novel | ナノ
僕は染岡くんが大好きです。
世界で一番大好きです。サッカーと染岡くんどっちが好き、って聞かれたら少し悩んで、たぶん、染岡くんをとるくらいには染岡くんが好きです。好き。大好き。本当に好き。好きすぎて好きなのかキスしたいのか分かんなくなるから結局好きっていいながらキスをすることになる。そしたら染岡くんはすごく焦ったような顔をして、僕を軽く突き飛ばすのだけれど、そんなところも大好き。染岡くんなしじゃ息もできない。深い深い海の底に突き落とされたように。酸素ボンベを貰ったって体が拒絶するんじゃないだろうか。でも染岡くんが一緒に落ちてきてくれたなら、きっと暗い海底でだって呼吸できる自信、あるよ。冗談じゃなくて。でも、やっぱり苦しいのはやだなあ。染岡くんに苦しい思いをさせるのも、いやだなあ。染岡くんの苦しそうな顔を見てみたい気も、まあ、しないでもないけど。それでもやっぱり僕は染岡くんがシュートを決めて僕に笑いかける、あの顔が一番好き。僕に笑いかける、あの顔、あの、笑顔、が。――僕に。―――――僕に?――――僕、は。






「そめおかくん」

ぴちゃん。真っ白な洗面台に雫が、跳ねた。鏡に映る僕は、僕は。僕の見ている染岡くんはいつもどうしようもないくらい僕の愛しい染岡くんだった。だけど。染岡くんの見ている、僕は。染岡くんの見ている僕は、いつも、どうしようもないくらい――「俺だろ」―違う。僕だ。染岡くんが好きで、染岡くんが好きな、僕は「俺だよ」―――違う。違うよ。違うんだ。君じゃない。僕だ。僕は染岡くんなしじゃ生きられない。いられない。存在できない。彼がいるから僕がある。僕が。奪わないで。――奪う。どうして。誰が。奪うというの。――――「兄ちゃん」――違う。「俺だよ、染岡が好きなのは、俺だ。兄ちゃんじゃ、ない」
――そんなの。








酷く素晴らしいだろ 運命よ
君無しじゃいられない、僕無しじゃいられない



椿屋の曲で書いてみる第一弾。士郎→染岡⇔敦也。単なる出来心。