26

最近どうもセブの様子がおかしい…
こそこそ何かを探しているみたいだ。
セブに聞いても何も答えてくれない。
「気のせいだ」と言われるだけ…

ジェームズ達もそれには気付いている。
だから彼らの間には余計に火花が散っているのだ。
ここ数日の間は心が休まらなかった。
でも今日はそんなこと言ってられないの!
そう!今日は満月。
リーマスに会いに行く日だ。


『ねぇ…シリウス遅くない?』
「遅いね。やっぱり透明マント着て
 談話室まで迎えに行けば良かったかな…」
「だ、大丈夫…かな…?」
「あと10分待って来なかったら先に行こう」


そんな会話から5分後。
不機嫌そうなシリウスがやってきた


「遅かったじゃないか!何をしてたんだい?」
「そこでスニベルスに会ったんだよ。」
「それはご愁傷様…」
「リーマスのことに勘付いたらしい」
『本当…?』
「あぁ。最近こそこそしてたのはリーマスの秘密を握って
 退学させるのが目的なんだろうよ。だから言ってった」
「……まさか…」
「そんなに気になるなら後でもつけてみればいいだろ?って」
「シリウス、君…」
「大丈夫だ。やつは寮に戻って行った」


心臓が、大きな音を立てて鳴り響く…
顔の血の気が引いていくのが分かる。


「エリー?どうした?」
「顔色が悪いよ…?」
『セブは本当に寮に戻ったの?』
「あぁ。そうだけど」
『寮の中に入るのを見たの!?』
「いや、そこまでは…おい!エリー!?」


どうして気付かなかったんだろう…
私は何年も前に夢で見たではないか。
セブがリーマスの秘密を握ろうとしていた
あの、悪夢を、何度も見たではないか!!

私の足で間に合うのかな…
いや、でも夢ではジェームズが…
ううん、ジェームズはいたではないか!
あの部屋に!一緒にいたのよ!!!!


私はとにかく走った。
先生にバレることなんて気にしてられない。
すると後ろから箒に乗ったジェームズが飛んできた。


「乗って!!走るより早い!!」
『ありがとう!!』


ジェームズの箒に乗って飛ぶ。
お願い、早く早く早く……
どうか間に合って………


「スネイプ!!」
「…ポッター…それに…エリー?」
『待ってセブルス。お願い!一緒に城に戻って!』
「どうしてここに…」
『こんな時間に外に出てはだめよ。一緒に戻りましょう』
「そうさ、エリーの言うとおりだ」
「……断る」
『セブ!!』


セブはさっと身を翻すと、暴れ柳の下に入って行ってしまった。
お願い!そっちは危険なの!行かないで…っ!


「僕達も行こう、スネイプが危険だ…」
『うんっ…』


泣きそうな目をこすってジェームズの後に続く。
暴れ柳の下を通り、屋敷に着くと苦しそうな声。
リーマスが変身を始めている証拠…


「まずいな…早くスネイプを捕まえないと…」
『いた!目の前!』


セブは声に驚いたのか、階段の下で止まっていた。
急いでジェームズがセブの前に立ちはだかる。


「頼む。戻ってくれ」
「お前達……これが何を意味するのか…」
「分かっている。だから戻ってくれ」
『お願い、セブ…このままだとみんな危険よ。
 ホグワーツに戻りましょう…早く離れないと…』
「エリー…知っていたのか…?」
『……彼に罪はないわ』
「時間が無い!さぁ、早く!」
「…くっ」


もうリーマスの声は聞こえず、狼の唸り声が辺りに響いていた。
セブと私達が去ろうとした時。入れ違いに黒い犬が入って来た…
黒い犬の上には小さなネズミが一匹。ペティグリューだ。
シリウスはチラッとこちらを見たがすぐ上に登って行った。


「おい、犬は大丈夫なのか?」
「あぁ。動物は襲わないみたいだ。いいから早く逃げよう!」


結論から言うと、私が見た夢の通りにはならなかった。
セブはリーマスを見ることはなかった。
部屋に入る前に私達で止めることが出来たからだ。
でもきっと賢い彼なら…あの鳴き声が何を意味するのか
とっくに気付いてしまっただろうな…
セブは今も真っ青な顔をしている。


「スネイプ」
「なんだ」
「今日見た事は誰にも言わないで欲しい」
「……僕には関係ない」
『セブ…お願い。』
「なぜ…なぜエリーが奴をかばう?
 どこにその必要があるんだ?」
『魔法を学ぶ権利は誰にでもあるはずよ。そうでしょう?』
「だが…危険すぎる…」
「不用意に近づかなければ危険じゃないさ」
『あの状態ではあそこから学校へは戻って来れないわ。
 ダンブルドア校長がきちんとして下さっているもの』
「……確かに、理性がなければ戻るのは難しいだろう…」
『だからお願いセブ。私達だけの秘密にしておいて欲しいの』
「……エリー、少し考えさせてくれ。」
『分かったわ…落ち着いたらまた話しましょう』
「あぁ……」
「寮まで送らなくていいのか?」
「無用だ」


セブは真っ青な顔のままスリザリンへ戻って行った。
もちろんセブは心配だけど…これからのリーマスの事も
とても心配だ…セブは…どんな判断をするだろう…


「エリー」
『…ん?』
「今日は君も戻った方がいい」
『え…?』
「透明マントを取りに行こう。寮まで送るよ」
『分かったわ…』


必要の部屋まで透明マントを取りに行き、寮に戻った
正直、いまはシリウスに会いたくない。
それにこの件はジェームズに任せた方が良さそうね…
男の子同士の方がいいわよね…


どっと疲れているのに、不安な気持ちでいっぱいで
私はその日眠りにつく事は出来なかった。

恐らく、それぞれが色んな気持ちを抱えたまま
朝を迎えていることだろう……





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