12

ノアの故郷を出てからもう随分、時間が過ぎた。
あれから家も食料も水も見つからない。
この車のガソリンも尽きてしまいそうだ…
DCまで、まだまだ距離があるのに大丈夫だろうか。

そんな時、リックから無線が入った。


「ガソリンスタンドを見つけた。
 何か物資がないか捜してくる」
『了解。こちらのガソリンは尽きそうよ』
「あぁ…ガソリンがあればいいが…」


リック達が探索に行く間、ダリルは森の中に。
リスかウサギでも見つかればいいんだけど…


結局、リック達もダリルも空振りに終わった。
動物が全くいないだなんて……

またしばらく走り、リックから無線が入った。


「今日はここまでにしよう。車内で寝てくれ」
「見張りは誰が?」
「こちらはエイブラハムが」
「分かった」


リックとの無線を切るとダリルは車を降りた
私も急いでダリルの後を追う。


「後ろのメンバーに伝えてくれ。俺は森の中に入ってくる」
『私も一緒に行く』
「分かった」


扉を開けて後ろのメンバーにリックの伝言を伝える。
私とダリルが森に入る間、見張りはグレンとマギーが
運転席にはキャロルが座った。


「俺の側を離れるな…」
『うん、分かった』


森の中を進むと小さなリスを一匹見つけた


『ダリル……』
「あぁ、任せろ……」


クロスボウでリスを仕留め、慣れた手つきで
血抜きを行うと、また森の中を進んだ。
結局見つけたのは小さなリス一匹だけ……


「これだけか……」
『ダリルがリスを狩り尽くしたんじゃない?』
「バカ言え、そんなに捕ってねぇよ」
『じゃあウォーカーが食べちゃった?』
「トロいあいつらには無理だ」
『そうだよね…』


ダリルと車に戻る。
荷台の食料を入れている所にリスも入れた。
もう食料が底を尽きそうだ……



「このままだとまずいな」
「森にはリスしかいなかった?」
「あぁ、何もなかった」
「そっか…」
「エリーは中にいろ」
『ダリルは?』
「グレンとマギーの所に行く」
『今日は眠ったら?』
「どちらにしろ後だ」
『分かった』


ダリルの言葉に落胆したタラの隣に座る。
正面に座るノアの表情も暗い。


『大丈夫だよ。川を見つけられたら魚も水も
 手に入るし、物資だってきっと見つかる。』
「そうだね…そう思うよ…」
「ジュディスのミルクが見つかるといいんだけど…」
『そうね…一番の問題はそこね…』


私達は何でも我慢すれば食べられるけど
ジュディスはそうはいかない…
食べられる物が決まっているんだもの。
今はまだミルクが残っているからいいけど…
無くなってしまったらどうすればいいんだろう。


なんだか今後の事を考えると頭が痛くなってきた…
もう寝ようかと考えた時、扉が開いた。
マギーとグレンだ。


『…ダリルは?見張り?』
「あぁ、あっちのメンバーと交代して行うと」
「ちゃんと寝るから安心しろって言ってたわ」
『ありがとう』
「エリー、顔色が悪いけど大丈夫?」
『ほんと?』
「あぁ。ほら、額を出して」


グレンに言われて前髪をあげる。
ひやっとしたグレンの手が気持ちいい


「うん…少し熱があるみたい」
「暖かくして寝なきゃ。水分は取った?」
『水分はいいから寝る…知恵熱かも』
「なに?考えごとでもしてた?」
『うん…今後の事を考えてた…』
「そっか……」
『ねぇ、今夜はダリルには黙ってて』
「明日までに治ってなかったらどうせバレる」
『それでも。明日までには治るかも…』
「でも―」
「分かったわ。黙っててあげましょう」
『ありがとう』


マギーにお礼を言うと眠りについた。





『ん……』
「起きたか?」
『だりる…?』
「あぁ、俺だ」


目を開けると、私の手を握っているダリルがいた。
振動を感じるからもう車は走り出してるみたい
どれくらい眠っていたんだろう…?


『どれくらい寝てた?』
「1日と半分だ。体調はどうだ?」
『うん、もういいみたい』


ダリルは私の額に手を当てると頷いた
そのままダリルの手は私の頬に下りた


「熱は下がったみたいだな」
『ごめんね。ありがとう』
「あぁ、エリーが無事ならそれでいい」
『病気なんかで、死ぬ訳ないよ。
 だってインフルにもかからなかったんだもの』
「そうだな」


ダリルの顔を見ると、疲れている様な顔だ。
私が寝ている間もずっと起きていたのかな…


『ダリル。少し寝て?ダリルが倒れちゃう…』
「あぁ…そうだな…」
『一緒に寝よう。ダリルがいたら暖かいし』
「分かった」
『腕枕してくれる?』
「いいぜ」


私はダリルが眠りにおちるのを確認してから目を閉じた。





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