ドンドン!


「エリー!Tドッグ!起きろ!」
「ん…?なんだ…?」
「エリー!起きろって!」
『……なにぃ…?』
「車が近づいてくる」
「どこだ?」
「あそこ。キャンピングカーだ」
「……運転席は老人らしい」
「そうなんだ。話してみるか…?」
「そうだな。何か知ってるかも…」
「決まりだ。エリーは隠れてて」
『うん……』


寝起きにグレンが早口で話しかけてくる…
あまり頭には入ってなかったけど、グレンの言う通り
車の中で小さくなるとグレンが上からブランケットをかけた
これできっと外からは私の姿は見えないはず…
念の為ホルスターから銃を出して胸元に構えた


「やぁ、いい天気だね」
「……あぁ。そうだな」


グレンの発言に車から降りてきた老人は
怪しむ様な声色で返事をした。


「実は僕達、困ってるんだ。状況を知ってる?」
「いや…俺達もよくは知らない。
 昨日の夜、命からがら逃げてきた所だ」
「人食いを見た?」
「あぁ。恐ろしい光景だったよ…」
「アトランタはどうなったんだ?」
「崩壊するのも時間の問題だろう」
「やっぱり街には戻れないか……」
「どうする?山奥に進むか?」
「ここもいつまでも安全とは言えんだろう」
「じいさんの言うとおりだ」
「……君達は2人だけか?」
「……いや、もう1人いるけど寝てるよ」
「そうか。こっちも車の中に仲間がいる」
「仲間?前からの友達か?」
「いいや。見知らぬ人達だ。一緒に逃げてきた」
「とにかく今後、どうするか決めなきゃ…」
「俺達はもう少し上でキャンプする予定だ。
 良かったら君達も一緒に来るか?」


車の外の内容をじっと聞く。
どうやらこの老人は善人らしい…
ほっと息をついて銃をホルスターにしまった。


「少しだけ相談させてくれる?」
「あぁ。ゆっくりするといい」


車のドアが開く音がしてグレンが私に声をかける


「エリー、話は聞いてた?」
『聞いてたよ』
「どう思う?」
『彼らの仲間次第だと思う…
 怖い人がいるなら一緒には暮らせない』
「そうだな…Tドッグは?」
「俺も同意見だ」
「よし。聞いてみよう」


再びグレンは車の外に出た。
私も一緒に降りて老人から遠い場所で車にもたれた


「やぁ、君が最後の1人?」
『えぇ、そうよ。よろしくね』
「あぁ、よろしく」
「一緒に行きたい気持ちはやまやまなんだけど
 あー……お名前は?」
「デールだ」
「デール。俺はグレン。Tドッグとエリーだ。
 君達の仲間に合わせてくれる?善人か確かめたい」
「あぁ。聞いてくるよ」


デールは中に入って行った。
すると中から女の子が2人、女性が1人
そしてとても細い男性が1人出てきた。


「紹介するよ。ジムにジャッキー。
 アンドレア、エイミー。2人は姉妹だ」
「よろしく。俺はグレン。Tドッグとエリーだ」
『よろしく』
「出会ったばかりの他人同士だが、8人が力を合わせれば
 こんな危機も乗り越えられると思う。君達はどう思う?」
「俺は良い案だと思う。支え合うべきだ」
「私は信用できない…エイミーに何かあったら…」
「俺達は何もしない!」


デールの意見にすぐ賛成したジムとは対照的に
アンドレアはエイミーを抱きしめTドッグを見る。
Tドッグはガタイが良いだけに警戒されやすそうだ…


『Tドッグはこの非常事態にお年寄りの家を回って
 安全を確保してあげるくらいのお人好しだから安心して』
「俺達が襲われていないのが何よりの証拠だ」
「元から知り合いじゃないの?」
「あぁ。エリーは職場の同僚だけどTドッグは違う。
 君達と同じ、街から命からがら逃げてきた仲間だよ」


アンドレアはより一層、顔をしかめた。
知り合いじゃないと言う発言で不安になったらしい


「体も大きいし、力も強そうだ。
 Tドッグが味方になれば心強いだろ?ん?」


デールがアンドレアに言い聞かせる。
彼女は少し考えた後、渋々頷いた。


「よし、ジャッキーもいいな?」
「ええ。いいわよ」
「そちらは?Tドッグとエリーは?」
「俺はグレンに従う」
『私も』
「じゃあ決定だ」


グレンがそう言うとデールは微笑み頷いた。
彼らが先頭に車を走らせ、キャンプする予定地まで
案内してくれることとなった。

3人で車に乗り込み、キャンピングカーを追った。


「仲間が出来て良かった。心強い」
『そうね。でも女性が多かったから少し不安』
「男手がもう少し欲しい?」
『えぇ、何かあった時に困るわ』
「そうだな……」
「でもエリーは女性が増えて安心するかと…」
『もちろんそれはあるけど…戦える女性だと大歓迎ね』
「ははっ、何言ってるんだ」


仲間が増えて車内の空気も緩やかなものとなった。
するとキャンピングカーが止まりデールが降りてきた。


「ここ?」
「あぁ、そうだ。ここにテントを張ろう。
 向こう側にもう一台、車が止まっている様なんだが…
 どうも家族連れの様だ。声をかけて来てもいいか?」
『えぇ、良いと思うわ。あなた1人で行くの?』
「いや。ジムと行こう」
「俺も付いて行くか?」
「そうしてくれると心強いが…」
「じゃあ行こう。行ってくるよ」
「気を付けて」
「あぁ」


Tドッグはデールについて行ってしまった。

私達がテントを張っていると家族連れの車と共に帰ってきた。
モラレスと妻のミランダ、息子のルイスと娘のイライザ
新たに4人が仲間に加わった。





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