novel | ナノ
胸糞悪い。胃のあたりが妙にむかむかするのは、珍しく決められた合成科学食品を食しているからなのか否か。因みに俺はこれ嫌い。一般的にいう、ジャンクフードだのファストフードだのの方が好み。濃いめの味付けとか、見た目がちゃんと食い物の形をしているとことか。まあ、決められたルール通りに、なんてのは元から性に合わない所為もあるろうけど。だから俺は、今俺の目の前でブロック状のいかにもなそれを黙々と食すバタップの気が知れない。見た目、美味そうに食うわけでもなく、かといって俺みたいに眉根を寄せ渋々といった様子でもない。無表情のまま、機械的に口に運び、咀嚼し、飲み込み、また次のブロックを手に取る。なんでもかんでもオールマイティーに胃腸へとエスコートなエスカバは問題外として(あいつは賞味期限という言葉をきっと知らない)こいつは、可笑しい。まるで口と手だけが別の生き物みたいで、少し気味が悪いと思った。

「……手が止まっている」
「ん、…あー…、悪い」

視線をあげることもせず端的な指摘。こいつはいつもそうだ。無駄口を叩かず、無駄な動きをせず、無意味な関係を築かない。俺みたいに次から次へと女をとっかえひっかえすることもなければ、隣でひたすら飯を食い漁っているエスカバみたいに手当たり次第喧嘩を売って歩くこともない。無味乾燥だ。毎日同じことを繰り返し同じ様に過ごし同じ様に終えていく。機械の方がまだ人間らしいと思える程。

「なあ、うまいのかそれ」
「味は二の次の嗜好品に過ぎない」
「……つまりうまくないってわけか」
「必要な栄養分を摂取できれば十分だ」

一応、返答を返すだけマシなのか。こいつと同じ部隊になった当初は口すらろくに利かなかったのだから。いや、俺が勝手に苦手意識をもっていた所為もあるけど。懐かしきかな、まだケツの青かった俺。何かとこいつに食って掛かったのを覚えてる。今では思い出すだけでエスカバを殴りたい衝動に駆られる。「っだ!な、にすんだ!ミストレ!」…ああ、無意識に足が。つか口にあるもん飲み込んでから抗議しろよ、汚い。バタップに視線を移すと飛び散った食べかすに少しばかり眉を顰めていた。――あれ、なんだ、この感覚。

「……バタップ」
「何だ」
「…いや、なんでもない」

深まる眉間の皺。やばい、癖になりそうだ。



たぶん続く!