※兄妹2人の会話は日本語ですが、
2人しかいないため、「」と『』表記にします。



〜エリー Side〜


火の音が聞こえる。
胸には激しい痛みが……
目を開けると満点の星空が広がる。

あれ?なんで私、外にいるんだっけ?
胸も痛い……


そうだ…総督に撃たれたんだ…
防弾チョッキを着ていたから助かった…
でも銃の威力で気を失って…それで…


みんなはどうなったんだろう…
ダリルは…無事なんだろうか…


「エリー!?」
『お兄ちゃん…?』
「お前……生きてたんだな…」
『うん…お兄ちゃんも…』


お兄ちゃんは涙を浮かべていた。
私もお兄ちゃんに起こしてもらい、
お兄ちゃんに抱きついて声をあげて泣いた。


『…っ。ねぇ、どうなったの?』
「なにが?」
『分かってるでしょ?あの後、どうなったの?』


お兄ちゃんは私が気を失った後のことを話してくれた。
どうして刑務所に来たのかも全部。
結局は総督がみんなを唆したのだ…
自分の復讐の為に彼らを利用した
そのおかげで彼らのほとんどが死んだらしい。

刑務所の皆は無事だろうか……


「混乱になって、もう俺も死のうと思った。
 エリーの側で一緒に死のうと…
 そう思ってエリーに倒れ掛かって泣いていたら
 息をしている事に気が付いた。心音もした。
 それで急いで刑務所から逃げ出したんだ。
 たぶん誰も残ってなかったと思う……」
『そっか……お兄ちゃんは戦わなかったの?』
「あぁ。エリーが手紙で話してただろ?
 ホームステイの子と射撃訓練をしてると…
 エリーは知らないだろうが、有名なんだ。
 あそこの射撃場は簡単に入られる所じゃない。」
『でもスナイパー部門で最優秀賞を取れたよ』
「俺も驚いたよ。才能があったとしか言えない。
 それでエリーを見た時、気付いたんだ。奴の嘘に」


お兄ちゃんは本当に賢い人だ。
頭も切れるし、知識も豊富。
優しすぎるのがたまに傷だけどね


「エリー、痛いのは胸だけか?」
『体中が痛いよ…』
「……足をひねってるかも
 かなり腫れてた。少しましになったけど…」
『ほんとだ…腫れてる…』


お兄ちゃんに言われて足を見ると腫れあがっていた


『痛いところが多過ぎて気付かなかったよ…』
「撃たれて倒れた時にひねったらしい」
『当分は走れないね…』
「あぁ。食欲はあるか?」
『うん、少しだけ…』


お兄ちゃんに食料を分けてもらう。
体調が悪くてあまり食べることは出来なかった。


『もういい、ごめんね』
「熱が出てる…少し眠るんだ」
『うん、ありがとう…』


お兄ちゃんが頭を撫でてくれる。
安心してすぐに眠りについた



次の日、目を覚ますと布切れがかけられていて
何か振動を感じる。その振動すら私の体にはキツい


『お兄ちゃん…?』
「起きたか?」


布切れが外されると眩しい光が入って来る。
思わず目を細めて手をかざした。


「リアカーに乗せて移動してる。
 荷物もあるからその方が楽なんだ」
『それはいいんだけど…どこに向かってるの?』
「"終着駅"と言う所に向かってるんだ」
『……"終着駅"?』
「あぁ。生者が集まる聖域らしい。
 まずはそこに行って医者がいないか捜そう」
『良い人達ばかりとは限らないよ…?』
「わざわざ看板を残すくらいのお人好しだぞ?
 きっとエリーのことも助けてくれる」
『もう悪い人に襲われた後かも…』
「行って確かめてみればいい。
 さぁ、もう少し進もう。エリーは寝てろ…」
『うん、分かった…』


私の全身に布切れをかけると歩きだす。
お兄ちゃんに言われて眠りにつくが
不安で全然眠る事が出来なかった…
目の前にあるクロスボウを抱きしめ静かに泣いた。


「エリー」
『お兄ちゃん…?』


気が付くと私は寝ていた様だ…


「家を見つけた。食料がないか捜してくる
 少しの間、自分の身は自分で守れるか?」
『うん、大丈夫だよ』
「よし。行ってくる」
『気を付けてね』
「あぁ」


銃を持ってお兄ちゃんは家の中へ
私もクロスボウを構えて辺りを見回す。
するとリスが通った。
リスに向かってクロスボウの矢を飛ばす。
やった!命中した!

しばらくしてお兄ちゃんが戻って来た。


「水と少しだけ食料が…
 痛み止めがあったけど飲むか?」
『うん、ありがとう。私も見せたい物が』
「なんだ?」
『あそこの木を見て』
「……リスか?」
『これで仕留めたの』
「やるな……昼食はリスにしよう」


お兄ちゃんが頭を撫でてくれる。
リスと矢を取って来ると矢を返してくれた。


「昼食を作るから見張っておいてくれ」
『おーけー』


痛み止めを飲むとクロスボウに矢をセットして
辺りを見回した。特に問題はなさそうだ…


「出来た。食べよう」
『いただきます』
「うん、いける。調子はどうだ?」
『だいぶ良くなったよ。
 痛み止めが効けば熱も下がるはず』
「良かった。食べたらもう少し進もう。
 少し先で安全な所を見つけたらそこに泊まろう」
『うん、そうしよう』


昼食を食べ終わるとお兄ちゃんが
ここにいた痕跡を消した。
でも誰か仲間が通るかもしれない…


「クロスボウの矢の跡はどうしようか…」
『お兄ちゃん』
「なんだ?エリー」
『仲間がここを通るかもしれないから
 クロスボウの矢の痕跡は残しておいて』
「……いいのか?」
『うん。それくらいなら大丈夫だよ』
「よし。じゃあ行こう」


お兄ちゃんに連れられてその場を後にした。







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