お偉いさん方との面会が終わると、私は小さな猿飛さんと共にある一室に通された。
話を聞けば、ここでしばらく寝泊まりしてもいいというらしい。
図らずもよい滞在先が出来たと思って喜んでいると、私の向かいに小さな猿飛さんが座った。
心配して見に来てくれたのかと思って聞いてみると、猿飛さんはこちらを馬鹿にしたような視線を向けた。
…可愛くないぞ。
「かんちがいしないでよね。これはかんしみたいなもんなんだからさ…ま、このすがたじゃたいしたことできねぇから、すこしもどるまでいとまをもらったんだけど。」
そう猿飛さんは言うと、何となく暗い表情を浮かべる。
「…はぁ、このままもどれなかったらおやくごめんってやつ?アンタのせいでとんだことになったもんだよ、まったく。」とまで恨みがましく呟くものだから、庇護欲のあまり思わず抱きしめてしまった。
「大丈夫ですよ、猿飛さん!私が必ず戻してみせますから!」
「…げんきょうのアンタになぐさめられてもうれしくないんだけど。」
「…って信じてないですね。仕方ない、誓いの証でも立ててみせますよ!」
単なる慰めの言葉として受け取られて、ムッとしたので小さい猿飛さんを抱きしめたまま、その頬にキスをしてみた。
…誓いといえばやっぱこれだよね。
現代だったら間違いなく児童ポルノの犯罪だよなと思いつつ、きょとんとする可愛い頬にもう一度キスをしてみる。
――その瞬間、ボフンと変な音と煙が立った。
眼に涙を浮かべながら咳き込んでいると、いつの間にか私が抱えていた幼子は跡形もなくいなくなっていた。
…逃げられちゃったかな。
そう思い、彼を探しに外へ出ようとするも何かに阻まれる。
煙が退いていき、周りを確認できるようになると、阻まれたものを確かめてみた。
…腕?見上げるように見てみると、さっきの私と同じように私を抱きかかえる人がいた。
思ったことを口に出してしまう。
「…誰?」
「はぁ…結構な言い草だよね、アンタ。俺様の顔を忘れちまったの?」
呆れたように言われてもう一度見てみると、私は合点がいって「あ。」と声を出してしまった。
さっきまで可愛がっていた猿飛さんの元の姿じゃないか。
悲しくなった私は依然として抱きしめたままの形になっている猿飛さんに詰め寄る。
「あの可愛い幼子を返してください!」
「…って無茶言わないでくれる?あれは好きでやってた格好じゃないんだから!大体、殺そうとした時に名前ちゃんに変えられた姿なんだからって……。」
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bkm