次の日の朝早く、ミショーンが部屋を訪ねてきた。
私もダリルもまだ寝ていて、頭は半分しか起きてない…


『どうしたの?ミショーン…』
「メーコンに行く。その前に挨拶しておこうと思って」
「こんな時間からか?」
「メーコンまでは遠いから早い方がいい。」
「……そうか」
『メーコンに行ったらすぐ戻って来る?』
「いや…ついでに物資を探しながら戻るよ。
 少し遠回りして戻るかもしれないから遅くなる」
『じゃあしばらくお別れだね…気を付けて…』
「エリーも…」


ミショーンとハグを交わす。
私とのハグの後、ダリルがしっかりと頷いたのを見て
ミショーンは出て行った。


『……起きよう。朝食食べるでしょ?』
「あぁ……」
『もう少し寝る?』
「いや、いい。起きよう」


ダリルは起き上がると着替えを始めた。
背中にあるたくさんの傷…
彼はこの傷を私の前だけでは隠さない。

私も着替えよう。
そう思ったその時、銃声が響き渡った。


「行くぞ!」


ダリルとクロスボウを持ち外へ出る。
D棟の方だ。リックが走っているのが見える。


「リック!何があった!?」
「分からない!
 急に銃声が聞こえた!とにかく急ごう!!」


3人でD棟に入ると中には逃げ惑う人達とウォーカーが。


『どこから入ったの!?』
「一階から急げ!」


他の皆もやって来た。
リック、キャロルはみんなの誘導
私、ダリル、グレン、サシャはウォーカーを。
タイリースはカレンの側にいた。


「下は一掃したな?」
「えぇ、大丈夫」
「エリー、上だ」
『行きましょう』


ダリルと上にあがる。


「ああぁぁ!」
『グレン!』
「かがめ!」


ウォーカーら襲われるグレンをダリルが助ける。


「助かった……」
『平気!?』
「あぁ、なんともない」
『良かった…』
「パトリックだ……内部の者達だ…」
「噛まれてないか見よう」
「あぁ…2人は2階の監房を全て調べてくれ。
 グレンはドクターとハーシェルを呼んできてくれ」
「分かった」
「エリーは手前からだ。俺が奥から」
『了解』


2階の監房も全て調べたが、他の犠牲者はいなかった。
グレンが2人を連れて来てドクターがパトリックを診察する


「噛まれてないし、傷も無い。病気か?」
「あぁ、病死だ。胸膜炎で呼吸困難に…
 自分の血で窒息した。顔が血だらけだ…」
「外のウォーカーにも同じ症状の者がいた」
「パトリックも同じだ。肺動脈圧が上昇。
 ソーダ缶を振って開けた時と同じだ
 目や耳、鼻と口から血が吹き出るんだ」
「ウォーカーから感染した?」
「いや、関係ない。肺炎球菌かインフルエンザか」


ウォーカーの危機から守られていた私達に
突然訪れた危機はインフルエンザだった。
全員に感染の可能性がある…
薬も足りていない今、集団感染なんてしたら…
それこそ私達は終わりだ…


「委員会を開こう……」
『分かった…』
「カール達に話してくる…」


リックは外に居るメンバーに話に行った。
私達はそのまま会議室へ向かう


「元気だったパトリックがひと晩で死ぬなんて…」
「感染者を隔離しないと…」
「D棟の全員に感染の可能性がある」
『私達もね』
「あぁ、そうだ」
「この病原菌は死を招く危険があり、感染経路は不明。
 症状が出ている者は他にいるか?」
「様子を伺ってる場合じゃない。病死したら脅威に」
「D棟の者達を移動させなくては…」
『もうD棟は使えないの?』
「除菌するのも危険だ。近寄らない方がいい」
「……A棟は?」
「死刑囚監房?居心地悪いよ」
「汚染されてはいない」
「ドクターは?」
「協力を頼もう……」


キャロルが席を立つのが会議終了の合図となった
みんなインフルエンザへの不安を抱えたまま外へ

ちょうど咳をしているカレンとタイリースが
私達の前を通り過ぎようとしていた。


「大丈夫か?」
「えぇ、平気よ」
「…本当に?」


キャロルが会話に割って入る。


「俺の部屋で休ませる」
「それはやめといた方がいい」
「…どういうこと?」
「パトリックの死因はインフルエンザらしい…」
「ジュディスにうつっては困る。
 感染の恐れがある者は近寄らせない」
『私達を含め、父親のリックもね』
「……風邪で死んだ?」
「彼女は平気だ。死因が分かったなら対処できる」
「対策を検討中だ。その間、離れていて欲しい。
 ドクターに診させて必要な処置をする」
「……デイビットも咳をしてたわ…」
「連れてくる…!空いてる房へ」
「お願い…」
「さぁ、行きましょう」


