「食料だ!」
「なに?」
「ビーフやコーンもある!大量の缶詰だ」
『カールありがとう』


扉を開けてくれたカールにお礼を言う
カールはにこりと笑ってくれた。
リックは真っ先にハーシェルの元へ


「どうだ?」
「大丈夫。止血はしたわ
 でも呼吸と脈が弱くてまだ目も開けてない」
「念の為、手錠をかけておこう」
『キャロル。少しだけ包帯を見つけたわ』
「ありがとう、エリー」


他の荷物を置こうとハーシェルの部屋を出る。
リックとローリが何かを話しあっている所だった



Tドッグと物資を整理しているとリックに呼ばれる。


「エリー。ちょっといいか?」
『どうしたの?リック』
「囚人達の独房棟の件だが…
 エリーは付いて来ないで欲しい」
『どうして?人は多い方がいいでしょ?』
「正直、俺はあいつらを信用出来ない。
 道中で何かトラブルがあった場合…
 君を囮にしたり人質に取られるかもしれない。
 それだけは避けたいんだ。分かるだろう?」
『うん……分かるよ…』


リックはグループのことを考えてくれている。
もちろん私、個人の心配もしてくれている


「じゃあ留守を頼めるか?
 ハーシェルのことも心配だ」
『分かった。任せて』
「頼んだ」


リックは私の肩を叩くと行ってしまった。
私はTドッグとの物資整理に戻った。


少しするとカールとダリルがやって来た。


「Tドッグ。僕と交代だって。パパが呼んでる」
「あぁ、分かった」
『カール、中で待ってて』
「うん」


部屋の出口にもたれかかっているダリルに近付く


「今から行ってくる」
『うん…気を付けて…』
「心配するな」
『自分の命を1番に考えて。必ず戻って…』
「あいつらの為なんかに死んでやるもんか」


ハーシェルの事があって不安はぬぐえない。
ダリルは私を抱きしめると、戻って行った


「何を整理すればいいの?」
『種類別に分ければいいわ。でもすぐに終わるわよ』
「そっか……」


カールは何かを考えている様な顔をしている。
自分のパパがまた危険な場所に行くんだもの…
きっと辛いよね…


「パパが戻って来るまでに終わらせよう」
『えぇ。いいわ』
「それに…やりたいこともあるんだ」


カールはそう言うと私に強いまなざしを向け
黙って物資の整理を始めた。
やりたい事とは…一体なんだろう?


「これで最後?」
『えぇ。そうよ』


あれからあっと言う間に整理を終えて
カールは満足そうに頷いた。


『少しだけ休憩しましょう。
 このジャーキー食べちゃおっか?』
「でもいいの?」
『少しくらいなら平気よ。育ち盛りでしょ?』
「じゃあひとつだけ…」
『そうこなくっちゃ』


カールと細長いジャーキーをひとつずつ食べる。
ジャーキーは噛みごたえがあるから満腹感をくれる
次、シカを捕まえたらジャーキーにしよう。


「ちょっと出てくるよ」
『どこに行くの?』
「……トイレ」
『カール。カバンを持ってどこに行くの?』
「……医務室を捜しに」
『はぁ……ハーシェルのためね』
「(頷く)」
『待ってて。クロスボウを持ってくる』
「ひとりでいい」
『ひとりでは行かせない。いいわね?』
「わかった」


そっと静かにクロスボウを担ぎ
カールと医務室探索に向けて歩き出す。


『いい?カールは後ろを警戒して』
「エリーが前?」
『当然でしょ』


医務室に向かう途中、何体かのウォーカーに出くわしたが
2人共、無事に医務室に辿り着く事が出来た。


「僕は包帯を捜すよ」
『私は抗生物質を』


医務室にもウォーカーがいて
辺りには血と薬品が飛び散っていた。
ここにはあまり薬は期待出来そうにない。
それに私は日本人。日常英語は話せても
薬のラベルに書いてある様な専門的な英語は
ちんぷんかんぷんだ。
もっと英語を勉強しておけば良かった…


「包帯はあったけどそっちは?」
『よく分からないから全部持っていくわ』


キャロルやマギーに見てもらえばいい。
薬やはさみ、注射器など使えそうなものは
全てリュックの中に詰め込んだ。


『これでもうここに用はないわね』
「戻ろう。ハーシェルが待ってる」
『えぇ』


カールと来た道を戻る。
ハーシェルの部屋に近付くとグレンが私達に気付いた。


「食料の整理は?」
『とっくに終わってる』
「大発見だ」
「?」
「見て!」
「こんなに…どこから?」
「医務室だ。あるだけ持ってきた」


キャロルとローリは包帯を出し手当てを始めるが
カールの言葉にローリの手が止まる。


「1人で?なに考えてるの?」
『私も一緒に行って来た』
「平気さ。ウォーカーも殺した」
「グループで行動しても、こうなる」
「必要だったろ?」
「協力してくれるのはありがたいけ―」
「うるさい!」
「お母さんになんて口を…」
「カール、協力してくれて」


ローリの言葉を最後まで聞かずカールは飛び出した。


「エリーもどうして止めてくれなかったの?」
『止めてもひとりで行ってた。
 だったら一緒に行く方がいいと思って―』
「カールはまだ子供なのよ?」
『……黙って行ったのは悪かったわ。
 でもカールはいつまでも子供じゃない』


