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――あれ、かすががいない。

意識が戻った時、片手を動かし温もりが消えているのを確認すると、そう心の中で呟いた。

多分、上杉に帰ったんだろう。

いつも私は起きるのが遅いから。対照的に反対側の佐助さんの方は温もりが感じられる。

しかも気のせいか、サイズが大きい気がする。

恐る恐る目を開けると、満面の笑みの元の姿の佐助さんが目の前に現れた。

いつの間にか私の方が抱きしめられている格好になっている。


「あ、起きたー?全くいっつも起きんの遅いんだから。」

「…いつの間に元に戻ったんですか。」

「んー?あー…元に戻るつもりはなかったんだけどさ、目の前に美味しそうな唇があったもんだからつい頂いちまったわけ。」


…ってことは勝手にキスされたのか。

相変わらず佐助さんのセクハラが通常運転過ぎる。

最近、セクハラが横行し過ぎて何に驚いたらいいのか分からなくなってきた。

「そうですか。」と呟いた後、黙ったままの私に不機嫌そうに佐助さんは口を尖らせた。

…というかいい加減離してほしい。


「…って何か言う事ないの?」

「いや、セクハラはいつも通りだなと思って特には。」

「…「せくはら」って何?」

「…セクシャルハラスメントですよ。」

「…だから何?」


…あ、通じなかったんだっけ。

とりあえず「破廉恥な悪戯」だと教えると、佐助さんは目を細めて何か企んだような表情を浮かべた。


「へぇ…いつも通りね。じゃあもうちょっと過激なことしてもいいわけだ。」

「いや、そういう意味じゃないですから!?」


 嫌な予感がして思いっきり離れようとすると、逆に強い力で抱きしめられてしまう。


「ちょっ…!?本気で幸村さんに訴えますから!」

「またまた〜。名前ちゃんから昨日、誘って来たくせに。」

「私が誘ったのは幼子の佐助さんですから!」


 焦って佐助さんを押しのけようと頑張っていると、天井裏から小太郎君が降りてきた。

…救世主来た!


「……。(もう朝餉の刻を過ぎているぞ。何をしている。)」

「あれです、助けてください!」


 思わず助けを求めると、小太郎君は私を佐助さんの腕から引っこ抜いた。

そのはずみで慌てて私は着替えに別室に向かったのだった。


「……。(…無理強いするのは良くないと思うが。)」

「はいはい、俺様が悪うございました。はぁ…ホント落ちてくる頃合い見計らったでしょ。」

「……。(何のことだ?)」

「…相変わらずだね、アンタは。」



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bkm
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