「ここからは車を減らそう」


リックの提案により、車を2台まで減らす事にした。
乗客が減った今、車は少ない方がいいとの判断だ。
私はどこに乗ろうかな……
やっぱりグレンのいるキャンピングカーかな…?


「エリー」
『どうしたの?ダリル』
「………いや、なんでもない」
『なに?気になるじゃない』


後ろを向いたダリルの顔を覗き込む
ダリルはチラッと私を見たあと、視線を逸らした


『ダリ〜ル?』


話すまで離れないわよ?
そういう意味を込めて名前を呼ぶと、
何かを決心したかの様に急にこちらを向いて話し出すダリル


「乗るか?後ろに」
『え…?バイクの後ろに?』
「あぁ」
『いいの?』
「当たり前だろ」
『ふふ、じゃあ乗る』


私の返事を聞くと満足そうに頷いたダリルは
リックの元へ行ってしまった。


「エリー、キャンピングカーに乗るだろ?」
『グレン。私はバイクに乗るわ』
「バイク…?エリー、運転出来るの?」
『私は原付きしか運転したことないわ』
「じゃあ…ダリルの後ろに?」
『えぇ、さっき招待してもらったの』
「……そっか。気をつけて」
『うん』


グレンに微笑めば、ダリルの運転の邪魔をするなよ?と茶化される。
そんなことしないわよ!と返事をした所で、出発の時が来た。


「落ちない様に掴まっとけ」
『うん!何かあったら援護は任せて!』
「あぁ、任せた」


ダリルがとっても優しく笑うから、私も嬉しくなって笑った


ダリルが先頭で道を進む。
最近ずっと暑かったからバイクの風が気持ち良い。
そっと目を閉じて風を感じていると、昔に戻った様な気分になる。
こんな事になる前に……


そんな呑気なことを考えていると突然バイクのスピードが落ちた。
何事かと前を見ると、そこにはたくさんの車の列
どうやらみんなここに乗り捨てて行ったらしい。


ダリルは急展開し、後ろを走っているキャンピングカーまで向かう
デールの「先導してくれ」という言葉に頷くと
車でも通れそうな道を選んで進み出す。

あまりの道の悲惨さに思わず
ダリルに回している手に力が入りそうになる。
そんな時、突然後ろから大きな音がした。
びっくりして体が反応する。


「エリー、あまり締めるな」
『ごめん、ダリル!びっくりして…』


バイクを止めると、私の頭にポンと手を乗せてから後ろに向かう
私も急いでバイクを降りて、ダリルに続いた。


「まいったね」
「問題か?デール」
「へんぴな場所で車が故障し、希望もなくして…」
「……」
「…今のは撤回だ」
「ラジエーターホースを探そう」
「ここには色々揃ってる」
「ガソリンを頂こう」
「水と食料も」
「まるで墓場ね……」


ローリのひと言で車を漁っていたダリルも振り向く
自分の意見をはっきり言えるのはローリの長所だが
今回ばかりは余計なひと言の様な気もする。


「いいのかしら……」
『この人達はもう使わないもの。助けてもらいましょう』
「……よし、回って物資を集めよう」


みんながバラバラになって物資を集めようと動き出す。
私もどこか探そうとすると、ダリルに声をかけられた


「エリー」
『なに?』
「こっちを探せ。何かあったら俺を呼べ」
『うん、分かった』


言われた通り、ダリルの近くの車から捜索を始める。
しばらくすると何を話してるかは分からないが
シェーンとグレンの楽しそうな声が聞こえてくる
覗き込むと、シェーンが水をかけて遊んでいるようだ。

呑気で無邪気な2人にくすりと笑うと再び捜索を始めた。

しばらく物資を探していると、結構集まった。
食べ物に、水にそれから服も。
途中でチョコバーをいくつか見つけた。
これはカールとソフィアと一緒に食べよう、
そう決めて大切に袋にしまう。

次の車に移ると、中でダリルのクロスボウの様な…
でもそこまで大きくない物を見つけた。
子供用…?
使えるのかな…?
ダリルに見せてみよう!!
私は急いで車から降りてダリルを探す。
ちょうどダリルがこちらに向かってくるのが見えた。


『ダリル!!見て!良いものを見つけたの!』
「しー!!」
『ダリル…?…!Tドッグ!どうしたの!?』
「大丈夫だ、自分で切っちまった…」
『酷いケガよ!早く手当を…』


そう言って顔を上げた瞬間、
私達の目の前にはウォーカーがいた。





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