私はそう言うとカールの後を追いかける。
カールは外の階段に座っていた。


『危ないじゃない。』
「平気さ。フェンスがある」
『フェンスがあっても怖いわ…』
「怖いの?」
『えぇ。誰かを失うのが怖い…
 ママも同じよ。あなたを失うのが怖い』


そう言ってカールを見ると私から視線を外した。


「僕はいつも留守番だ。
 僕だってみんなの役に立てるのに」
『留守を守るのも大切な仕事よ。
 カールがいなければ安心して探索に行けないわ』
「でもいつも子供扱いだし…」
『1番幼いもの。カールがいなければ…
 ベスか私が同じ扱いを受けていたかもね』


カールはこちらを見て頷いた。


『自分も子供時代、嫌だったくせに同じことをするの。
 親ってそういうものでしょ?カールが大切な証拠よ』


そう言ってカールの肩を抱き寄せる。
しばらくの間、そうしていたがグレンとキャロルが
監視塔横の通路に出て来ているのが見えた。


『グレンとキャロル…?』
「行ってみよう」
『そうね。』


カールと近付くとグレンがこちらに気付いた。


『キャロルは何をしてるの?』
「今からウォーカーで帝王切開の練習をする」
『……なんですって?』
「ローリと産まれてくる子のためなんだ。
 カールも帝王切開で産んだらしい。
 恐らく次の子も…ハーシェルが手術出来ない時に備えて
 今からウォーカーで練習をしておくと……」
『そう……』


3人でキャロルを見つめる。


「カールに見せたくない。戻ろう」
『えぇ。行きましょう』


カールの背中を押して中へと戻った。


『マギー。あなた薬には詳しい?』
「ある程度なら分かるけど…どうして?」
『……医務室から薬を取ってきたんだけど…
 私には難しくて…良かったら教えてもらえない?』
「えぇ。いいわ」
『ハーシェルに使える物があるかも』
「抗生物質はあった?」
『これかと思うんだけど…』


マギーに薬の説明をしてもらいながらひとつひとつ見ていく。
少しは今後も役に立てる薬がありそうだ


「エリー…」
『なに?マギー』
「包帯や薬…本当にありがとう…」
『当然よ。私達は家族でしょ?』
「えぇ……」
『泣かないで、マギー』


マギーを抱きしめる。


『こっちの薬は物資と一緒に置いておくわね』
「えぇ。お願い」


薬を物資と一緒に置くと、カールの隣に並んだ
すると突然、ベスが騒ぎ出す。


「パパ?パパ!お願い!助けて!」
「どいて!」


ローリがハーシェルの心音を確認し蘇生術を試みる。
ハーシェルがローリの頭を押さえ、みんなが大慌てで
ローリをハーシェルから遠ざける。

ハーシェルは再び息をして眠り始めた。

カールは不安そうな面持ちでハーシェルに銃を向けていた


『もう大丈夫よ』
「う、うん……」


カールの銃口を手で降ろすとカールはふっと息を吐いた。


しばらくしてリック達が戻って来た。
血だらけのリックを見て一気に不安になる。
続いてTドッグが…ダリルは無事なの…?


「息が止まったけど、ママが助けた」
「本当だ」
『ねぇ、ダリルは?』
「ここだ」
『ダリルっ!』


私は思いっきりダリルを抱きしめる。
ダリルはどっしりと受け止めてくれた


『良かった…ケガはない?』
「あぁ、無事だ」
『うまくいったの?』
「問題無い。ハーシェルは?」
『無事よ。まだ目を覚まさないけど…』
「そうか……」


ダリルは汚れを落としてくると言って
その場を離れてしまった為、ハーシェルの元へ戻る


そして、奇跡が起こった。
ハーシェルが目をあけた


「父さん…?」
「パパっ」


リックはそっと手錠を外し
ハーシェルと堅く握手した。
マギーとベスはお互い抱き合い喜んでいる。

ここにいる全員がハーシェルの無事を喜んだ。
本当に良かった…

私は静かに涙をぬぐった。



「さぁ、そろそろ寝よう」


晩ご飯も食べ、夜も更けてきた。
今日の見張りはTドッグが担当するらしい。
リックの一言でみんなベッドへと向かう

私も毛布を取りにベッドへ戻った。


「エリー」
『ダリル?どうしたの?』
「今日はここで寝る」
『……檻はいやじゃなかったの?』
「あぁ。……今日は疲れた。
 ベッドで眠ったほうがいいだろう」
『そう…?じゃあここで寝ましょう
 思ったより使い心地は悪くないよ?』
「そうみたいだな」


ダリルは私より先にベッドに寝転んだ


「悪くない」
『ふふ。ベッドでまた寝られるなんて…ね』
「あぁ…」


ダリルの隣に座ると手を握ってくれた


「来いよ。」


ダリルに引き寄せられ、そのままキスをする。
1回で止まる事はなく何回も続く。


『だりる…』
「んな顔で見んな…抑えられなくなんだろ」


どんな顔で見たというのか…
ダリルの甘い攻撃はより一層激しくなる一方だ。


こんなにも甘く刺激的な夜が久しぶりだったせいか…
ダリルは疲れたと言いながらベッドに入って来たくせに
なかなか私を寝かせてはくれなかった。






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