをしてたんだけど、全然かからなくて…
 太陽はポカポカしてるしボートの揺れもあって
 気付いたら2人とも寝ちゃってた。さっきまで』
「ふふ、だめね。釣り人失格よ?」
『うん、そうかも』


エイミーと笑って昼食を食べた。
その後は今度はエイミーと2人で魚釣りをした。
父親と良く釣りをしていたというエイミーですら
今日はあまり釣れなかった…食料確保が難しい…

夕食時になり、今日1日姿を見なかったメルルと
ダリルがようやくキャンプに戻って来た。
デールとシェーンが2人に話しかける


「どこに行ってたんだ?」
「どこでもいいだろ?」
「狩りに行ってたのか?」
「……あぁ、そうだ」
「この辺りに詳しいのか?」
「俺達に知らない場所はない」


メルルの言葉にシェーンとデールは顔を見合わせた


「近くに食料を調達出来そうな場所は?」
「さぁね、自分で捜せ」
「教えてくれメルル」
「……森を南に5マイル進んだ所に家があるが…
 家は小さいうえに奴らの残飯をあさることになる。
 ウォーカーもいるだろうな。おすすめはしないね」


メルルの言う"ウォーカー"という単語。
初めて聞く言葉だ。


『ねぇ、その"ウォーカー"って?』
「奴らの事だ。死んで歩く化け物」
「"ウォーカー"、ね…」
「ウォーカーが確実にいると思うのか?」
「確実じゃねぇが、辿り着くまでにはいるだろうな」
「そうか……」


メルルの言葉に考え込むデール。


「もういいか?中に入るぜ」
「ああ、引きとめてすまなかった」


メルルとダリルはテントの中に入って行った。
この間、ダリルは一言も話さず黙っていた


「やはり食料を調達するにはアトランタに行くしかないな…」
「そんな…!子供達もいるのに無理よ!」
「全員では行かない。調達チームだけで行くんだ」
「誰が行くの?」
「……グレン、頼めるか?」
「俺!?」
「あぁ、街で俺を救ってくれたのも君だ。
 調達チームにぴったりだと思うんだが…」
「……分かったよ…」
『グレンが行くなら私も行く』
「もちろん俺もだ。一緒に行く」
「おーけー。後もう少し人数が必要だな」
『シェーンは来ないの?』
「あぁ、俺は一番弱い子供達を守らないと…」
『そっか、それもそうだね』
「……私も行くわ…」
「アンドレア!?」
「エイミー、あなたのためよ。必ず生きて戻るわ」


実の姉の安否を心配するエイミーが止めるが
アンドレアの決心は固かった。


「まずは明日、メルルの言っていた家に行って
 アトランタに行くデモを行ってからにしよう」
「メルルかダリルが助けてくれると心強いんだが…」
「いいわよ、向こうで問題を起こされたら困るもの」
「だが彼らは強い。きっと力になる」
「助けてくれるかは分からないけどね」
「……頼むだけ頼んでみよう」


デールがメルルとダリルのテントに近付く。
顔だけ中に入れ、しばらくすると戻って来た


「ダリルが付いてきてくれるそうだ」


正直、とても意外だった。
絶対どちらも付いて来ないと思ったし
来るとしたら両方、もしくはメルルだと思った。


『どうして付いてきてくれることになったの?』
「2人とも嫌がったが、メルルが兄貴の権限を使った」
『あー…なるほどね……』


俺は絶対行きたくないからお前が行け、と言ったのね。


「明日は念の為、俺も付き添おう。
 戦うアドバイスが出来るかもしれない」
「平気か?」
「あぁ、他のみんなは明日、俺達がいない間
 キャンピングカーの中にこもっているんだ。
 見張りはデールとモラレスの2人で行ってくれ」
「エドはどうする?キャンピングカーの中に入れるのか?」
「入れてやれ。さすがにみんながいる前では大丈夫だろう」
「彼が拒否したら入れなくてもいいわ」
「あぁ、そうしよう」
「詳しいことは明日にしよう。今日はみんな早く寝て
 明日に備えるんだ。忙しい日になるかもしれない…」


シェーンの言葉にみんな寝所に向かう。
なんだか明日の事が不安でなかなか寝付けなかった。





[ 199/216 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]