次に目を覚ました時には知らない天井が広がっていた。
横を向くとグレンが私の手を握っていた。


『…グレン…?』
「エリー!あぁ、良かった…大丈夫?」
『えぇ。あなたは?』
「大丈夫。ケガはないよ」
『ここは…?』
「やつらのアジトらしい。」
『……本当?』
「あぁ。信じられないけど」


そこには銃を持った男達はおらず
お年寄りが穏やかに暮らしていた。
まだこの世界にこんな場所があったなんて…
おばあさんが運んできてくれたお茶を飲む。
みかんを貰い、グレンと食べていると
私とグレンを連れさった男と別の男が来た。


「二人ともこっちへ来い」
「エリーは目覚めたばかりなんだ…だから」
「関係ない!今すぐ来い!」
『行きましょう、グレン』


グレンと連れて来られた先は屋上だった。


「連れてきたぜ」
「手を縛り、口にガムテープを」
「あぁ」
「何をするんだ!?やめろ!」
『グレン!グレンっ!』


抵抗も空しく、グレンと私は後ろで手を組まされ
口にガムテープを付けられ、端まで連れてこられた。
もしかしてここから落とされるの?
そんなの嫌だ…まだ生きていたいのに……!


端に立たされたが、怖くて下を見ることが出来ない。
ふっと近くの建物を見るとTドッグが銃を構え
こちらを見て目を大きく開いた。
Tドッグ…?
私が驚いているとグレンがうなる。グレンの顔を見ると
下を見ろとでもいうかの様なしぐさをする。
そこには銃を構えたリックとダリルの姿が…
先頭には最初に私とダリルが出会った少年の姿がある。
迎えに来てくれた…?
でも三人は後退して行き、扉は閉められた。

私とグレンも後ろに下げられ、解放された


『……殺されるかと…』
「あぁ……」


泣きだす私をグレンが抱きしめる。
耳元で"もう大丈夫"と何度も囁いてくれる。
それだけですごく安心した。


『グレン…ありがとう…もう大丈夫』
「本当に?」
『えぇ』
「じゃあさっきの部屋に戻ろう。
 ノドがカラカラだよ」
『そうね』


グレンと私は老人が集まっている部屋に戻り
彼らの話を聞いたり、ご飯を食べさせてもらったり
本を読んだりと久しぶりにゆったりとした時間を過ごした。
一応、捕虜のはずなのにこんな扱いでいいのだろうか…?


「ジルベルト…?しっかりするんだ!ジルベルト!」
『どうしたの?』
「呼吸困難になっているようだ!」
「ジルベルトは喘息があるの…」
『落ち着いて!ゆっくり息を吸って』


みんなでジルベルトを落ち着かせようとしていると
私にみかんをくれたおばあさんがどこかへ行ってしまった


しばらくすると先程のおばあさんがリックの手を引いて
そしてここの施設のメンバーとTドッグ、ダリルも連れてきた。


『グレン…皆が来た…』
「あぁ…」
「ジルベルト、落ち着いて。ゆっくり吸うんだ」
「どうなってる?」
「ぜんそくで呼吸困難になってる」
「犬に食われたかと!」
『犬…?』


グレンと私は振り返り、可愛いチワワがいる方向を見た。
ここには小さいチワワが3匹いるだけだ。
Tドッグは苦虫を潰した様な顔をしている。


「ちょっと話そう。あんたは最低だ…
 皆殺しにする気で来たんだぞ…?」
「やらずに済んだ」


リックとギレルモは部屋を出て行った。
きっと話し合いをしているんだろう…
ジルベルトは薬が効いたみたい。
今はもう安らかな顔をしている



「さては帽子を拾いに来たな?」
「黙っとけよ」
「銃と弾を半分もやるとは」
「半分以上さ」
「老いぼれを助けるなんてどのくらい持つと?」
「お互いさまだ」


そんな会話をリック達が行っている中。
探し人が見つからなかった上に足手まといになってしまい
私は正直、かなり落ち込んでいた。
そんな私に気付いてかグレンが優しく話しかけて来てくれた


「大丈夫?」
『えぇ、大丈夫…』
「もしかしたら彼もまだ生きているかも。
 どこかで誰かと助け合っているかもしれないよ」
『そうね…』
「希望は捨てないで」
『えぇ、もちろんよ。グレン』
「…なんてこった」
「車は?」
「盗まれた」
「…メルルだ……!」
「キャンプに向かってるはず…」
「メルルがキャンプの皆に復讐するかも…」
『急がないと…』
「走れ!!」


ただでさえ、私とみんなは足のリーチで差があるのに
男の人に全速ダッシュされると追いつくことが出来ない。
体力だってもたない。もちろん必死に走ってはいるけど
少しずつ、私とみんなに差が出てきた。


「なにしてる!早く走れ!」
『これ以上は…無理っ…先に行って…!』
「チッ…」


遅れている私に気付いたダリルが声をかけてくれるが
今は走る事に必死で長文の返事も出来ない。
するとダリルは私の方に向かって走り出し
私を担ぐと肩に乗せて走りだした。


『ダリル!?』
「落ちない様にしがみついてろ!」
『私まで担いでたらダリルが疲れちゃう!』
「うるせぇ!いちいち反論する方が疲れる!
 黙って走らせろ!何かあったら援護しろ!」


私を担いで先頭にいるリックの後ろで走るダリル
後ろを走っているグレンとTドッグの方を見るが、
2人とも肩をすくめるだけだった。



しばらく走った後、やはりダリルにも疲れが見えてきた。
当然よ…私を担いで走っているんだもの…
また足手まといになってしまった……


『ダリル…もう走れる。十分回復したわ』
「本当だろうな?」
『えぇ。もう引き離されない様に走れるわ』
「分かった。そこで降ろす。全速力で走れ」
『えぇ。』


ダリルに降ろしてもらい一緒に走る。
キャンプまで後少し…
でももう日も暮れてしまった。
今ここでウォーカーの群れに襲われでもしたら…
不安でいっぱいの中、ただひたすら走り続けた。




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