10

次の日、目覚めるとダリルの寝顔。
私はそっと胸に顔を近づけ、心音を確かめる。
ちゃんと心臓は動いている…


コンコン


『はい』
「おはよう、エリー。ダリルを起こしてくれる?」
『おはよう、ローリ。分かったわ』


ローリに頼まれ、ダリルを起こす。
が、ダリルは一向に起きてくれない。


『ダリルったら!!』
「んだよ…うるせぇな…」
『起きて?ハーシェルに傷を見て貰いましょう』
「……あぁ…」


寝ぼけているんだろうか?
寝起きでセクシーなダリルはさらに私を抱きしめる。


『ふふ…もう、起きて?』
「起きてる…」


ダリルにキスをする。


「……一晩考えたことがある」
『なに?』
「エリーが上なら俺はあまり動かなくて済む」
『……はぁ?一晩考えたことってそれ?』


ダリルらしいというか、バカらしいというか…


「いいだろ?それくらい俺はお前が欲しい。」


そう熱い眼差しで言われると目を背ける事が出来ない。
ダリルはそのまま私にキスをし、だんだんキスは濃厚になり
しまいには首筋にまでキスは降りてきた。


『ダリル…だめだよっ、』
「ちょっと黙ってろ」


ダリルが私の上の服をズラし始めたその時…


ガチャッ

「朝食はどうする?向こうで…っ!?」
『ぐ、グレン!』


ダリルの背中側のドアから入ってきたグレン。
バッチリ目が合ってしまって気まずい……


「てめ…見てんな!!」
「ごめんっ!まさか、そんな、最中だとは!」
『最中だなんて言い方やめてよっ!』
「いいから出てけ!」
「ご、ごめん!すぐに出て行く!!」


グレンは顔を真っ赤にして大慌てで出て行った。
私の顔も真っ赤になっていること間違いない…


『グレンに見られた…最悪……』
「はぁ……悪かった」


ダリルは乱れた服を直すと頭をポンとしてくれた。
キッとダリルを睨むけど、ダリルは鼻で笑った。
私は着替えると、ハーシェルを呼びに行く。


『ハーシェル、おはよう』
「おはよう、エリー」
『朝早くから申し訳ないんだけど、ダリルのケガを見てくれる?』
「あぁ、もちろんだよ」


ハーシェルはダリルのケガを見に行った。


「回復力が高いな。もう治り始めている」
「世話になった。俺はテントに戻る」
「もう少しここで寝ていればいい」
「大丈夫だ。いつまでもベッドを奪うわけにいかない」
「…そうか、分かった」


ハーシェルは部屋を出て行った。


『本当に大丈夫なの?』
「あぁ。ハーシェルも言ってたろ」
『うん…そうだね』


ダリルは服を着ると荷物を持って部屋を出た。
私も後ろを付いて歩く。


『朝食はどうするの?』
「荷物を置いたらすぐ行く。先に行ってろ」
『分かった』


引き返して家に入ろうとすると、グレンがいた。
さっきのこともあり、ちょっと気まずい……


「エリー、さっきはごめん」
『ううん。ダリルが悪いからいいの』
「いや、あー。その…うん、そうだな」
『行こ。お腹すいた』


グレンの手を引っ張って中に入る。
朝食を頂いたらグレンと別れてローリの所へ行った。


『おはよう、ローリ。何か手伝うことはある?』
「おはよう、エリー。もういいの?」
『…?朝食?もう食べたよ』
「そうじゃなくて、あなたも昨日ケガをしていたのよ?」
『あぁ、そうだっけ…』
「ふふ。心配はなさそうね」
『うん、心配ないよ』
「少しだけカールといてくれる?」
『うん!分かった!』


ローリと別れてカールの元へ向かう。
ちょうどカールがシェーンと話し終わった所だった。


『カール!おはよう』
「エリー!!おはよう!」


カールは私をしっかりと抱きしめてくれる


『元気いっぱいね』
「もちろんだよ!」
『そうだ、カール。良いものがあるの』
「なに?」
『一緒に取りに行きましょう』
「うん!」


ダリルとのテントに戻ると中からアンドレアの声が聞こえる。
カールに少し待ってよう、と言うと近くにしゃがみ込んで
地面に2人で絵を描き始めた。
テントの中の会話が聞こえてくる。
……もう少し遠くにいれば良かったかな…



