「見張りがいるからここからは歩きで行こう」
「距離は?日が暮れる」
「3キロってとこ」
『3キロ…?』
「エリー、くだらねぇ質問はするな」
『まだしてない』


むっとした顔を向けるとダリルは鼻で笑った。
リックは私達のやり取りを見ると歩きだす。
今日はとても暖かく…いや、むしろ暑い日だ


「世話になったな…赤ん坊の事…
 俺があんな状態で…ありがとう」
「仲間だろ?」


2人の会話に頬が緩む。
すると森の中から何か音が聞こえる


「リック」
「しゃがめ…隊列を崩すな…」


全員で銃以外の武器を使ってウォーカーを倒すが
数が多過ぎて、殲滅は出来そうにない。
リックが小屋を見つけ、中に隠れる


『うっ……変なにおいがする…』
「なんなんだ?このにおいは…」


奥へと進むほどににおいは強烈に。


「あれはなんだ…?」
「キツネの死骸だろう。いや、犬だったか」
『うぅ、吐きそう……』
「頼むから吐くなよ」


ダリルに言われ、死骸から少し離れる。
新鮮な空気を早く吸いたい……


「誰だ!?」
「敵じゃない…」
「早く出ていけ!」
「少しの間いさせてくれ…」
「いいや、今すぐ出てけ!
「うるさいよ!」


騒動に加勢しようと思ったが、動くと吐きそうだ…
ここからみんなが騒いでいるのを見るが
あまりの気持ち悪さに一度下を向いていた。


「エリー!」
『え…?』


ダリルの声に顔を上げると
男はこちらに走って来ていた。
クロスボウを構えようとするが間に合わない…
そう思った瞬間、男は隣に倒れ込んだ


『ごめん、ダリル……』
「平気か?」
『うん』
「水を持ってるだろ?飲め」


ダリルに言われ水を飲む。
少しはましになった様な気がした。


「大群だ…」
「ダリル、手伝え。エリー、ドアを頼めるか?」
『うん。平気だよ』
「…冗談だろ?」
「もう死んでる。裏を見ろ」
「……いない」
「よし、行くぞ。1、2、3!」


私がドアを開け、ダリルとリックは死体を外へ。
ウォーカーが彼を食べている間に私達は裏から逃げ出した。

ウッドベリーに着く頃にはすっかり日も暮れていた。


『暗くて平気?』
「暗い方がいい。闇に紛れる」
「おい、待て!くそ…荷物を置いて行こう。
 中に入って探索するには荷物が多過ぎる…」
「思っていたより警備も堅いな」
「こっちだよ」


私達を置いて行ってしまったかと思ったが、
戻って来てくれたので付いて行く。
街の中にうまく潜入できた。


『ここが監禁場所なの?家みたい…』
「尋問されたのはここだよ」
「外に人がいる。今は外出禁止だろ?」
「昼間はもっといる」
「見つかる前に移動するぞ…」
「彼の家にいるかもしれない…」
「いなかったら?」
「他を捜すしかない…」
「協力すると言っただろ!?」
「精一杯してる…!」
「ならどこだ…?」


リック達は彼女から離れていく。
私は窓の外を見張る。


『リック…!誰か来た…!』
「隠れろ、エリーもそこから離れろ…!」
「エリー。こっちだ」


ダリルに呼ばれ身を隠す。
街の住民であろう彼は家の中に入って来た。


「だれだ?いるんだろ?外から影が見えた。
 立ち入り禁止だと分かってるだろ?誰だ?」
「黙って膝を付け。後ろに手を…縛るんだ
 仲間は?俺達の仲間はどこだ!?」
「知らない…!」
「口を開けろ!」


リックは男性の口の中にタオルを入れると
ダリルが思いっきり頭を殴り気絶させる。
そして私達は先へ進んだ。



私達は更に奥へと進み、遂にグレンとマギーを見つけた。
2人はまさに処刑されそうになっている所だった
まさに間一髪で間に合った……


「立つんだ。行くぞ」


歩き出したであろう敵の前に出て
閃光弾と催涙弾を投げる。
銃撃戦が始まり、2人を連れて逃げる。


その場は逃げきる事が出来たが…
これからはどうなるか分からない…


「ケガは?」
「俺は大丈夫だ…」
『マギーは?』
「私も大丈夫」


本当は2人に思いっきりハグをしたいが
今はそんな余裕もなく、諦める。


「さっきの女は?」
「後ろにいたはずだ」
「捕らわれたか?」
『今から捜しに戻る?』
「いや、2人を外へ出すことが先だ」
「ダリル。……メルルだ
 この傷はメルルにやられた」
「……本当か?」
「この目ではっきりと見た。俺達を殺す気だった…」
「兄貴が"総督"か?」
「別の男よ。お兄さんは補佐役」
「俺が一緒だと?」
「知ってる。刑務所の事話しちまった」
「いいんだ…気にするな…」


