27


結局、一睡も出来ないまま次の日を迎えてしまった…
体調は最悪。自分でも体が休まっていないのが分かる


「エリー、大丈夫なの?顔色が悪いわ…」
『大丈夫よ、リリー。ちょっと眠れなかっただけ』
「あら、また本を読んでいたの?」
『いいえ。なんだか胸騒ぎがして…』
「そう…不安ね。辛くなったらすぐ言うのよ?」
『うん、分かったわ』
「エリー、ちょっといいかな?」
「何よポッター。エリーは体調が悪いの」
「すぐ終わるからさ!リリー」
『ごめんね、リリー。少し待ってて』
「…分かったわ」


不満そうなリリーから少し距離を取る。


『ひとりなの?』
「あぁ。僕達の間でも少しあってね…
 しばらくはシリウスも頭を冷やす期間が必要だろう?
 今は全てを話すことは出来ないけど、とにかくエリーは
 待ってて欲しいんだ。次の満月までには解決するからさ」
『うん、分かったわ。ジェームズに任せる』
「また何か進展があれば話すよ。」
『うん…』
「じゃあ僕は行くね。あんまり長い時間、
 リリーからエリーを取るわけにはいかないからさ」
『……ジェームズ!ありがとう』
「いいさ!僕達の仲だろう?」


ジェームズは柔らかくほほ笑むと
私の頭をポンポンと撫でてから談話室を出て行った。

昨日、あそこにジェームズがいなければ…
きっとセブを止めることは出来なかった。
私は間に合うことすらできなかっただろうな…
大切な人達、全てを守りたいと思うのに、
どうしてこうも上手くいかないんだろう…


「エリー…?」
『あ、お待たせ、リリー』
「行きましょう。朝ご飯は食べられる?」
『えぇ。少しだけでも食べるわ』
「えらいわね」


リリーと談話室を出て大広間に向かう途中、
今はあまり会いたくなかった一人でもある
セブとバッタリ出会ってしまった。


「セブ、おはよう」
「あ、あぁ…おはよう」
「どうしたの?セブも顔色が優れない様だけど…」
「大丈夫だ。学期末テストの準備を始めているだけで」
「学期末テストですって?!」
「そうだが…」
「まだ冬なのよ?セブルス。
 学期末テストまで4ヶ月以上あるわ!」
「あぁ…そういえばそうだったな…」
「セブも勉強のしすぎは良くないわ。
 しっかり寝ないと身体に悪いわよ?」
「そうだな…今日は早く寝るとしよう」
「えぇ。そうしてちょうだい。元気が一番よ」
「あぁ。じゃあまた」
「えぇ。またね」


セブとリリーの会話を聞いているだけで
気付けばもうセブは目の前にいなかった。
どうして私がこんな思いを……


『リリー、ごめんなさい。やっぱり今日は休むわ』
「大丈夫…?」
『大丈夫よ。寮に戻ってる。』
「先生達には私から言っておくわね」
『うん、ごめんね』


私は大広間には入らず、寮に戻った。
そして一日中、泣き続けた。
気付けば泣き疲れて眠ってしまっていたみたいで…
起きた時には真夜中だった。


そんな生活を一週間続けた。
リリーやルームメイトにとても心配を
かけているのは分かっているけど…
心が言うことをきかないの。


「エリー…?起きてる…?」
『起きてるよ』
「あなたに手紙よ」
『手紙…?誰から?』
「セブルス」
『貸して!!』


リリーから手紙を急いで受け取り中身を読む。


〜親愛なるエリーへ。
最近ずっと授業を休んでいる様で心配だ。
僕が君の悩みを一つ、減らしてあげたいと思う。
君の願いを聞こう。他でもないエリーの為に。
早く元気になってくれ。
セブルス・スネイプ〜


「手紙なんだったの?」
『……私を心配してくれる手紙。』
「そう…みんな心配しているわ」
『そうね。……リリー』
「なぁに?」
『セブに会って来る』
「えっ?エリー!?」


リリーの制止を振り切って部屋を出た
談話室にはたくさんの人とシリウスが目に入ったが
急いでグリフィンドールの寮を飛び出した。





『どうしよう……』


そう、私はいま非常に困っている。
勢いのままスリザリン寮の近くまで来たけど
私はもちろん合言葉を知らないわけだし、
むしろスリザリンから嫌われているわけだし…
あぁぁ…一回図書室に寄ってみれば良かった。


「おや?こんな所で何をしているのかな?」


ひぃぃぃぃ…!
これってもしかしなくとも私に話しかけてるよね?
スリザリンに見つかったぁぁ…


『あ、あのぉ…こんばんは…』
「こんばんは。もしかして合言葉を忘れたのかな?」
『え…?』


あ、そっか!
今私は私服だから、寮がどこか分からないんだ!
ラッキー!合言葉教えてもらおうかな!