「絵がない…」
「本当にごめんなさい。」
「お互い様だ」
「許しは請わないけど、何か出来ることは?」
「あんたは仲間を守ろうとした」


その言葉の後、アンドレアが出てくるのが見えた。


「だが…今度撃つ時はちゃんと殺せよ」


その言葉に、カッと頭が熱くなる。
アンドレアを思っての言葉だとは分かっている。
実際、テントから出てきたアンドレアは笑顔だ…
それでもムカムカして仕方がない。


「……エリー?」
『なんでもない。ちょっと待ってて』


カールに以前、見つけたチョコバーをあげようと思い
テントの中に入って、かばんをあさる。


「…探し物か?」
『………』
「おい、エリー」
『……そうよ』
「…さっきの事、怒ってんのか?」
『…さっきってどのこと?』
「グレンに見られたことだけ―」
『そのことなら怒ってない!』
「……なんだよ」
『…っ、カールが待ってるから行くね』


ダリルの顔を見ずにテントを出た。
カールは不思議そうな顔をしてこちらを見ている


『お待たせ、カール。これを渡したかったの』
「わぁ!チョコバー!?」
『そうよ。見つけたの』
「ありがとう!……ソフィアの分はある?」
『ソフィアの分もあるわ。
 これはカールがひとりで食べていい分よ』


カールの頭を撫でると嬉しそうに笑った。
なんて優しい子なんだろう。

キャンピングカーに移動して
チョコバーを食べるカールを見つめる。
久しぶりのお菓子に嬉しそうだ。

するとグレンがやってきて私を呼んだ。


「カール。エリーを借りてもいい?」
「うん、いいよ」
「ありがとう。エリー
 さっきの事があったばかりで悪いけどちょっと来てくれ」
『…?なに?』
「ここじゃちょっと……」
『はぁ…分かった』


グレンとその場を去る。
シェーンがカールに近付いているのが見えた。


『で?話があるんでしょ?なんなの?』
「ローリのことだ」
『……それで?』
「妊娠してた」
『はぁ……リックは?』
「知らない。俺とローリしか…どうすればいい?」
『ローリはなんて?』
「黙っててくれって……」
『……そう。少し様子を見ましょう』
「分かった。それともうひとつ…」
『まだあるの!?』
「……後で言うよ」


グレンはそう言うと私に桃をくれた。
桃を持ったまま、複雑な気分になった。



そしてみんなは銃の訓練に行く準備を始めた


『えっ、カールも行くの?』
「うん!みんなを守るんだ!」
『そう…危険な真似しないでね』
「もちろんだよ」


カールを抱きしめて頭にキスをする。
グレンがお兄ちゃんならカールは弟の様なものだ。


「グレンは行かないのか?」
「デールが車の修理をするって。
 機械いじりを教わって来る。あ、エリーも一緒にね」
『え、あ、うーん。そうなの!』
「俺はここだ」
「あ……」
「………2人はいい生徒だ」
「そうか」


みんなは車に乗って森へ。
デールとグレンと手を振り見送る。


「車の修理だと?どういうことだ?」
「あんたとエリーに相談したいんだ…
 誰かに言うべき事を誰かから聞いたら?」
『あぁ、グレン……』
「はっきり言ってくれ」
「あー…ウォーカーが納屋に。ローリは妊娠」


途端にデールの顔が曇る。
もちろん私の顔も……


「この事を誰が知ってる?エリーも知ってたのか?」
『ローリのことは知ってたけど…ウォーカーの事は知らない!』
「本当なんだ。この目で見た」
「なんで知ってる?」
「……その…マギーとの逢引の日に…」
『……マギーも知ってるの?』
「ウォーカーのことは…黙っていろと言われた」
「……ハーシェルに話してみよう」


デールはひとり、ハーシェルの元へと向かった。
私とグレンはどうしていいか分からず……
顔を見合わせるばかりだった。


『デールに話して良かったの?』
「彼は物知りだし…空気を読むのがうまい…だろ?」
『そうだけど……すぐ首を突っ込むわよ』
「………失敗だったかな…」
『今は祈るしかないわ』





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