目が覚めると、目の前でダリルが寝ていた。
昨晩はキャロルと見張りをしていたはずのダリル
私をしっかり抱きしめ眠っている。
その姿がなんとも愛しく思えて笑った。


「起きたのか?」
『おはよう、リック』
「あぁ。おはよう」
『見張りをしてくれてるの?ありがとう』
「ハリーとな。向こうにいる」
『そっか』
「まだ出発まで早い。もう少し寝てるといい」
『うん、ありがとう』


抱きしめられていて起き上がれないから
顔だけ動かしてリックと会話をした。
かけているタオルをかけ直してくれた後、
リックはまた見張りのために離れて行った。
私はお礼を言って離れて行くのを見送ると
ダリルにくっついてまた眠りに落ちた。


「エリー」


ダリルの優しい声で目が覚める。
目を開ける前に瞼にキスが降って来た。
可愛い愛情表現に笑って起き上がる


『ふふ。どうしたの?』
「足は平気か?」
『うん、なんともないよ』
「(頷く)今日は狩りをしながら進む。
 森の中に入るからグレン達の側を離れるな」
『私も一緒に行く』
「今日はみんなといろ。何かあったら俺を呼べ」
『分かった』


そう言うとダリルはリックと話があると言って
リックの方へ行ってしまった。
もう少し一緒にいたかったのは私だけの秘密だ


「おはよう、エリー」
『おはよう、タラ。早いわね』
「なんか目が覚めちゃって…」
『すぐそこの川に行かない?』
「いいわ、行きましょう」


タラと顔を洗いに川に出かける。
ついでにペットボトルに水を入れた


「あの……私ずっと謝りたい事が…」
『なに?どうしたの?』
「刑務所を襲いに行った事…本当にごめんなさい」
『……私の兄もいたもの。騙されてたなら仕方ないよ』
「でもそのせいであなたは撃たれたし…」
『防弾チョッキ着てたから平気よ
 それに撃ったのは総督でしょ?あなたじゃない』
「えぇ。そうだけど…」
『もういいの。グレンを助けてくれてありがとう』
「…うん…」


タラはぎこちなく笑った。
私は笑ってタラに川の水を少しかけた


「つめたっ!」
『んふふ』
「やったわね…?」


タラがいたずらっぽく笑うと両手で水をすくう


『ちょっ!ちょっとそれは多過ぎ!』
「問答無用!」
『だめだって!つっめたっ!!』
「あははははは!」
『タラ〜!!』


そのまま水のかけ合いが始まる。
朝も早く気温が上がりきってないと言うのに
2人でびしょびしょになるまで遊んだ。
終着駅から逃げてきたばかりとは思えない能天気さだ


「お前達…」
「何してる……」
「『あ………』」


振り返ると呆れ果てた顔をしたリック
ちょっと顔を赤らめて下を向いているグレン
グレンに"あっち向いてろ"と威嚇するダリル
どうやら心配で捜しに来てみたはいいものの
水遊びをしているとは思わなかったらしい…


「自分達の年齢を考えてくれ…」
「『ごめんなさい…』」
「とにかく無事でよかった。
 早く着替えないと風邪をひくな…」


リックに言われて自分達の服を見ると
びしょびしょで体に張り付いているし
ちょっと下着が透けている…
グレンが顔を赤らめた理由も
ダリルが怒っている理由も把握出来た。


「とりあえず戻って着替えを…」
「だめだ。俺が服を持ってくる」


"他の奴らに見せるものか"と
目で人が殺せそうなくらいの睨みを利かすダリル
ここにいる全員が空気を読んだ。


「タラの服はマギーに何か借りてくるよ!」
「……おーけー。2人とも武器は?」
『ナイフとハンドガンがあるから平気』
「私も」
「一度戻ってダリルにまた来させる。
 はしゃいだ声でウォーカーが寄ってきてないとも
 限らないから、警戒しとくんだぞ?いいな?」
「『はい、リック』」
「行こう」


リックが歩き出すとグレンも慌てて後を追う。
ダリルはくるっとこちらにやって来ると
すっっっごく怒った顔でこう言った。


「またグレンに見られやがって…後でお仕置きだな」
『え………?』


そう言うとダリルも去って行った。
いや…またって…前はダリルが脱がすから……
っていうか…お仕置きってなんだ…!?


「あー……ごめん?」
『いいの……』


タラの同情の目線を受け取り項垂れる。
すぐにダリルが服とタオルを持ってきた


「着替えたら朝食を食べてすぐ出発だ」
『ありがとう、ダリル』
「…ありがとう……」


服とタオルをそれぞれ受け取ると
ダリルはすぐ戻って行った。


『ねぇ…』
「なに?」
『お仕置きってなんだと思う?』
「あー……放置プレイとか?」
『今日ずっと無視されるのは辛いなぁ…』
「そうじゃなくて…まぁ、うん…そうだね…」


急いで着替えてみんなの元に戻る。
ダリルは既に辺りの見回りをしているらしい


「サイズは大丈夫そうね」
「マギー、ありがとう」
「いいのよ。2人して水遊びで
 服をぬらすなんて…子供じゃないんだから」


マギーはくすくすと笑っている。
グレンを見ると顔を赤らめて視線を外された
思春期の中学生か…!


『ダリル、怒ってた?』
「グレンにさっきの記憶を今すぐ消せ!
 って言ってたみたいよ?本当おかしい…」
「無茶苦茶だよ…」
『ごめん、グレン』
「ほんともっと危機感を持ってくれる!?」


笑いをこらえ切れていないマギーと
対照的な表情をしているグレン。
グレンは私に近寄って小声で話した。


「ただでさえ、良く知らない男がいるんだ。
 ダリルだってエリーのことが心配なんだよ」
『エイブラハムとユージーンのこと?』
「(頷く)ユージーンはエイブラハムとロジータの
 ……その…夜を覗いているらしいし…」
『……ほんと?』
「あぁ、いつもらしい」
『……天才科学者はとんだ変態ね』
「だから気を付けてくれ」
『分かった』





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