10

サシャがタイリースの名前を呼んでいる…

デール、ハーシェル、タイリース…
"善人"と言われる人達がどんどん死んでいく…
彼らの様な人達こそ生き残らなくてはならないのに。

ダリルが隣で小さく"くそっ"と言うと森に入って行く
私は近くにいるお兄ちゃんに声をかけた


『お兄ちゃん』
「なんだ?」
『カールを頼める?』
「あぁ、分かった」
『私はダリルを追いかけてくる』
「…気を付けてくれよ…?」
『うん。心配しないで。
 カール、みんなの側を離れないで』
「うん。分かった」


私は急いでダリルを追いかけた。
森の中に入り、足跡を追って行く


大きな木にもたれかかっているダリルを見つけた。
左側からウォーカーがダリルに近付いているが、
ダリルは動く気配を見せない。
私はダリルの目の前を通り過ぎ、ウォーカーの頭に
ナイフを突き刺した。

ダリルのななめ前にしゃがみ、ダリルの手を握る


『ダリル』


優しく名前を呼ぶが、下を向いたダリルは反応しない。
しばらくダリルを見つめているとようやく顔を上げた
青い瞳がゆらゆらと揺れている。
私は急に言葉が出なくなってしまった…


『一緒にいてもいい?』
「……あぁ……側にいてくれ…」
『うん』


ダリルの隣に腰掛け、手を握った。
しばらくそうして座っていたが、
ウォーカーがゾロゾロとこちらに向かっているのが見えた。
カールと一緒にサシャの名前を叫びながら走り回ったから
その声を聞きつけたウォーカーが来てしまったのかも…

みんなの元へたどり着くまでに殺さないと…
私が立ち上がってもダリルは手を離してくれなかった


『ダリル?』
「………」
『平気よ。大丈夫。あれくらい倒せる』
「……俺も行く」
『いい、私だけで―』
「これ以上、大切な人を奪われたくねぇ…」


ダリルは立ちあがり、武器を構えた。


「俺は右、エリーは左だ」
『えぇ、分かったわ』


ダリルとウォーカーを倒して行く。
最後の一匹を倒した時、お兄ちゃんが迎えに来た


「……平気か?」
『えぇ…どうかした?』
「タイリースの墓が出来た。お別れを言おう」
『……分かった』


ナイフをホルスターにしまい、ダリルの方を向く。
ダリルは黙ってみんなの方へと歩き出した。
私とお兄ちゃんも後に続く。


<彼は本当に大丈夫か?>
<ううん…立ち直るには時間がかかるわ…>
<そうか……>
<見守るしかない>
<そうだな……>


ゲイブリエルが聖書を読んでくれる中
私達はタイリースにお別れの言葉をかけた。




「これからどうする?」
「地図はあるか?」
「ボロボロので良ければ…」


リックを中心に今後、どうするかを話し合う。
私は土地感覚がないのでいつも話し合いには参加しない。
ダリルも今は今後の事なんて考えられない様だ
どこから持ってきたのか、花を置き
ボーッとお墓を見つめている。


「エリー、ダリルは大丈夫?」
『いいえ…大丈夫じゃないわ、キャロル』
「そう……そうよね…」
『キャロルは?もう体は大丈夫?』
「えぇ。なんともないわ」
『良かった……』
「あなたは?平気?」
『えぇ……なんとかね…』


キャロルと2人でダリルを見つめる。
するとリックがダリルを呼び、ダリルはリックの元へ。
どうやら今後の行き先が見つかった様だ。


タイリースとノアの故郷に別れを告げ
私達はエイブラハム達が向かっていた
ワシントンDCに向かうこととなった。
ユージーンが嘘をついていた事は聞いていたけど、
賢い彼が希望を見出したDCに賭けて見ることとなったのだ。


私達の長い旅が、また始まる。






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