複雑な表情を見せるダリル。
私は会ったことはないが、一度みんなで捜しに行った。
やっと再会できそうなお兄さんは敵の陣地にいる。
これからお互いどうなるか分からない…


「誰か来る…」
「よし、行こう。歩けるか?」
「平気だ」
「少し先に車がある」
「行けるさ」
「…リック。兄貴に会わせてくれ」
「ここは敵地だぞ?」
「でも俺の兄貴だ」
「今、脱出しなければ危険だ」
「俺が説得する」
「冷静になれ。グレンはメルルのせいで重傷。
 まともに歩く事も出来ない。エリーだっている。
 外にはウォーカーが待ち受けていて総督にも狙われてる。
 お前が必要だ………俺と来るか?」
「……あぁ」
『……私と残ってお兄さんを捜す…?』
「いや、いい。行こう」


ウッドベリーからの脱出を試みる。
みんな全速力で走り続ける。
だが、敵に見つかり、銃撃戦は免れない…


「行くんだ!立ち止まるな!」
「リック!やられた!マギー!」
『…っ、ダリル!早く行こう!』
「先に行け!」
『でもっ』
「リックを援護するから行け!」


ダリルに言われた通りにリックとダリルを残して
グレンとマギーの後を追って外へと逃げ出した。

リックが追い付いてきて"こっちだ"と先頭を歩く
物陰に隠れてしゃがみ、先程置いて行った荷物を漁る。


「ダリル、早くしろ…」


リックが振り向くとそこにいたのはダリルではなく
ここまで私達を連れて来てくれた黒人の女性だった。
リックは彼女を押さえつけ、刀を奪った。
マギーも銃を向ける。


「目的達成か?」
『待って。あなただけ?ダリルは?』
「見てないよ…」
「オスカーもやられた」
「ダリルに何かあってみろ―」
「救出のために連れてきた」
「そりゃどうも」
「刑務所に戻るにしろ、ダリルを助けるにしろ…私が必要だ。」
『力を借りよう。ダリルを助けに戻ろう…!』
「行こう、助けよう」
「あなたは行けないわ。ちゃんと歩け無いじゃない!」
『リック』
「……分かった。まずはグレンを車まで連れて行こう。
 ここに放置しておくと危険だ。いざとなれば車で逃げられる」
「俺も戦える!」
「無理だ。車で待っていてくれ。いいな?」
「……分かった」
「私も行くわ。助けてもらった」
「マギー」
「ダリルはいつも助けてくれた。行かなきゃ」
「とにかく一度、移動しよう。ここは危険だ」


グレンを連れ、車まで戻る。
催涙弾をポケットに突っ込み、銃を持つ。


「マギー。気を付けて…」
「えぇ」


グレン、黒人女性を車の側に残し
私達3人はウッドベリーへと戻って行く。

慎重に中へ入り、人が集まっている所を見つける。
そこではダリルがウォーカーと戦っていた


『ダリルっ…』
「行くな。作戦通りに…いいな?」
『……(頷く)』


催涙弾を投げ込むとウォーカーを殺して行く。
ダリルの目の前にいる邪魔な人間達も…
彼が助かるのなら、他人はどうだっていい。
私はダリルを助ける。


「ダリル!」


銃撃戦も始まる中で誰かがダリルを呼んだ気がした。
お兄さんの声では無く、女性の声だ。
どこかで聞いたことがある様な声……
誰かがダリルを殺そうとしているのだろうか?
ますますこの中に飛び込んで捜しに行きたくなるが
リックが懐中電灯でダリルに合図をしているのだから
ここを離れてしまう方が危険だと分かっている。


「こっちだ!」
『ダリル!』
「来た、行くぞ!」


ダリルがクロスボウを構えて走って来る。
彼に駆け寄りたくなるが、マギーに引っ張られて走り出す。
後はこの敵地から逃げ出すだけだ。


「おい、お前は来るな!」
「言ってる場合か?」


この人がメルルなんだろう。
ダリルのお兄さん。片手はない。


「とにかく脱出だ!行こう…」
「誰か手を貸せよ」


戸惑いを見せるリック達の後を追うと
メルルが既にウォーカーを串刺しにしていた。
右手自体が武器とは…
音に寄って来たのか、ウォーカーの数は多かったが
なんとか全員で乗り切り、その場を去った。





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