『あ、実はそ』
「おや?君は確かグリフィンドールの…」


バレたー!!!!!
すぐバレた…なんで…


「セブルスの友達だね。えっと名前はなんと言ったかな?」
『エリー・エバンズです』
「あぁ、そうだ。私とした事がすまない」
『いえ……』


あぁ、顔を見て誰だかすぐ分かった。
この人はいけ好かないルシウス・マルフォイ。
こんな人に見つかるなんて…本当ついてない…


「それで?グリフィンドールが
 こんな所で何をしているのかな?」
『その…セブに会いに来ました…』
「セブルスに…ほぉ…?」
『呼んで頂けませんか?』
「いいだろう。寮にご招待しよう」
『えっ、いや、呼んで頂ければいいんですけど…』
「セブルスの友達は私の友達だ。さぁ、入りたまえ」


マルフォイに強引にエスコートされ中に入る。
スリザリンの寮はこんな風になってるのかぁ…
グリーンがカラーなだけあって落ち着いてる感じ


「どうだね?スリザリンの寮は」
『凄く大人っぽくて素敵ですね』
「そうだろう。さぁ、何か飲み物でも」
「エリー…?」
「おぉ、いい所に!君にお客様だよ。セブルス」
「どうしてここに…」
『急に来てごめんなさい。どうしても会いたくて…』
「私が連れてきたんだ、セブルス」
「外に出よう。…失礼します」
「なんだ、もう連れて行くのか?
 …また来ると良い。エリー。」
『失礼します…』


セブに強引に手を引かれ、スリザリン寮を出る。
顔を見るとセブの顔色はもういつも通りだった


「エリー。スリザリン寮には二度と来るな。
 君がグリフィンドールだってことを知っている者は多い。
 ブラックとの一件で悪目立ちしているのを忘れるな…」
『ごめんなさい…』
「いや、いい。僕もキツく言い過ぎた…
 それで?何か用だったんじゃないのか?」
『あ、リリーから手紙を受け取ったの。
 それでどうしてもお礼を言いたくて…』
「あぁ。そのことか…」
『ありがとうセブ』
「あぁ。…明日はもう出れそうか?」
『うん、出るつもりだよ』
「そうか」
「エリー!!!」
『シリウスにジェームズ…?』
「あれ?外にいる…おかしいな、まだ中にいるのに」
「お前…!何やってるんだ!?」
『え?何が…?』
「帰るぞ!」
『ちょっ、痛いよ!シリウス!!』
「手を離せブラック」
「お前に言われる筋合いはない。」
「落ち着いて、シリウス。良い夜だね。スニベリー」
「お前達が来なければ良い夜だっただろうな」
「それは僕も同じ気持ちだよ。
 さっ、もう寮に戻らないといけない時間だ。
 エリーは僕達が連れて帰るよ。」
「勝手にしろ」
「帰るぞ!」
『あ、待って!セブ、本当にありがとう!』
「あぁ…」


セブはこちらを振り向かずに寮の中に入って行った。
私はシリウスとジェームズに付いて寮に向かって歩き出した


「遅い時間に飛び出して行くから驚いたよ」
『ごめんね。でもジェームズ談話室にいた?
 シリウスしかいなかったと思ってたけど…』
「えっ?あ、あぁ。急いでいたから見落としたんじゃない?」
『あー、そうかもね』


私の隣を歩くジェームズとは別に
シリウスは不機嫌そうに前をずんずん歩く。
あの夜からはじめて会ったけど…
なんて声をかけていいか分からないや…


「エリー、危ないから夜遅くに
 しかも一人で出歩くのはやめて欲しいな」
『分かったわ。もうしない』
「いい子だね」
『ごめんね、ありがとう
 …シリウスも、ありがとう』
「あぁ」


それからシリウスとは会話がないまま寮に着き、
リリーのお叱りを受けた後、ベッドに入って眠った。

そして次の日からは、本調子とはいかないものの
授業にも参加し、あっと言う間に次の満月がやってくる。





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