――西国の鬼もとい、長曾我部元親さん(名前が長い。)が甲斐に来た時、私も大広間に何故か呼ばれた。

大広間に入り、佐助さんに促されるまま佐助さんの隣に座ると、向かいに立膝をついて座っていた一見、不良風の長曾我部さんがまじまじと私の方を見つめてきた。


「へぇ…コイツがそうなのか?武田の宝にしちゃ、可愛げがあるもんだな。武田のおっさんのような大男が出てくるもんだと思ったぜ。」

「西国の鬼よ、人は見かけによらぬものではないか?名前は今や風の悪魔も従える女傑じゃぞ。武田の宝の1つとして名を連ねても過言ではないよのう。」

「…武田の宝ねぇ……海賊の血が疼くってもんよ。なぁ、武田との同盟の話、少し待っちゃくれねぇか?」


 長曾我部さんの言葉にその場にいる武田の人達は皆言葉を失った。

幸村さんは険しそうな表情を浮かべているし、隣の佐助さんも表情は変えぬもののどこかピリピリとした雰囲気を纏っていた。

一触即発の空気の中、当の長曾我部さんは右目を煌めかせる。


「武田との同盟の前にその武田の宝って奴の力を見てみてェ……!噂は聞いてるぜ。あの前田や北条をほぼ武田の宝の力で下したんだろ?なら、俺の冨嶽と武田の宝、どっちの方が強いのか試してみてェんだ。いいよな、武田のおっさん。」

「お待ちくだされ、長曾我部殿。名前の力は絡繰りと比べることは出来ぬものであり、名前1人で長曾我部軍に立ち向かうことなど……。」

「幸村よ、そこまでにせんか。西国の鬼の楽しみを容易に奪うものではないわ。」

「しかし、御館様……。」

「して西国の鬼よ。名前の力を試してもよいが、条件がある。」


――御館様がそう言って語った条件はこのようなものだった。

私の同行として佐助さん、小太郎君、かすがちゃんをつけること。

それから――こちらの終了条件として長曾我部さんの元まで辿り着き、私の力が発動したことで長曾我部さんの要求は終了とするというものである。

御館様の出した条件を聞いて、尚も長曾我部さんは表情を輝かせた。


「面白ェ!武田の宝の力を見られるだけじゃなくて、俺の冨嶽が忍に通用するかってのも試せるんだな?その提案のったぜ!」

「…ちょっと待って。私達の意見は?」

「…普通は忍の意見なんて聞かれないもんだから。はぁ……時間外労働確定ってわけか。」

「うわぁ…佐助さん、大変だったんですね。」

「分かる?」


 斯くして当事者の私達が何も会話に参加せぬまま、西国の鬼もとい、長曾我部さんとの戦いが決まったのであった。



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