――私のお茶淹れの講師をしてくれることになったのは海野さんと根津さんという方だった。

…初めて会う人達だ。

まずは竈に火を熾すことから始まり、2人は見本を見せた。

その手つきは慣れていて、造作もない事のように思えたが、いざ自分がやってみると……。


「…あれ?」

「…ここから教えなければいけないのか。」

「あ…なんかすみません。」


 あまりにも初歩的な事だったらしく、がっかりしたような表情を隠さない2人に私は顔を引き攣らせた。

…本当にすみません。



 何度か火を熾すことを試みていると、何度目かの挑戦でやっと火がついた。

お湯をつくるために予め井戸で組んでおいた水を入れると、火の番をしながら沸き上がるのを待つ。

薪を火種のところに入れようとしたその時、熱した竈に誤って手を触れてしまった。



――っ!?



 幸いなことに手は赤くなるだけで酷い火傷にはなっていなかった。

ほっとしていると、すぐ近くにいた根津さんが焦った声を出した。


「おい、大丈夫か?長、呼んできた方がいいな。」

「あ、そんな酷いけがじゃないですし、大丈夫ですよ。」

「お前は大丈夫というが、俺達はそうではない。」


 海野さんの言葉に首を傾げていると、いつの間にか佐助さんがどこからともなく現れ、血相を変えてやって来た。


「名前ちゃん、けがしたの!?」

「長、すみません。俺達がついていながら。」

「六郎、甚八。お前らはここの後始末をしていろ。名前ちゃん、こっちにおいで。」

「だから大丈夫ですってば!」


 私の反論をよそに物凄い力で腕を引っ張られたため、仕方なく佐助さんに連れられるまま井戸へと向かった。

残された2人がこんな会話をしていたのを私は聞かなかった。


「…相変わらず長は過保護だな。珍しく俺達に名前を任せたと思ったら傍で見ていたのか。」

「それよりこの後が問題だろう。不可抗力とはいえ、名前に怪我をさせたのは事実だ。後で任務を失敗した時以上の折檻があるに違いない。」

「……これから大変だな、俺達。」





――第十九話 「ぜんとたなんなはなよめしゅぎょう」



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