13


数日後。
私達はアンドレアから正式な休戦の提案を受けていた。
今日は総督との話し合いに行くかどうか、
全員で決めるために話し合いの場を設けた。


「みんなの意見を聞いて決めたい。意見がある人は?」
「今、奴らを殺しておかないと後悔するぞ!?」
「いや。本当に休戦出来るのなら受け入れるべきだ。
 今は怒りを忘れて、冷静に物事を判断する事が大切だ」
『私もハーシェルに賛成。戦争なんてしない方がいい。
 それに食料や医療品もないし、銃の弾だってないわ』
「エリーも"総督が休戦する訳ない"って言ったろ?」
『あの時はそう思ったし今でも信じられないけど
 実際、向こうから申し入れがあったんだし…』
「……罠かも」
「私達を油断させる罠?」
「あぁ。ないとは言い切れない」
「アイツは冷酷で残忍な男だぜ?見かけに騙されるな」
「メルルの言う通りね」
「今は物資確保の方が優先よ」
『話だけでも聞きに行けばいいわ。
 怪しければ休戦の話は無しにすればいい』
「警護を付けよう。そうすれば対処出来る」


リックはみんなの意見を黙って聞いた。


「みんなの意見は分かった。
 最後にどうしても発言したい者は?」
「……いないわ」
「よし…まずは向こうの話を聞きに行こう。
 奴を殺してやりたい気持ちはいっぱいだが…
 確かに物資が足りない。このまま戦争を始めて
 みんなを飢え死にさせる訳にはいかない。
 警護にはダリルを連れて行く。」
「私も行こう」
「父さん!だめよ!」
「揉めそうになった時に冷静に話せる人間が必要だ。
 私が彼らの理性になろう。向こうはアンドレアが」
「あぁ…ハーシェル以外に適任はいないだろう…」
「大丈夫だ、マギー。2人が付いてる」


リックとグレンに説得されるマギー。
マギーは心配そうな顔でハーシェルを見つめるが
ハーシェルの揺るぎない瞳を見て、分かったと言った。


「他に行きたい者は?」
「リック」
「なんだ?ダリル」
「個人的にエリーを連れて行きたい」
『え…?』
「……どうしてだ?」
「目を離すとまた暴走するかもしれねぇ…
 出来るだけ目の届く所に置いておきたい」


ダリルさん、まだ怒ってらっしゃるの?
確かにここ数日、あまり話していないし
夜も監視塔で見張りをしている事が多いけど…
リックが同情のまなざしを向けて来て心が痛い…


「エリー、来るか?」
『行くわ』
「決定だ」


ダリルはそう言うとさっさと出て行ってしまった。
4人で話し合う場所に向かう時は予定時刻よりも早く行き
事前に周りにワナがないか確認することになった。


でも出発前にダリルと話をしなきゃ…


その日の夜、監視塔に上がったダリルを追いかけた。


『ダリル…』
「早く寝ろよ」
『話をしましょう』
「話すことはないね」
『ダリル……』
「……座れ」


ダリルが座ったすぐ隣に座る。


『怒ってるの?』
「色々考えてるだけだ」
『……ほんと?』
「あぁ。今は怒ってない」
『そう、良かった…』


ダリルの肩に頭を乗せる。
ダリルは私の腰に手を回した。


「エリーもいたのか」
『グレン、どうしたの?』
「見張り交代だ」
『そうなの?』
「明日朝早いんだろ?しっかり寝ておかないと。
 ダリル。ハーシェルを頼んだ…」
「あぁ」
『おやすみ、グレン』
「おやすみ、エリー」


ダリルと独房へと戻る。
久しぶりにダリルの体温を感じて眠りにつくと
信じられないくらいあっと言う間に眠りに落ちた。





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