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武田の屋敷…躑躅ヶ崎館と呼ばれるところにやっとのことで着いた時――猿飛さんもとい、橙頭の可愛い幼児は私の腕から抜け出し、走っていった。
現代の子と比べ、足は速く既に私では追いつけそうもない。
館の門の前で途方に暮れていると、戻ってきた猿飛さんが私の手を引っ張った。
「…はなしはつけてきた。はいってきな。」
…一体、その姿でどう話をつけてきたんだろうか。
そう思い、彼に聞くも教えてくれない。
繋がれている手に引かれながら、屋敷の奥へと導かれる。
その姿はなんか多分微笑ましいんだと思う。
私の格好がここでは奇抜に見えているにも拘らず、周りの視線が何だか生暖かい。
その視線に猿飛さんも気づいていたのか、一層歩くスピードを速めた。