6<悪夢>

最近、いやな夢をよく見る
今のところ現実にはなっていないけど
毎日、毎日同じ夢。
いつ起こるのか、それともただの悪夢なのか
気が気でならない生活を送っている。
最近は眠るのが嫌で、寝たフリをしたりする…

少しくまが出来てきた…
そろそろ限界、リリーにもバレそうだ


「エリー、あなた顔色が悪いわ…」
『ん、大丈夫よリリー』
「大丈夫じゃないわよ…顔が真っ青よ?」
『そんなにひどい顔してる?』
「えぇ…マダム・ポンフリーに見てもらう?」
『ううん…それよりセブの所へ行かない?』
「セブ?今じゃないとだめなの?」
『うん、今がいいの。一緒に来て、リリー』
「……分かったわ。図書室へ行きましょう」


セブならきっと何かいい方法を知ってるはず
知らなくてもリリーとセブが隣にいれば
悪夢を見なくてすみそうな気がする。
私はリリーに手を引っ張ってもらいながら
フラフラと図書室へ向かった


「セブ」
「…リリー。珍しいな、この時間に来るのは」
「エリーの体調が優れないの…でも今セブに
 会いたいって言うから…連れてきたのよ」
「エリーはどこに…?」
「あぁ、ここよ。エリー…大丈夫?」
『あぁ…うん…セブ…』
「顔色が悪いな。ちゃんと寝てるのか?」
『それが毎日悪夢を見るの。
 だからろくに寝れてなくて…悪夢を見ない
 良い方法はないかと思ってきたのよ…』
「……悪夢を見なくなる呪文は知らないが…
 もし使えるとしたら元気の出る呪文、
 ヴァルネラ・サネントゥール(傷よ癒えよ)
 それくらいしか思いつかない……
 マダム・ポンフリーに眠り薬をもらうのが
 いいと、思うが……」
『でも一人でベッドで眠るのは嫌だわ…』
「じゃあこうしましょう!私が眠り薬を
 マダム・ポンフリーからもらってきて、ここで
 私が手を握っているから眠ればいいわ。ね?」
『……セブもいてくれる…?』
「あぁ…それはかまわない」
『ありがとう。じゃあそうする…』


リリーは急いで薬をもらいに行った
医務室でベッドを貸してあげるからそこに
三人でいなさい、と言われたらしく向かった。
そしてリリーとセブに手を繋いでもらい
薬を飲んで眠くなった私はすぐに眠りに落ちた…





あぁ…また同じ所に立っている
私はここがどこかは知らない…
薄汚れた屋敷?のような建物の中
古びていて、階段の横の通路は腐りかけている
なのに階段だけは誰かが使うみたいで修繕されている。

私は上りたくないのに、階段をゆっくり上がる
でも今日はいつもと違い、チラッと髪が見えた
……自分の髪じゃない。
黒色の、そうセブのような髪だ

私は一体誰の夢を見ているの?
これは未来?それとも…ただの夢?


とうとう階段を登り切り、扉の前に
開けたくない、開ければあの恐ろしい
光景が私を待っているから…

ギィィ…

扉を開ければそこには人狼。
いつもと違ったのはまだ完全に変身しておらず
服が人狼にまとわりついていたこと…
あの服はホグワーツの制服だ…
ということは、この人狼はホグワーツの生徒
何だろうか…しかもネクタイは我が寮
グリフィンドールの色を示している。


人狼が変身しきり、こちらを向く
目が合う、ここから私は目覚めるまで
人狼に追いかけられるのだ

そう、いつもなら…
だが今日は違った


「スネイプ!!」


後ろからジェームズ・ポッターの声、
そして私の手を取る。
…なんだ、この人はやっぱりセブで…
ということはこれはセブの夢…?


「なぜここにいる!?」
「ぶ、ブラックにそそのかされて…」
「ブラック!?ブラックだって!?」


シリウス・ブラック
彼がセブをこの場に誘い込んだというのか


「とりあえず逃げろ!走れ!変身したリーマスに
 知性も理性も残っていない!死にたくなかったら
 後ろを振り向かず逃げ続けろ!行けっ!」
「ポッター!お前はどうする気だ!?」
「僕は大丈夫だ!リーマスには悪いが失神してもらう
 今はそれしか方法がないっ!!早く行け!!」


走る、走る。とにかく走る…
走って明るい光の先に見えたのは



いつものホグワーツだった










『………』

私は夢から覚めた
はっと横を見ると手を握っているセブ、
リリー、そして反対側にリーマス……
一つ、分かったことがある
私の夢見の能力は当日のことであったり
何か月か後のことであったり様々だった。
法則もよく分かってなかったけど、ハッキリした。
側にいる人間ほどハッキリと夢で見るということ
心の距離も大切だけど、身体的距離も含まれると思う…
だってあんなにも曖昧で苦しいだけだった夢が、
セブとリーマスが近くにいることで
はっきりした未来予知の夢に変わった。


あぁ…この恐ろしい夢が現実になるのはいつ?
ポッターとシリウスはいつからリーマスが
人狼だと知るの?リーマスはずっと一人で…
この秘密を抱え込んでいたの?
だから彼は…毎月、体調を崩すのね
満月が近付いて、人狼の部分が出るんだわ…
とりあえず起こさなければ…もうすぐ消灯の時間。
セブだけでも寮に帰さなければ…


『起きて、みんな起きて』
「……エリー…寝てしまったか…大丈夫か?」
『えぇ、おかげさまでスッキリしたわ。
 今日の夜もぐっすり眠れそうよ…
 セブ、寮に帰らなくちゃ、もうすぐ消灯の時間よ』
「…それはまずい。先に戻る。元気になって良かった」


セブは私の頭をぽんと撫で、リリーを見つめてから
急ぎ足で寮に帰って行った…


『リリー、リーマス…起きて…』
「ん…エリー…?」
『リーマス、どうしてあなたがここに?
 とりあえず起きて、寮に戻らないと…
 リリー、リリーったら!もう…』
「エバンズを僕がおんぶしようか?」


ぱっと蘇る夢


『い、いいわ…ありがとう…』
「??うん、わかった」
『リリー…ポッターがあなたの部屋にいるわ』
「なんですって!?」
「凄い起こし方だね(笑)」
『でしょ?リリーには効果抜群なのよ』
「エリー!!!あなた、もう大丈夫なの?」
『大丈夫よ、リリー。早く寮へ戻りましょう?』
「え、えぇ、そうね」
『リーマスも、来てくれてありがと』
「ううん、僕はただ…心配だったから」
『優しいのね。リリーもありがとう』
「いいのよエリー!
 エリーが元気なら私はそれでいいんだから!」


三人で急いで寮に帰った。



そして寝る前にもう一度夢について考えてから
眠りについた。今日見た夢のことは…
当分誰にも話せそうにない…
夢で見たポッターは今より少し
成長しているようだったから、
まだ先に起きることなんだろう…
おそらくだけど…



今までは見たくない、とこの夢を拒否し続けていたから
中途半端にしか見れず、何回も繰り返し
見せられていたのかもしれない…


なぜならこの日を境にあの夢は見なくなったからだ







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