――佐助さんに連れられて来たのは窓も入口もないような小さな部屋のようだった。

…今から脱出ゲームでも始まるのかな。

そう思った私をその部屋に座らせると、向かい合うように佐助さんは狐面を外し、座った。

…やっぱり佐助さんじゃないか。

向かい合う佐助さんは真面目な表情を作り、私を説教し始める。


「…まず名前ちゃん。最初のところだけど、ちゃんと教えたことを守ったのは良かった。自分で弾き返すことのできる攻撃を見極め、しっかり弾き返し、あとは旦那に任せたりするところね。でも…あとは全然ダメダメだったね。」


 思いの外、厳しい評価を下した佐助さんを思わず見やった。

…まあ、でも正直心当たりはあるし、何も反論はしないでおこう。


「1階での戦闘の時は俺様と打ち合ったのはいいけど、全然手応えがなかったのに気付いた時、逃げるべきだった。…例え逃げきれないことが分かっても逃げ出したら旦那にも危機だってことを伝えられたし、上手くいけば旦那が相手してんのは分身だって伝えられたはずだ。2階での戦闘時はもう最悪。途中で2階には敵もいないだろうと思って腰を下ろしちまうしさ。最後まで油断大敵って奴だよ。」

「…その件は大変申し訳ありませんでした。…あの、ちょっと聞きたいことがあるんですけど。」

「…何?」

「何でこんなところに連れて来られたんですか?説教なら、別にあそこでも……。」


――そう言いかけた時、恐ろしく不穏な空気が流れた。

佐助さんの目が細められ、さっきのハンターのような表情を浮かべている。


「…名前ちゃん、知ってる?敵に捕まったらどうなるか。」

「…殺される…とか、情報を吐かされる…とか?」

「うん、半分正解…かな。場合によっちゃ、こういう風に慰み物にされることもあるんだよね。」


…それって。

ふと危険な結末に辿り着いてしまった私は思わず腰を引く。

そんな私を見て、佐助さんは楽しそうに微笑った。


「大丈夫。俺様が名前ちゃんにそんなことするわけないじゃない。」

「…だったらなんでこんなところに……。」

「…ん、ちょっと体験してもらおうと思って。そうじゃないと、また名前ちゃんは油断するでしょ?」


――思わず逃げ出そうと身を屈めたものの、容易に捕まえられる。

そのまま組み敷かれ、見上げた佐助さんの顔はこれまでにないほど妖艶なものだった。

思わず息が止まった私に口づけを施すと、身体のそこかしこに口づけられる。

そして最後に太腿に吸い付いてから満足したような表情を浮かべた。

…凄く変な気分だ。

何なんだろう…この感覚。


「はい、終わりっと。どう?名前ちゃん。…感想は?」

「…感想って…というかなんか変な感じ。」

「…へぇ…旦那と一緒で初心なんだね。ま、とにかくいい教訓にはなったでしょ。これから真面目に特訓するように。」


 機嫌良さそうに微笑いながら、佐助さんは私の頭を撫でた。

…後になって湯浴み時、太腿の方が赤く痕になっていることに気づき、変に意識してしまったのは言うまでもない。





――第十四話 「きたれ、たけだどうじょう」



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