「いいか?まずここに矢をセットして」
『こう?』
「そうだ。標準はここだ」
『……ちょっと重いね』
「銃よりはな。あそこの木のくぼみに撃ってみろ」
『分かった……』


神経を集中させて、撃つ。
くぼみのやや右に矢は刺さった。


「悪くない。だが、実際はウォーカーは襲って来る。
 集中し過ぎると後ろから来たウォーカーにも気付けない。
 ……練習が必要だな」
『だね…』


ダリルの凄さが改めて分かる。
クロスボウって本当に難しい……


「エリー、あの家を探そう」


ダリルの合図で森の中にある家の中を探す。
ソフィアもウォーカーもいない……


「ソフィア!!」
『ソフィア〜!』
「…人がいた気配はあった」
『ソフィア?』
「……さぁな…」


ダリルは辺りを見回すと、白い花を見つめた


『綺麗だね…』
「あぁ……キャロルに持って帰ろう」
『うん、そうだね』


ダリルは花を摘むと、再び歩き出した。




ソフィアは見つからないままグリーン農場へ…
ダリルは私に花を差し出した。


「キャロルに持って行ってやれ」
『ううん、ダリルが渡してあげて。その方がキャロルも喜ぶ』
「エリーの方がいいだろ?」
『お願い、ダリル』


そう言うとダリルは戸惑いながらも頷いて
キャロルがいるであろうキャンピングカーに向かった。
私はダリルを見送ると家に入った。


「おかえり、ソフィアは?」
『……(首を横に振る)』
「そっか…お疲れ様…」
「エリー、ちょっといいか?」
『なに?』
「いいから、外へ」


グレンに肩を抱かれ、外に出る。
デールとTドッグは不思議そうな顔をしていた。


『なに?』
「何から言えば……」
『なんなの?』
「エリーがいない間に本当に色々あったんだよ!」
『分かった、分かったから』
「初めから話すから、聞いてくれよ」
『うん、聞くよ。』
「ありがとう…
 あの後、すぐには薬局に行かなかったんだ。
 井戸にウォーカーがいるのが見つかって…
 俺が囮になって井戸に入ってウォーカーに縄を…」
『それ本気で言ってるの!?』
「でも大丈夫だったんだ」
『ケガはしてないの?噛まれたりは!?』
「まぁ…ちょっと危なかったけど、平気だ。
 でも、引き上げる途中でウォーカーが真っ二つになって
 井戸は使えなくなった。俺の努力も水の泡だよ」
『もうそんな危ないことはやめてよ、グレン』
「いいから聞いて。それでマギーと薬局に行ったんだ。
 彼女、殺しを見るのは初めてみたいでさ。辛そうだった。
 そこでさ…出発前にローリにこれを渡されて……」


グレンから紙を渡される。
そこには”妊娠検査薬"と書かれていた。


『…これは?』
「これを持って来てくれって」
『…まさか、ローリ…』
「誰にも言うなよ…?」
『これ、リックは?』
「知らないと思う。……言うべき…?」
『……まだ言わない方がいい。
 だって、妊娠してないかもしれないもの』
「……(頷く)」
『話はそれだけ?』
「あぁ、まだ続きがあるんだ…薬局でそれを探してた時
 マギーに後ろから話しかけられて、急いで別の物を
 手に取って見せたら、その……コンドームでさ…
 それでそのままマギーと…」
『………うそでしょ?』
「うそじゃない……」


思わずグレンと顔を見合わせてお互い、無言になる。


『……あー…そう…』
「どうしても聞いて欲しくて…」
『うん、いつでも聞くわ』
「でも…このまま秘密を抱えられるとは思えない。
 俺……嘘が下手なんだ。分かるだろ?」
『そうね。でも家族の問題だし…今はまだだめよ』
「そうだな…うん……分かった…」


私はグレンの肩を叩くと、テントに向かった。
グレンも私の後を追ってテントに向かう。

ちょっぴり複雑な気持ちのまま、眠りについた。





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