着替え終わった私はふと一息をついた。

…朝から酷く疲れた。

しかも朝餉の時間過ぎてるから、朝ご飯抜きだし。

…いつもだったら佐助さんが用意してくれるのだが、今日はそれを期待するのはアレだし。

…うん、逃げ出したのは私だもんね。

佐助さんが何を思ってセクハラを仕掛けてくるのかは分からないが、何となく気まずい。

さっきの部屋に戻ると忍び装束に着替えた佐助さんが待っていた。

少し気まずそうな顔で頬を掻いている。


「あー…今朝はごめんね。つい調子のっちまって。」

「いつものことですから。それより朝餉はどうします?」

「おむすびあるんだけど、食べる?」

「食べます。」


――佐助さんからおむすびを受け取ると、2人で並んで食べる。

一足早く佐助さんが食べ終わると、ふと真面目な表情を浮かべた。


「俺さ…名前ちゃんのこと、真面目に考えようと思うんだよねぇ。」

「…何のことですか?」

「これからのこと。後見人っていうか何というか…うん、夫婦になろうと思ってね。」

「めおと…って夫婦のことですよね。え、誰と誰のことですか?」

「俺様と名前ちゃんに決まってんでしょ。」


…ちょっと待て。

いつの間にそういう関係になったんだろうか、私達は。

唖然とした私に向かって、さも当然といった表情を浮かべた後、尚も佐助さんは続ける。


「あ、ちゃんと旦那には俺様から言っとくからさ。祝言なんてのは普通、忍じゃ挙げないもんだけど、名前ちゃんがやりたいんなら、簡単なもんなら用意するから。」

「…ちょっと待ってください。話が読めません。この時代って付き合ったりとか恋人同士の期間ってないんですか?それに…いつの間に私と佐助さん、そんな関係に?」


 私が捲し立てるように佐助さんに分からないことを訴えると、佐助さんはポカンとした表情を浮かべた後、何かを思いついたように笑顔を浮かべた。


「じゃあ名前ちゃん、俺様と「付き合い」って奴をしよっか。」


…今度は私がポカンとする番だった。

付き合うって私が?佐助さんと?

…いつからそんな関係になったんだ。(2回目。)

頻りに首を傾げていると、佐助さんが眉を顰めた。


「…何か不満でもあるわけ?」

「…いや、そうじゃないですけど。大体、恋とかそういうの分かんないというか……。」


 佐助さんは盛大に溜息をつくと、じと目で私を見つめた。

…って何でそんな呆れたような顔で見られるのか。

初めてこういうことに遭遇したんだ、仕方ないじゃないか。

そう佐助さんに訴えると、今度は穏やかな表情で頭を撫でられた。


「へぇ…名前ちゃん、初めてなわけね。んふー、俺様が教えてあげる。」


…何だか佐助さんが気持ち悪い。

どことなく嬉しそうで浮かれているような感じは分かるが、その浮かべている微笑みは違和感を覚えるものであった。



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