次の日、起きてキャンピングカーを降りると
エイミーが駆け寄ってきて挨拶をしてくれた。


「おはよう。よく眠れた?」
『おはよう。おかげさまでぐっすり眠れたわ』
「そう、良かった」
「エイミー、エリー。朝食の用意を手伝ってくれる?」
「えぇ!行きましょう」
『えぇ』


ローリ、エイミーと三人で朝食の準備をしていると
叫び声が聞こえ、リック達は銃を持って森へ。
私達も後を追って森に入った。

そこにはボーガンを持った知らない男の人が
ウォーカーの頭を踏みつぶしている所だった。
思わずその光景に吐きそうになる。
シェーンが私に気付き、端に寄せ背中をさすってくれる。
男の人はチラッと私を見ると踏みつぶすのをやめた。


「噛まれた所だけ切り取って食べるか?」
「やめておこう。それでも危険だ…」
「チッ」


きっと彼がダリルなんだろう。
彼はキャンプに戻り、メルルの名前を呼んでいる。
私はもう大丈夫だとシェーンに伝え、
シェーンに先にキャンプに戻って貰い私も後に続く。

リックやTドッグから説明を受けたダリルは怒り狂ったが
シェーンに捕まえられ大人しくなった。
私の家族が同じ目にあったら私もダリルの様に
怒り狂い、同じ行為をするだろう。
誰だって自分の大切な人を見殺しにされるのは辛い…
そんなことを考えているとダリルは自分の兄は生きている
メルルを助けに行くと言い出した。


「場所は?助けに行く」
「…あー」
「夫もいく。そうでしょ?」
「あぁ……助け出そう。」


ダリルとリックが着々と行く準備を進める中
シェーンは必死にリックを引きとめようとする。
きっとリックは凄腕の保安官なんだろう。
だからシェーンもあそこまで必死になって止めるのかな…
それでもダリルの前でメルルをあんな風に言うのは…
私には間違っている気がして仕方が無かった。
誰だって家族を侮辱されるのは悲しい。


「あなたとダリルで行くの?」
「………」


リックは黙ってグレンを見つめる。
その視線の意図に誰もが気付いた。
もちろんグレンも。


「勘弁してくれ」
「君は市内へ何度も行って無事に戻った
 君が一緒なら心強い。彼女も安心する」
「三人で救出作戦か」
「四人だ」
「頼りにならねぇよ」
「行くのは四人だけか?」
『……私も行く』
「…君も?」
『ホストファミリーがまだ生き残っているかもしれない。
 一緒に連れて行って。足手まといにはならないから』
「女の子には危険すぎる」
「そうよ!あなたには無理よ!」
『でも…探したいの…お願い…』


ダリル、リック以外の全員に反対される中、
グレンとTドッグが困った顔でリックを見つめる。
リックも判断を迷っている様な面持ちだ。
するとダリルが私の側に来て口を開いた


「銃は使えるか?ナイフは?」
『ホストファミリーの子の射撃訓練を一緒にやってた…
 的相手にしか使った事はないけど、外した事はないわ。
 ナイフも…りんごを剥くくらいなら…』
「期間は?」
『2ヶ月』
「ウォーカーを殺した事はあるか?」
『………いいえ…』
「……勝手な行動はするな、それが条件だ」
『えぇ!もちろんよ!』
「…(頷く)」
『リック!あなたもいい…?』
「あぁ。絶対に離れるんじゃないぞ」
『えぇ!』
「リック!考え直せ!
 ここにいる全員を危険な目に晒すんだぞ!?」
「あぁ、だが…」
「…おい、準備をしてこい」
『分かった』


シェーンがまだ説得を続ける中、
キャンピングカーに戻り出かける準備を始める。
準備を終え、外に出るとリックがローリとカールを
説得している所だった。
自分を助けてくれた親子と連絡を取る為に
バッグの中にあるトランシーバーを取りに行くと。

カールはリックに強いまなざしを向けていた。
本当なら絶対に行って欲しくないはず。
だって死んだと思っていた父親にようやく再会出来たんだもの
本当に……強い子…


「用意出来たか?」
『えぇ。そっちは?』
「リック達の用意が出来たら出発する。
 道具を借りに行った。」


ダリルの顎で指した方を見るとなにやら
デールと話しているようだ。彼らをここで待つしかない。


『……ダリルさん』
「ダリルでいい」
『ダリル。ありがとう
 連れて行ってくれて』
「……あぁ。」
『私の名前はエリー。
 お兄さん、見つかると良いね』
「そうだな」
『……お兄さんの写真はないの?』
「…なぜ?」
『私はあなたのお兄さんと会っていないの。
 顔が分からなければ探しようが無いわ』
「一緒にいなかったのか?」
『えぇ。私はあの車の中にいたから…
 隠れていたの。起きたらもうここにいた。』
「…写真はない。人相の悪そうな男がいたらそいつだ」
『分かったわ』


ダリルがいたずらっぽく笑うから私もつられて笑った。
彼も冗談を言うのね。

そしてリック達の準備も終わりようやく出発の時になった。
あんなに反対していたシェーンもリックに銃の弾を渡していた。
彼もきっとみんなを心配してのことだろう。
そしてTドッグが置いてきたバッグも出来れば一緒に回収をと言われ
私達はアトランタに向けて出発した。





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