サシャがタイリースとカレンを連れて行く。
ハーシェルはため息をついて私達を見た。


「もう一度話し合おう」
「死体を埋めた後でな」
「グローブとマスクを」
「……あぁ」


ハーシェルとダリルが歩き出す。
キャロルの前に来るとダリルは立ち止った


「大丈夫か?」
「リジーとミカがパトリックの側にいた」
「みんなそうだ。カレン達は回復するまで隔離する」
「あなたは大丈夫?」
「あぁ……たぶん…」


ダリルが行ってしまったのを見て
キャロルは私に話しかけた。


「エリーは行かないの?」
『……うん…本当に平気?』
「…えぇ。不安だけど…平気よ」
『ダリルもパトリックと握手してた。
 しかもその手でシカ肉を食べてたし…
 でもピンピンしてる。だから大丈夫よ。
 その…励ましになるか分からないけど』
「ありがとう。さ、行って」
『(頷く)』


私はダリルを追いかけD棟へと入った。


『ダリル。手伝う』
「そっち待ってくれ」
『うん』


ダリルと死体を運び、穴を掘る。
しばらくするとリックがやって来た


「リック。助かったよ」
「銃を持ってなかった」
「それでもだ。単独行動も許せる
 ……今まで頼りっぱなしだった」
「みんながいてこそだ」
「違う。あんたのおかげだ」
「いや…」
『そうよ。リックがいたから今、生きてる』
「会議に参加しろ」
「何度も道を誤った。何かを決める立場にない。
 息子さえ、正しく導けない。他の事なら何でも」
「好きにしろ。だが誤りを自覚してる。
 何かあったらシャベルで戦う気か?」
「リック!ダリル!エリー!」
『まずいわ……』
「くそっ!」


マギーに呼ばれ振り向くと凄い数のウォーカーが。
もうフェンスが揺れて今にも倒れてきそうな雰囲気だ


「音で集まって来た!今にも倒れそうよ!」
『とにかく殺すしかない!』
「グレン達を呼んで来るんだ!早く!」
『分かった!!』


ダッシュで坂を駆け上がり、A棟へと向かう。


『グレン!音でウォーカーが集まって来て
 フェンスが今にも倒れそうなの!今すぐ来て!』
「あぁ!分かった!すぐに行く!」
『サシャも行ける!?』
「えぇ、行くわ!」
「あなたも行って、タイリース…」
「カレン…だが……」
「行って!フェンスが崩れたらみんな死ぬわ!」
「……分かった…!カレンを頼む…」
「あぁ」


グレン、サシャ、タイリースとA棟を出る。


『とにかく走って!フェンスに着いたら間隔を開けて
 少しでもウォーカーを散らばらせて殺すの!いい?』
「あぁ、分かった!」
「フェンスはかなりヤバいのか?」
『慌ててあなた達を呼びに行くほどヤバいわ…』


みんなで間隔を開けてウォーカーを殺して行く。
未だにフェンスはウォーカーの重みで揺れている
早い所なんとかしないと危機的状況だ。


「マギー!」
「来ないで。間隔を開けないと…」
「…あぁ。分かった…」
「……みんな見て…」


サシャの声にサシャの足元を見ると
ウォーカーにかじられて死んでいるネズミが…


「誰かが餌をやってる……」
『……この量のウォーカーはこのせい?』
「分からないわ……でも…」
「危ない!!」
「押さえるんだ!」


全員でフェンスを抑えるが、このままだと倒れ
私達は全員、フェンスの下敷きになってしまう


「下がれ!」
「どうする!?時間の問題よ!?」
『私が囮になってウォーカーを連れて離れるわ!
 数マイル先の広場へ連れて行く!そこで―』
「ダメだ!」
「そんなことは絶対にさせない」
『じゃあどうするの?』
「……ダリル、車を…考えがある。」


リックは豚小屋に行くと子豚達をダリルの車に乗せた。
そして外に出ると子豚でウォーカーをおびき出し
どんどんフェンスから離れさせて行く。
私達は少しでも多くのウォーカーを殺し
フェンスに太い木を建てて補強していく。

リックとカールが一生懸命育てた子豚を
ウォーカーに食べさせるのは苦しい選択のはず…
リックはまたみんなの命を救ってくれた。


「ひとまずこれで安心だ…」
「また増えたらどうする?」
『とにかく殺すしかないよ…』
「インフルエンザの事もある。
 今はみんなを連れて逃げだせない…」
「出来る限りフェンスの補強もしよう」
「分かった」


病気とウォーカー。
2つの危機に襲われている。
神様がいるとしたら本当に意地悪だ。





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