次の日、シェーンとリックに集められた私達は
出発前に大切な説明を聞いた。
無線のチャンネルに、トラブルがあった時の対処。
そうして出発しようとした時


「俺達は行かない」
「バーミングハムの親戚と一緒にいたいの」
「辿り着けると思うか?」
「賭けてみる。…家族のためだ」
「本気か?」
「家族で決めた。本気だ」
「分かった」
「シェーン。弾も。半分ある」
「感謝するわ」
「気が変わったら連絡しろ」
「また頼れる仲間が減った…
 …行こう。みんな、出発だ」


私達はCDCに向かって走り出した。
私はダリルと一緒にバイクの乗ったトラックへ。
なんとなく…シェーンと2人よりダリルとの方が良かった。


「俺1人で良かった」
『いいじゃない。昨日一緒に寝た仲でしょ?』
「お前が勝手に入って来たんだろう?」
『でも許可は取ったわ』
「本当に寝ただけだろ。深い仲じゃない」
『まぁ…そうだけど…』
「………」
『……ダリルはどう思う?』
「……なにが」
『この選択は正解だと思う?』
「さぁな」
『行ってみなくちゃ分からないよね…』
「そうだな」
『ジムが助かると良いけど…』
「あぁ。……トラブルがあった様だ」


車を降りて駆けつけるとキャンピングカーの故障の様だ。
応急処置のダクトテープも無くなってしまったらしい。


「先に何かある。ガソリンスタンドかも」
「ジムの容体が悪化したわ
 これ以上は…無理よ……」
「役に立つ物があるか見てくる」
「待て、一緒に行く」
『私も行くわ』
「エリーはここにいろ」
『どうして?』
「いや、みんなは待っていてくれ」


そう言うとリックは中に入って行った。
ジムにも事態を告げる為だろう…

そう思って待っているとリックは神妙な面持ちで
キャンピングカーを降りてくると、ジムが
ここで車を降りると言いだしたことを私達に伝えた。


「彼の意志だ」
「正気で言ってた?」
「そう見えた。正気だったよ」
「キャンプで"ダリルは正しい"と言ったがあんたは誤解した。
 俺は決して、殺せと言いたかった訳じゃない。
 提案しようとしたんだ。
 "ジムの意見を聞こう"とな。これで答えが出た」
「ここにジムを置き去りに?」
「それはどうかな」
「それを決めるのは……彼よ」


ローリの一言で全員の意思は決まった。
私はジムとは全然繋がりはないけれど
やはりとてもやりきれない気持ちになる…


車から降ろされたジムは大きな木の下に座った。


「随分でかい木だな」
「なぁ、ジム。考え直せよ」
「いや…ここで十分だ。風が気持ち良い。」
「そうか。分かった……」


シェーンはジムに最後の説得を試みたが
最後にはジムの意思を尊重した。
シェーンにとっても、ここにいる誰にとっても
こんな辛いことはないよ…


「目を閉じて…心を穏やかに…」
「あぁ………」
「ジム。これはいるか?」
「いいや。必要ない。大丈夫だ。平気さ」
「俺達の為にありがとう」
「いいんだ」


全員がジムにお別れを告げ、最後に残ったダリルも
しっかりとジムを見つめ頷く。
彼らの間で、言葉のいらないやり取りが交わされた。

そして私もダリルに続き、歩こうとした時
ジムが私に向かって話しかけた。


「エリー」
『なぁに?ジム』
「君は1人じゃないさ」
『え……?』
「ここにいるみんなは最高のメンバーだ。
 決して君を1人にはしない。離れてはだめだ」
『うん…離れないよ』
「…(頷く)ダリルの支えになってあげてくれ」
『ダリル…?』
「彼も兄を見失って、きっと心の支えが必要だ」
『うん……分かった』
「……ん…」
『ジム……ありがとう』
「あぁ…」


そして私達はまた1人、仲間を失った。





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