14

次の日、私達はデールのお墓を作った。
みんなで最後のお別れをする。


「彼の正直さはまれで、勇敢だった。
 決断を下す時には彼を思い出そう…
 彼のあのなまざしが…きっと答えてくれる」


リックの言葉はとても胸に響いた。
彼に恥じぬよう、前を向いて生きよう…
天国で私達を見ていて……


ダリルはそっと私を抱きしめた。
誰もがデールのことを思っていた…


それから私達は柵を強化し、いつの間にか
近付いてきていた周りのウォーカーを片付けた。
私も銃ではなく、クロスボウで戦う。
実践で使うのはこれで2度目だ。


ハーシェルが私達を家に入れてくれると言う。
もう外は寒い季節。とてもありがたいことだ…


「女性陣はハーシェル達の手伝いを。
 ダリルと俺でランダルを解放してくる」
「逆戻りか」
「当初の計画が正しかった」
「ぬるい考えだ…」
「反対しても決定事項だ。受け入れろ」


ダリルはバイクを家の近くへと寄せた。


「ダリル。」
「なんだ?」
「出かける前に荷物の整理だけはしとおいてくれ」
「あぁ、分かった」
「男性陣はあっち、女性陣はこっちよ」
『ダリル。分かれちゃったね』
「…あぁ、残念だ」


ダリルは私の頬にキスをすると部屋へ入って行った。


「……エリー?」
『マギー。どうしたの?』
「あなたって…あの人とはどういう関係?」
『マギーとグレンみたいな関係よ』
「そう、素敵ね」
『ふふ。ありがとう』


リックに呼ばれ、ダリルは外へ出て行った。
が、すぐに戻って私に話しかける。


「リックと厄介者を置いてくる。
 そんなに遠い距離じゃない。今日中には戻れる」
『そう。分かったわ。気を付けてね』
「あぁ…俺がいない間に死ぬなよ…」
『死なないよ。ダリルはバカだね』


そう言うとダリルは笑った。


「そうだ。俺の銃、知らないか?」
『知らないわ。無くしたの?』
「バイクに入れてあったのが消えてる」
『私の持っていく?』
「いや、大丈夫だ。余ってる銃をもらう」


ダリルはTドッグと準備を始めた。



しばらくするとTドッグの叫び声が聞こえる。
慌てて家から出て見ると、ランダルが消えたらしい


『どういうこと…?』
「手錠をすりぬけたらしい…」
「あり得る?」
「彼に失う物はない。決死の覚悟なら…」
「施錠はしてあった、でもいなかった!」
「どうして!?」
「どこへ行ったの!?」
「リック!」
「あぁ、捜しに行こう!
 Tドッグ、グレンは見張り台へ!
 アンドレア、エリーは家を守れ!」
「分かった。行こうTドッグ!」
『みんなは中へ入って!鍵をかけて!
 アンドレア、私は左側を見張るわ』
「右側は任せて」


私達が行動に移そうとした時、シェーンの声が…


「リック!」
「何があったの!?」
『ケガしてる…!」
「銃を奪われた!」
「大丈夫なの?」
「背後から襲われ、顔を殴られた!
 グレンとダリルは銃を持って来い!」
「逃がせばいいわ…」
「銃を持ってウロウロされちゃ困る。」
「行かないで…危ないわ!」
「家の中に入れ。鍵をかけ、出るな」
『行きましょう、家に入るの!』


私とアンドレアは全員を連れて家へと向かう。


『私は2階から外を警戒しておくわ』
「俺は外の見張り台にいる」
「えぇ。ここは任せて」


Tドッグは外の見張り台へ行き
私は2階に上がって窓から外を見張り続けた。

しばらく経ったが、誰も戻って来ない…
どうしてだろう…?


