――特訓まで終わったところにちょうど慶次さんが通りかかったので呼び止めてみた。
いつも恋のことばっかり話す人だから、ちょうどいい相談相手だ。
手招きをして縁側に座ってもらうと、早速相談を行うことにした。
「慶次さん、恋の話なんですけど…いいですか?」
「勿論いいさ!名前から恋の話を聞くなんて思わなかったな…で、忍びの兄さんのことかい?」
…何でわかったんだろう?
私がそう思って目を見開くと、アイドルのように慶次さんはウィンクをしてみせた。
「分かるに決まってんだろ?忍びの兄さんのことが好きなのかい?」
「…というより恋っていうのが良く分からないんですよね。付き合おうという話にはなったんですけど。」
「…忍びの兄さんが言ったのかい?」
「ええ、そうですけど。」
私がそう言うと、今度は慶次さんが驚いた。
「忍びの兄さんがそういう事言うって嘘だろ……!」と呟いている。
そんなに驚くことだったのか。
恋の相談の続きを促すと、慶次さんは懐から出てきた夢吉を撫でながら問いかけてきた。
「忍びの兄さんのことは好きじゃないのかい?」
「…そりゃ好きですけど…どういう好きかっていうのは良く分からないっていうか。」
「ふーん…そりゃまたアンタも初心なもんだね。幸村と大差ないんじゃないか?」
「…あそこまで破廉恥とか言わないと思うんですけど。」
「…そういう意味じゃなくてさ…あー…忍びの兄さんと一度付き合ってみれば分かるんじゃないのかい?うん、そっちの方が俺も面白いっつーか……。」
何だか私の恋路を娯楽にしようとしているらしい。
慶次さんが楽しそうな笑みを浮かべながらそう言うもんだから、思わず私は慶次さんをどついた。
…ともあれ、とりあえず付き合ってみてもいいのかもしれない。
心の中で不本意ながらも慶次さんの言う事を遂行しようと思ったのだった。
――第十七話 「めおとってなに?」
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