朝日が眩しい…
一睡もしていない私とお兄ちゃんにはキツい日差しだ…


「あー…おはよう」
「おはよう、タラ」
「朝食の準備が出来たけど…どう?」
「そうだな…エリーどうする?」
『…いらない』
「だそうだ。悪いね、タラ」
「ううん、いいの。じゃあ…戻るね」


お兄ちゃんはタラが戻るのを見送り、私の方を向いた。


〈もう明るくなった。お兄ちゃんは食べてきていいのに〉
〈1人にはしない。エリー…ご飯は食べておかないと…〉
〈今はいい。ダリル達が戻ったら食べるから〉
〈…困った妹だな〉


そう言うとお兄ちゃんは頭をくしゃくしゃと撫でた
お兄ちゃんの方を向くと、優しい笑顔が見えた。

しばらくするとグレンが出てきた。


「ハリー。朝食を食べて少し眠って」
「いや、でも…」
『いいから行って、お兄ちゃん』
「俺がここにいる」
「……分かった。エリー、後でな」


お兄ちゃんが中に入り、グレンが隣に座る。


「またご飯食べてないんだって?」
『食欲なんてわかないよ…』
「グリーン農場でも一回あったな」
『そうだね……あの時もグレンは来てくれた…』
「可愛い妹がこれ以上痩せたら困るから」
『……なにそれ…』


私が少し笑うとグレンも安心した様に笑った


「ダリル達なら大丈夫だ」
『うん……』
「キャロルは1人で俺達、全員を救ったし、
 ダリルは矢が刺さっても、撃たれても死ななかった。
 ダリルはメルルが最強だって言ったけど、
 本当は俺、ダリルの方が最強だと思うよ」
『うん…私もそう思うよ。仲間を置いて逃げる2人じゃない…』
「あぁ。俺達が1番よく分かってるだろ?」
『うん……』


グレンは私の手をしっかりと握ってくれる。
私もグレンの手を握り返した。


『ねぇ…』
「ん?」


グレンの方を向けばいつもの優しい笑顔。
私はこの笑顔に何度救われてきただろう…?
正午までに2人が戻らなければ、この笑顔も失う…


『初めてダリルと会った時、仲良くできると思った?』
「思うわけない!あのメルルといたんだ。第一印象は最悪だ」
『あー…メルルね…確かに最悪かも』
「特にダリルはあまり喋らなかったんだ。
 メルルともそんなにお喋りしてる感じじゃなかった。
 ……ダリルはこの旅で変わったよ。もちろん良い方向に」
『うん…もう立派な家族の一員だもんね』
「あぁ。あの頃からは想像もつかない」


それからはグレンと思い出話に花を咲かせる。
アトランタで初めて出会った時のこと、
CDCのこと、グリーン農場のこと、厳しかった冬、
刑務所から今までのこと……
ずっと一緒にいるグレンとの思い出話は尽きる事がなかった。


「エリー、グレン」
「マギー。どうかした?」
「……昼食の時間よ」


これがどういう意味を持つか…
マギーも暗い顔をしている。


「そっか……エリー、一緒に食べてくれるだろ?」
『……もちろん』


グレンとマギーが中に入るのに続く。
昼食を食べた後は、ボブにお別れを告げて
DCへ向かう準備を始めた。

とうとう出発の正午が来てしまった……
みんなで外へ出て彼らを見送る。


「DCへのルートだ。この通りに行けなくても目的地は1つだ。
 ユージーンが必ず元の世界に戻す。見届けて欲しい…あんたに」
「みんなは必ず来る」
「行くよ」
「あぁ、必ず行くよ」
「(頷く)出発だ」
『マギー……』
「エリー…」


マギーとハグを交わす。
もう離れることなんてないと思っていたのに…


「ダリル達が戻ったら絶対に追いかけて来て」
『うん…必ず……』
「約束よ…」
『えぇ、約束する……』


マギーと離れ、グレンともハグを交わす


「エリー……」
『グレン……ほんとは……
 マギーにもグレンにも行って欲しくない…』
「俺だって…離れたくないよ…」
『うん……』
「先に行って待ってる…必ずまた会おう…」
『絶対に生きてね…』
「あぁ…エリーも…」


グレンとマギーはバスに乗り込み、窓から私達を見つめる。
私は泣きそうになるのをグッと堪えて2人を見送った…


バスが走り出すと私も道路まで走って
バスが見えなくなるまで、ずっと立ち続けた。





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