「エリー!ダリルとグレンが戻ったわ!」
『…!今行く!!』


階段を駆け降りると目に入ったグレンに飛びつく


『ケガはない!?』
「ないよ」
『良かった…ダリルは?』
「大丈夫だ」
『…本当に良かった…』


ダリルともハグをする。
するとグレンが問いかけてきた。


「銃声がした」
「ランダルかも?」
「奴は見つけた」
「小屋で?」
「ウォーカーだ」
『ウォーカーになってたの…?』
「あぁ」
「奴を噛んだやつは?」
「それが噛まれてなかった」
『じゃあなんで…』
「首が折れてた。奴とシェーンの足跡が重なってた」
『…2人は一緒だった、ってこと?』
「そうだ。シェーンは襲われてない」
「……っ、リックとシェーンを探してくれない?」
「あぁ、分かった」
『私も行くわ!』
「俺も」
「私もよ」


ダリル、グレン、アンドレアと共に家を出る。
外にはものすごい数のウォーカーがいた。


『ダリル……』
「あぁ、逃げる準備をしろ…」
「パトリシア。明りを消せ」
「えぇっ!」
「群れがいなくなるまで隠れればいい」
「この数はヤバい。家が倒されるぞ」
「カール!カール!」


ローリは急いで2階へとカールを呼びに行く。
ハーシェルは銃をパトリシア達に渡し、
自分もショットガンを持って外に出てきた。
マギーも後に続く。


「マギー」
「銃の扱いには慣れてる」
「相手が多過ぎる!」
「君達は逃げればいい。」
「戦う気か!?」
「こちらには銃も車もある。
 殺せるだけ殺して…後は農場から遠ざける」
「本気か…?」
「私の農場だ!!……ここで死ぬ」
「……分かったよ。最高の夜だ…」


私達は迫りくるウォーカーの群れに立ち向かう。


「エリー。この銃を使え。装填が早い」
『ありがとうダリル』
「(頷く)絶対に死ぬな」
『ダリルもね』
「あぁ……」


私達はウォーカーを倒すべく、銃を構える。
マギーとグレン、Tドッグとアンドレアで
車に乗りウォーカーを倒しに行く。
ダリルもバイクに乗って行った。

なるべく前に出て家にウォーカーを
近付けさせない様にするけど限界は近い…
納屋でも炎が上がっている。
きっとリックだろう……


「カール!カールはどこ!?」


ローリの叫び声が聞こえる。
カールがいないの!?
辺りを必死に見回すが、見当たらない。


「どうしようもない子ね!!」
「もう逃げなきゃ!!」
「カールを置いてはいけないわ!」
「息子を信じて!母親が助からなきゃ!」
「みんなを連れてきて!」
「分かったわ!ベス!パトリシア!」
「カールっ…!」
「揃ったわ!ローリ!」
『ローリ!カールは私が探しに行くから早く逃げて!』
「エリー…!」
『行って!』
「逃げるのよ!ローリ!」
「ハーシェルは!?」
『ハーシェルも死なさない!!』


ローリはみんなと逃げて行く。
私はハーシェルの援護をしながらカールを探す。


『カール!!どこなの!?カール!!』
「エリー!!僕はここだよ!」
『カール!!』


リックと手を繋いでいるカールを思いっきり抱きしめる


「ローリはどこに行った!?」
「奴らが迫ってくる…私の農場が……」
「ハーシェル!ローリは!?」
「分からん…」
『ローリならキャロル達と逃げたわ!』
「無事なんだな!?」
『……最後に見たときはまだ生きてた』
「よし、それだけ分かれば十分だ!逃げよう!」
『ハーシェル!!』
「もう諦めるんだ!!」


4人で車に乗り込む。
農場からどんどん離れて行く。
ハーシェルはずっと農場を見つめていた……


『リック。疲れている所悪いんだけど
 逃げられた人は見た?確認しておきたいの』
「いや…俺達は納屋にいたから…
 ただ車が2台去って行くのは見えた」
『マギーとグレン。Tドッグとアンドレアね。
 私はローリ、キャロル、ベス、パトリシアが
 家から逃げるのは見たわ。ダリルは…見てない…』
「大丈夫だ。あいつが簡単に殺られる訳が無い」
『うん、そうだよね』
「あぁ」
『ねぇ、これからどうする?』
「まず道路に向かおう。ソフィアへの物資が置いてある。
 きっとみんなそこに集まるはずだ…」
『分かった…』
「眠れるなら少し眠っていて」
『うん…』


それから車内は無言に包まれ私は少し眠った。




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